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スーパースターな男  作者: 柿井優嬉


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一軍でのチームメイトの話①

 僕たち北信越ロケッツは、親会社も監督も変わり、選手の移籍に関する騒動で良い出来事ではないものの注目される刺激もあって、今年は心機一転という言葉がぴったりのシーズンだった。

 それゆえ、プロは生活が懸かっているのだから正直に言えば自分の成績が一番ではあるけれども、やはりチームが勝たなくては面白くなく、個人的にどんなに良い結果を残せても試合が負けだったらどこかむなしさを感じるものであって、このタイミングをチャンスと捉えて、なんとか今年こそ上位、できれば優勝争いに絡むところまで、と考えるメンバーは少なくなかったと思う。

 しかし、ゴールデンウイークを過ぎた五月半ば時点で、定位置とも言える五位に沈んでいる。

 その主たる原因は監督だ。チームの新たな指揮官である仁科さんは、前の監督時代に二年連続でリーグを制覇し、うち一回はシリーズでも勝って日本一になっている。当時子どもだった僕は、その球団のファンだったので、嬉しかったし、よく覚えているのだ。緻密な野球をする人というイメージで、どんな展開が待っているのだろうと、不安もありつつ楽しみが大きかったのだけれど、ふたを開けてみたら、まったく指導らしいことをしないのである。

「きみたち、幼い頃に夢見たであろうプロ野球選手になれたのだから、思いきり楽しんでプレーしなさい」

 こんな台詞を口にするだけで、あとはほぼ放任。漫画やドラマじゃあるまいし、それで勝てれば苦労しない。拍子抜けもいいところだ。

 ただ、開幕前に選手一人ひとりと面談を行い、例えばピッチャーなら、先発をやりたいのか、抑えをやりたいのか、登板間隔はどれくらいが良いのか、などの希望を訊いて、当然望むポジションが重なったり不足したりが生じるのは間違いないから、すべてとはいかないまでも、でき得る限りそのやりたい場所に配置してくれるということをした効果だろう、何人かは昨年までと比べて飛躍的に成績が向上した。そんな程度のことでガラッと変わるのだから、「心・技・体」と並びの最初に置かれるように、心が一番重要であると言われるけれど、本当にそうなんだなと実感したし、これについてはさすがと認めざるを得ない。

 しかし、キャンプ中からそうだったが、シーズンに突入しても牧歌的なたたずまいで、勝つ意欲が感じられない。そう見せているだけで、裏ではコーチと密にやりとりをして指示を出しているといったことも考えられるけれども、その場合なんとなく何かやっているのは選手にも伝わってくるもので、それもないのである。試合に負けて、まったく悔しそうではないし。

 要するに、気持ちよくプレーできて仁科さんを肯定するに違いない選手と、僕を含めてやる気が伝わってこずに否定的な選手の、真っ二つに分かれるような状態で、それを体現するかのごとく、チームは勝ったり負けたりジグザグが激しい。連敗が少ないのは良いが、連勝も極端なくらいわずかで、気持ちもどっちつかずの宙ぶらりん。毎試合どうなるか予測がつかないのを面白がるメディアやファンの人もいるようだし、最下位だった去年よりましとはいえ、まとまりに欠け、ここ最近は敗戦が続いたことで、四位から転落したという状況なのだ。

 それでも仁科さんに変化は見られない。僕が昔観ていた姿から抱く印象とは異なる穏やかで温かい雰囲気、だけれども、戦う集団のリーダーとしては首をひねりたくなる態度、なのである。

 負けが込んできたことでギクシャク度合いも増してきたチーム状態で、二軍から選手が一人上がってきた。それが杉森だった。


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