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冒険者ギルド本部3

「製作は、サウスリング工房。商業都市クマウノにあったお店で創られたものです。」


その答えに満足していないのか、ユメヤは更に僕を追求してきた。


「で?その工房のどなたが作られたのですか?」


背中に冷や汗がびっしょりと流れ、僕の顔から血の気が引いてきた。


「....ぼ..」


「ぼ?」


その疑問符に答えることもできずに、そのまま僕が黙っていると、


「これと良く似たアイテムポーチはあることはあるけど、古代遺跡でしか発見されていないの。だから普通は使われている生地はボロボロで、デザインも時代遅れのものしか存在していないはずなの。ところがこのポーチはどう?使われている生地は、最新のキャラクターが描かれている。ということは、最近製作されたポーチだということで....」


それ以上僕は聞き続けることができなかった。


「すみません。僕が作りました。」


僕は即座にユメヤさんの前に土下座して赦しをこうた。


すると、その僕の言葉に彼女はキョトンとした顔をして、この子何を言ってんのという表情を見せた。暫くそんな時間が過ぎて、突然ユメヤさんが絶叫した。


「何ですって!あんたは魔法スキルや武術スキルだけに飽き足らず、レアな製作さえも無数に持っているということなのですか?」


「は、はいっ!も、申し訳ありません。殆どの製作スキルを所有しております。本当に本当に申し訳ありません。」


僕は土下座している頭を更に床に擦り付けるように頭を下げ続けた。


「いぃ、空間魔法を扱える老齢のエルフでさえ、アイテムポーチの復元は不可能だったの。それが意味することの重要性は理解できてんの?あなたがどんなスキルを持っていようと構わないけど、それのもたらす危険性は理解できてるの?」


「は、はい....僕が目立たず、隠れて生きていこうとしている一番の理由がそれになります。」


ユメヤは暫く呆気に取られたように黙っていたが、大きくため息をつくと、諦めたように穏やかな口調で話を続けた。


「はぁ、判ったわ。あなたがその危険性を一番理解していて、それを世の中から隠そうとしている。その姿勢は高く評価もするわ。でもね、これからは私とあなたは運命共同体なの、他にもこれは見せちゃダメだろうなと思うものを持っているなら見せてくれる。」


そう言われた僕は、擦り付けていた頭を上げて、カウンターの前に立ち、空間庫(アイテムボックス)から、細々としたものはカウンターに、そこに載せられない大きさのものは床の上に並べていった。


カウンターの上には、見たこともないようなポーションと推測される薬品群や各種の装身具が並び、床の上には見たこともないような魔道具が並んだ。


「これはポーションだと思うけど、見たこともないような色をしているわね。虹色に輝くポーションなんて初めて見たわ。」


ユメヤが一本のポーション瓶を手に取り、光に透かすように観察しているので、僕は判りやすくするために横から口を添えた。


「あぁ、それはエリクサーですよ。生きてさえいれば、飲んだ方の四肢欠損や病気、麻痺や毒等の状態異常を瞬時に治すことができます。」


その言葉を聞いたユメヤの手から滑り落ちたエリクサーを、僕は慌てて確保した。


「で、伝説の回復薬、万能薬、神薬とも呼ばれているあのエリクサーが、こんな汚い冒険者ギルドのカウンターに無造作に積み上げられている。これって夢じゃないの。」


ユメヤは自分で自分の頬を張り飛ばした。それを見た僕は、少し調子に乗ってしまい、空間庫の肥しにすると決めていた、もっと駄目な乳白色に輝く奴をカウンターに置いた。


「エリクサーは神薬じゃないです。神薬と呼ばれているのはこちらのアムリタとなります。エリクサーは元の身体に戻すことしかできませんが、こちらのアムリタは飲んだ人間を不老不死と変え、病気や怪我からも開放してくれる究極の再生薬となります。」


その言葉を聞くやいなや、ユメヤさんは一言も発することなく、その場に白目を剥いて意識を失い倒れかけたので、僕は慌てて支えると、静かにそして丁寧にお姫様抱っこするとカウンター裏へと運び、ソファに寝かせた。


小一時間ほどして目覚めたユメヤさんの顔色はまだまだ青白く、床に並べた魔道具の説明を聞くのも上の空だった。


「今日はこれくらいにして、明日もう一度これからのことについて相談しようと思うの。それで構わない?それと今晩の寝る所だけど、もう決めてあるの?」


「いぇ、まだですけど、似たようなギルドを見たことがあるんですが、ここのギルド本部の屋上も、練習場を兼ねたスペースがありますか?」


「屋上には五十メートル四方くらいののスペースがあるけど....そんな所で大丈夫なの?」


「じゃあ、そこで構いません。野営する時に使ってるのを使って寝ますから大丈夫です。」


「そう判ったわ。そこの階段を上がっていくと、突き当りに扉があるから、それを開けると屋上に出ることができるわ。土を敷いてあるから簡単なキャンプ道具位は使用可能だけど、食材とかは持ってるの?」


「大丈夫です。僕の空間庫(アイテムボックス)は、時間停止機能も付いていますから、どれも新鮮なまま保存されてるので、それに何年も自炊を続けていましたから、料理はお手の物です。」


「時間停止....止めよう。もう止めておこう。どうせ明日また話すことになるんだから、焦る必要はないし。」


そう言って、ユメヤは階段へと向かう僕に手を振りながら見送ってくれた。

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