オーナールームにて
そんな事を考えていた時代もありました。
ホスト倶楽部のオーナールームで、大きなソファにドンと腰を下ろし、両脚を応接テーブルの上に投げ出して天を仰いだ。
「上手く行き過ぎた....」
王都への移動中に受けたクエストや山賊の殲滅、高ランク魔物の討伐を繰り返しているうちに、俺達のパーティ『銀座倶楽部』は短い期間でAランクまで上がっていた。銀座倶楽部と名付けた理由は、最高級の美人揃いの倶楽部といえば、もちろん銀座ということである。
冒険者ギルドでの評価は、あっという間に最上級のものとなり、訪ねたギルドの塩漬け依頼を片っ端から解決することで、人気は更に急上昇していった。
その間、女性だけではホストクラブの運営は不可能なので、各ギルドで見てくれが悪くて実力相応の評価を受けていない性格の良いBランク以上のソロの冒険者に声をかけ、『歌舞伎町倶楽部』というサブパーティのメンバーとして登録した。
大体は太っていることが多かったので、そこは手直しせずに顔だけを整えてやると、自分の外見の変化に驚いた彼らは、俺を神として崇拝するようになった。ギルドの連中や冒険者達は、彼らをただのデブとしてしか認識していなかったので、外見の変化に気づくことはなく、痩せてきて初めて騒ぎになる始末だった。
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俺達の更なる飛躍する切っ掛けは、オークキングとオーククイーンの支配する大規模な集落を攻略したことだった。
これまでもかなりの数の大規模集落を殲滅してきたが、その集落には、苗床にするために拐われてきた三人の高位の貴族の娘がいた。
彼女達は、集落を形成し、ある程度の言語を使用し、魔法や簡単な武器を使用している奴らを、魔物ではなく獣人やエルフと同じ亜人として捉え(ナユは激怒していたが)、保護する対象、援助する対象として考える団体『亜人開放同盟』の幹部達だった。
俺達が彼女達を解放した時には、既に苗床にされてから一年程が経過していたらしく、全身がボロボロになるほど痛めつけられて、大きな傷が至る所にできており、ボロ布一枚も身に着けておらず、風呂にも入れてもらえないようで、下半身は血塗れで、三人共に死んだ魚のような虚ろな目をしていた。
あまりの悲惨な姿に、どうせバレないかと考えて、ユリアに全身を水魔法で綺麗にしてもらってから、スキルを使用して三人の全身を修復し、仲間の服を着せた。
幸いなことに今回のクエストには、俺達『銀座倶楽部』しか参加しておらず、男は俺一人だったので精神的なケアは、パーティ仲間に任せ、俺はボロボロになって横たわっているオークキングとオーククイーンの所へと向かい、半死半生の彼らに魅了のスキルを使用すると、かなり時間は必要としたが、二頭とも完全に魅了することができた。
(俺の言葉が判るか?)
((はい、御主人様、何なりとご申付下さい))
(お前達が、今後俺の従魔として働くならば傷を修復する。その意志はあるか?)
(もし配下として頂けるならば、この命を賭して働かせて頂きます)
(同じく、全身全霊をもって従魔としての役目を努めさせて頂きます)
(ならば、しばし待て)
そう言って、俺は人体形成スキルをフル活用していった。最初は回復魔法で治癒されると思っていたらしい二人は、急速に治癒していく傷や、欠損していた四肢がみるみるうちに再生されていくのを見て、それが通常の回復魔法と比較にならないほどの治癒の力を持つ技だと理解し、傷が全て癒える前から俺の前に二人揃って土下座していた。
全身の傷を癒やし終わった後で、俺は保管庫に収納していた奴らの巨大でかなり厳つい斬馬刀と、背丈以上の長さを持つミスリル製の金棒を、それぞれに手渡して今後の方針を伝えた。
(いいか、これからは人里近くには近寄るな。お前ら側からの人族への戦闘は原則禁止だ。ただし、襲われたからにはその限りではなく、やり返すことは許可するし、殺してしまっても構わない。ただし、人を拐ってくることは禁止だ。苗床にすることは許さん。どうだ?守れそうか?)
(全く問題ありません。全力で守らせて頂きます。これから私達は魔の森へと入ろうと思います。あそこならば、人族は入ってきませんし、獲物になる魔物も多く、仲間を集めることも可能です)
(お前達二人が、俺の魔獣部隊の幹部だ。お前達が倒した魔物の数が、俺の糧となる。励めよ)
((はっ!))
そう言って、彼らは森深くへと姿を消していった。
二頭を見送って、先程の場所まで戻ってくると、三人の貴族の娘達は、仲間の彼女達が何をどうしたのかは判らなかったが、どうにか会話ができるようには回復していた。
「俺の名前はヤマハだ。縁あって貴女方を助けることになってしまったが、いろいろと説明する前に一言言っておきたい。貴女達の身体に刻みつけられた奴らの傷痕は全て消した。汚れ一つ、傷一つない綺麗な身体になっていることを理解してほしい。」
俺にそう言われた彼女達は、服の隙間から覗いたり、手で触れながら自分の身体を調べ始めた。あまりの真剣さを見て、俺は後ろを向いて、思う存分調べるが良いと言うと、服を脱いだ衣擦れの音が聞こえ、かなりの時間がそれに費やされていた。
暫くして、再び衣擦れの音がし、落ち着いた頃を見計らって俺が振り返ると、三人はきれいに揃って俺に頭を下げた。
「「「ありがとうございました」」」
自分が納得行くまで徹底的に調べることで、精神的にも立ち直る余裕ができたようだった。
「かなり長い時間囚われていたみたいだから、ご実家の方達もかなり心配されていると思うんだが、何か言い訳は考えてるのか?」
俺のその問いかけに、三人は力なく首を振った。
「ならば良い案を一つ。俺達が回ってきた場所の一つに『迷いの森』という彷徨うダンジョンがあった。その森は時間の流れが遅くて、俺達が一時間くらい彷徨いたら、出た時には一日経ってた。魔物に追われて誤って逃げ込んでしまい、出てきたら一年経ってたということにすれば良いと思うが、どうだろうか?」
三人は満面の笑顔で、俺の問いかけに首を縦に振って何度も頷いた。
俺達『銀座倶楽部』が三人を連れて王都に到着すると、途中の街の冒険者ギルドから、各実家に保護した旨を報告してもらっていたので、王都の門にはそれぞれの当主達が、豪華な馬車で迎えに来ていた。俺が考えていた以上に彼女達の実家は位が高く、公爵一名、侯爵二名を間近に見た仲間達は、ひたすらに平伏していた。
教会で彼女達の身体的無事(処女鑑定をしたらしい)を確認された後で、俺達は無罪放免となり、助けた彼女達のお陰で、無事にスポンサーも獲得し、かなりの高額の謝礼金だけでなく、王都のメインストリートの一つであるルナストリートにかなり大きめの拠点を提供された。
それが俺達の起爆剤となった。




