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聖女の涙


エリオラは、神聖なる光に包まれた聖堂で目を覚ます。彼女の心は静かなる悲しみに満ちていた。昨夜、婚約者からの突然の告白が彼女の世界を震わせたのだ。彼は冷たい声で「他に好きな人ができた」と言い放ち、エリオラの手から婚約指輪を滑り落とした。その瞬間、聖女の心は砕け散った。

聖堂の外では、国民が彼女の姿を一目見ようと集まっていた。彼らはエリオラの祝福を求め、彼女の存在に安堵を感じていた。しかし、エリオラにはもう、彼らの期待に応える力が残っていなかった。彼女は自分の居場所がこの国にはないと悟り、深い絶望の中で決断を下す。

夜が更け、聖堂は静寂に包まれる。エリオラは聖女の衣を脱ぎ、旅の服に身を包む。彼女は聖堂の宝物庫から、旅の資金となるいくつかの宝石を持ち出した。それは彼女が国に尽くした証でもあり、新たな人生への切符でもあった。

最後に、エリオラは聖堂の祭壇にひざまずき、神に祈りを捧げる。彼女は自分の運命を受け入れ、これからの旅で出会うであろう試練に備えた。そして、彼女は一つの決意を胸に、聖堂を後にした。それは、二度と聖女としての過去に囚われることなく、自由を全うするという決意だった。

エリオラの足音が聖堂の石畳に響き渡る。彼女は振り返らず、新たな未来へと歩みを進めた。その背中は、かつての聖女の威厳を感じさせるものでありながら、旅人としての謙虚さを湛えていた。

彼女は聖堂の門をくぐり抜け、国の境界を越えるまで、誰にも見つからずに進んだ。森の中を歩きながら、エリオラは自分がこれまでに行った祈りや儀式、そして国民への奉仕を思い返す。彼女はそれらが虚しく感じられ、涙が頬を伝うのを感じた。しかし、彼女は涙を拭い、前を向いた。彼女にはもう、後ろを振り返る余裕はなかったのだ。

朝日が昇り、新たな日が始まる。エリオラは、自分の運命を自分の手で切り開くことを誓い、旅を続ける。彼女は知らない土地で、知らない人々と出会い、知らない経験をすることになる。それは恐ろしいことかもしれないが、同時にわくわくする冒険でもあった。

そして、エリオラは自分が聖女であることを隠し、ただの旅人として、新しい人生を歩み始めるのだった。

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