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喫茶ホメダにて2

「どうしてなのか教えてくれるんでしょ?」


ユフィの言葉に僕は頷いたが、エルカティーナには、これから話すことは一切他言無用な内容になるために確認を取った。


「もちろん聞かせて頂きます。大公の名にかけて秘密は守ります。」


その言葉に頷いて、僕はユフィに目で確認すると、テーブルの冷めた紅茶を一口含んでから説明を始めた。


「その片眼鏡は、ギルド本部に常備されている鑑定の眼鏡です。納品された素材の真贋や価値を知るために新たに手に入れたものになります。それを通して見ると、スキルによって姿形を変えられたものや、素材を弄くられたものは、その元の姿を見ることができます。」


「ちょっ、ちょっと待って。じゃあ、あの人達はスキルによって姿形を変えているということ?....」


そこまで言って、ユフィは気づかれないように自分の身体を確認したが、元の姿に変化していないことを確認して前を向いた。


「高レベルの隠蔽の魔法に関しては判りませんが....」


そこまで言って、チラッとユフィを見て頷かれたのを確認してから言葉を続けた。


「人間の顔や身体は、骨格によって大きく変化しますから、たぶんあの人達は、スキルによって骨格や筋肉、脂肪といった身体の組織を変形しているんだと思います。変化の指輪みたいに幻影を見せているわけではありませんので、本人達も気づいていないかもしれませんが、この片眼鏡で正体がバレるということは、スキルが解けたら元の姿に戻る可能性もあると思います。」


二人は、僕の説明を聞いてもまだ信じられないようで、片眼鏡を付けたり外したりしながら、暫くの間通りを観察し続けていたが、その度に「はぁ」とか「う〜」とか溜め息を付きながら観察し続けていた。


「はぁ、人間が信じられなくなりそうです。これまでも変化の魔法で姿を変えたりする人はいましたが、魔法の効果が打ち消される魔道具が至る所に設置されている王城内では効果を失いますし、王都に入る門には魔法無効の魔道具も設置されているので、あまり不安はありませんでしたが、まさかスキルで姿を変えることができるとなると....はぁ、ホントに信じられません。自分の眼が信じられなくなりそうです。私はこの片眼鏡を手放せなくなりそうですが、譲って頂くことは可能ですか?」


そこまでエルカティーナが話した時に、北側の通りから一組の異様な集団が姿を現した。


「あ、あいつよ。あいつが『夜の帝王』と呼ばれる例の冒険者よ。確か名前はヒロシ・ヤマハだったと思うわ。」


「貴族なんですか?」


「うぅん、自分の国では誰でも名字と名前があるって言ってたと思う。」


ユフィとエルカティーナが会話している間に、僕はゾロゾロと二十人くらいの強そうな取り巻きを引き連れて通りを歩く、夜だというのに黒メガネを着けて、真っ黒なピタッとした制服のような衣装を身に纏い、白地に濃いグレーのストライプの入ったシャツを着て、襟元に少し変わったリボンのようなものを身につけた男を神眼鑑定してみた。


「えっ?」


「「どうしたの?」」


「あの人、稀人ですよ。今、鑑定してみたら異世界人とありましたから。」


そんな話をしている間に、彼の前に剣を抜いた冒険者らしき三人の男が飛び出してきた。しかし、取り巻きの護衛達がすぐに男達を簡単に叩きのめしてその武装を解除した。


ヒロシが取り巻きの暴力を止め、三人に近づき、何か話をしたかと思うと、男達は驚いたような顔をして、ぽかんとした顔をした。


ヒロシが護衛達に何か支持をすると、暫くしてその場に、おそらく倶楽部の従業員と思われる三人の娘が現れ、ヒロシに土下座するようにお詫びを入れた後、それぞれが暴漢三人の前に立ち、カルナ達の所まで聞こえてくるような大声で、聞くに耐えない暴言を浴びせ続け、平手打ちやらグーパンチやら回し蹴りやら踏みつけするなどして、彼らをボコボコにし、最後には唾を吐いて倶楽部へと戻っていった。


僕達は呆気にとられて、その光景を眺めていたが、全員がそうではないかもしれないが、倶楽部で働く人達は、自ら望んで働いていることが推察されるような光景だった。


「私はここでの話の後でも、同級生を何とかしたいと思っていましたが、間違っていたようです。私がしようとしていたことは、あの暴漢三人組がしたことと同じようなことだったのですね。」


落ち込み、肩を落としたエルカティーナを見て、それは違うよと他にも理由があるよと言いたかったが、僕達がエルカティーナをずっと監視することができるはずもなく、一人になった彼女が無茶な行動に走ってしまう可能性がなくなったと考えて、それ以上の説明を僕は口にすることを止めた。


彼女はスッキリとした表情(かお)になり、立ち上がると僕達に深く頭を下げてお礼を口にすると、首から下げていたペンダントを操作して迎えの馬車を呼んでいた。


それから暫く、取り留めもない雑談を交わしていると、ビルの玄関に豪勢な馬車が着いたのが判り、今度学校が長い休みになったら、僕達の勤務する冒険者ギルドをゆっくり見学しても良いかと尋ねてきたので、


「「喜んで!」」


と返答して、ティータイムを終えた。馬車に乗って交差点を離れていくエルカティーナを見送ったあと、


「部屋に戻ったら、ヒロシの鑑定結果を詳しく教えて貰うわよ。」


と睨むように話しかけてきたユフィに頷きを返して帰路に着いた。


僕達二人がルナストリートをギルド本部へと向かって歩いている最中にも、片眼鏡を掛けたままのユフィは、「うっ!マジかぁ、あんなのがこんな風に見えてるのか」とか「あっ、あいつはBランクパーティのリーダーだった奴じゃん」とか「あ、あのデブがあんなにスマートに」とか「あれだけ美人を嫌っていた女が、何で綺麗になって、しな作ってるんだよ」とか結構な声で言うもんだから、僕は慌てて音は入ってくるけど外には漏れない遮音結界を展開した。


「あっ!」


「どうしたの?」


「エルカティーナさんから片眼鏡を返して貰うの忘れた。」


「えっ、ヤバイじゃん。あれってかなり貴重な魔道具でしょ。返して貰いに行かないと。」


急いで踵を返したユフィの手を取ると、


「大丈夫だよ。彼女ならきっと悪用なんかしないよ。それに足りなくなったら作れば良いだけだから。」


「へっ?もしかしてのもしかしたら、あれって発掘品じゃなくて、キミが作成したの?」


その言葉に同意を返すと、彼女は呆れたような表情(かお)をして、ガックリと肩を落として再び踵を返した。


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