遠い街へと
僕は、どうしてもあなたに逢いたいと思い·····あなたの住む西の街へと旅立った。
あなたは、どうしているのだろう?新幹線の中で僕は、そのことばかり気にかけていた······
N市。人は、まばらだった。空は高かった。僕は、あなたの住む所に向かいたいのだけれど、あなたがどこに居るのかは分からなかった·····
ずっとあなたと連絡を取らず、遠距離恋愛をしていた。あなたのことは、よく分かっている····つもりだったのだけれど、実のところあなたのことがよく分からなかった。
なぜなら、人間は自分のことさえよく分からないことがある。ましては他人のことだ。分からなくて当然なのかもしれない·····
なぜ僕は、あなたのことが好きなのか·····時々、自分で自分のことがわからなくなることがある。
確かにあなたは歌が上手かった。そうして、詞が上手かった。そこに僕は、好意を持ったのかもしれない····
ふと湖を思い出す。美しい外国の湖には、かつての人々が捨てた指輪が眠っているのだと言う。
指輪は湖の中で、眠りながら、永遠の終わるのを待っている。永遠は確かにある·····
けれども永遠はあっけなく姿を表す時もあるし、永遠は無限という意味とは少し違うと僕は、思っている。
そう、あなたのことだ。なぜ僕たちが惹かれ合うのかは、神にもわかるまいし、僕は分かりたくもない。
ただ、何故ではなくて、それでもいいのだと思う。
夕焼けを思い出す。きれいな秋の夕焼けは、僕の故郷である、I市のもので、そこで僕は、初恋の人を知ったし、自然の美しさを知った。
自然はどこまでも美しいが、時に汚れているところもあるし、海は厳しいと僕も知っている。
なだらかな海は、どこまでも藍色で、鉄のような強い力を持っている。そこに美しさや強さや、秘めたる美があるのだろう。
N市のT通りをしばらく歩く····公園なんかを見るとここで、ここで、あなたが遊んでいたのかと思い、感慨が、深くなる。
ふと店に入る。そこにあなたは居る。あなたは、初めて会う人のように、僕を知らないように振る舞う。
「N市は初めてですか?」
「いえ、三度目です」
「観光ですか?」
「はい、3日は居ようと思います」
「······」
僕は、あなたを知り、あなたは恥ずかしそうに目を伏せる。
やがて夜がやってきた。僕は、どこかご飯を食べて、ホテルで休もうと思い、歩き出す。
『あなたとは結ばれないのだろう』
そうふと、思った。
人生は冒険だ。次に何が起こるかなんて、分からないし、だからこそ面白い。
僕の人生は、このあとどうなるのだろう?
けれど、僕は、これからもするべきことをするだけだ。
そうすれば、希も叶うだろうし、夢も現実になるだろう。
最果ての地に何かがあるのだろうか?けれども僕の運命は僕が決める。
ではこのへんで、君等ともおさらばしよう。では、他日。また会う日まで······




