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ウルバスに別れを

ケンを綺麗にして、どこに埋葬するか考えてもすぐには思い浮かばかった為に、俺は相棒を一旦保管庫に収納することにした。


東の空にオレンジの光が生まれ、明るさを増してきた草原で、倒したゴブリンの討伐証明となる右耳を切り取り、解体用のナイフで魔石を抉り出し、戦利品のボロボロのナイフや片手剣、ロッド等を集めていく中で、太陽の光にキラリと輝きを放つ赤く透き通ったガラス玉のようなものを見つけた。


「ん?何だこれ?」


それを手にして太陽に翳すと、突然聞き慣れた声が頭の中に響いた。


[火魔法の魔法の宝珠(マジカルオーブ)を発動しますか?]


「魔法来たぁ!ケン!すごいぞ!魔法が....!」


あまりの嬉しさに絶叫し、ケンがいないことに落胆したが、強くならなければという俺の意思が、迷わずそのオーブを発動させた。すると、その宝珠の中から真っ赤な燃えるような光が溢れだし、漂うように流れて俺の胸のあたりに入っていった。


どんな効果が得られたのか、ステータスはどうなったのかを確認しようと、俺はステータスを開いた。


名前:山葉・ヤマハ・ヒロシ

年齢:22歳

職業:商人(0)、ホスト(0)

従魔士(9)

固有スキル:人体形成、魅了、空間庫

武術:片手剣(1)

魔法:火魔法(0)

体力:Dー

魔力:Eー

耐久:D+

知力:D+

魅力:Aー

幸運:Aー

従魔:


体力や耐久は上昇しており、片手剣のスキルも生えたのが判った。しかし、これまで従魔の欄に記載されていたケンの名前が消失していたことで、相棒が既に天に召されていることを思い出した。


隣にいないケンに魔法を手に入れたことを報告し終えると、どんな魔法が使えるかも判らなかったが、そこはWEB小説で得た知識を利用して、頭の中にバスケットボール大の火の玉をイメージして両手を翳した。すると両手の前に想像通りの火球が出現した。五秒も持たずに消失するような些細な魔法であったが、俺は自分が魔法を使えた喜びに身体を震わせていた。


あまりの嬉しさに暫くは火球を出したり、消したりしていたが、他にも見つかるかもしれないと思い直し、周辺を地を舐めるように丁寧に魔法の宝珠(マジカルオーブ)が落ちていないか確認したが、見つかるのは剣やナイフ等の戦利品ばかりだったことに、俺は両肩をガクッと落とした。


保管庫に土を収納して、径五メートル深さ二メートルの穴を作成すると、用済みになったゴブリンを放り込み、収納から戻した土を被せて、もう陽が高く昇った草原を戦利品を詰めたズタ袋を引きずって、街のギルドへと向かった。


朝の受注合戦も終わり、閑散としていたギルドへと入り、受付を確認してみると、見慣れぬ若い女しか座っておらず、仕方ないかとそいつに昨日のことを告げ、俺を囮にして逃げていった三人組のことを話すと、そいつは顔を真っ赤にして掴みかからんばかりの勢いで、俺に大声で抗議してきた。


「彼らは、このギルドでも信用あるCランクの冒険者達です。そんな卑劣な真似をするわけがありません!」


「そんなことを言っても、事実は事実だ!この槍がその証拠だ!先に俺の血が残っているし、柄に奴らのパーティの紋章が刻んであるのもその証拠になるはずだ。」


「そんなもの証拠になりません!もしかしたら、あなたが彼らから盗んだものかもしれないでしょ!それにあなたみたいな駆け出しが、それだけのゴブリンに囲まれて無事に帰ってこれるなんて、絶対にありえません!」


全く聞く耳を持っていなかった。この時初めて、俺はギルドの職員や冒険者達と交流してこなかったことを後悔した。こちらが事実を告げても全く受け入れられず、それどころか俺が犯罪を起こしたかのように判断された。


「もういい....」


俺は、このままではこの受付嬢を傷つけてしまうかもしれないと考え、説得を諦めて、裏の解体場へと向かった。


「どうした?早いお帰りだな。おやっ?今日は相棒は留守番か?」


買い取り兼解体担当の親父に言われ、溢れだす涙をグッとこらえ、俺はズタ袋を彼の前にあるテーブルへ置いた。


「何だこれ?戦利品か?」


そう言いながら、中を確認した親父が驚いたように目を見開いた。


「どうした?何があった?」


どうせ無駄だと思いながら、先程受付で話したことをもう一度話し、俺はこの街を出ることを告げ、報酬も受け取らず踵を返した。


「おい、おい待て!俺が受付に確認してくるまでここにいろ!絶対に出ていくなよ。」


そう言い放つと、親父は急いでギルド内へと駆け込んでいったが、俺に街に残る意志はなく、解体場から出て街の門へと足を運んだ。


暫くして、親父が若い受付嬢の髪を引っ張りながら、解体場へ戻ってきた時には、既に俺の姿はなく。彼はガックリと肩を落として、受付嬢の顔をゴブリンの戦利品の置かれたテーブルに叩きつけた。


「これだけの証拠があるんだ!なぜ確認しない?なぜ一方的に決めつける!お前の浅はかな対応のせいで、この街は、いや冒険者ギルドはSランクに上がる可能性のある前途有望な若者を一人失ったんだぞ!」


恐怖と痛みのせいで泣きじゃくりながら謝る受付嬢だったが、自分の対応は間違っていなかったと思い込んでおり、全く反省していなかった。


自分の持ち物は、いつも全てを保管庫に収納しているので、移動のための支度は、食事や料理道具、野営のためのテント等を購入するだけだったので、馴染みの店で肉串をしこたま買い占め、米や小麦等の穀物、香辛料などの他に、水生成の魔道具を購入した。持っていたお金は金貨一枚を残すだけになったが、特に使う予定もないので別に不安とは思わず、広場に並ぶテントを見ていくと、前の世界のギターとよく似た楽器を見つけた。弦も六弦で構造もよく似ていた。


「おやじさん、この楽器は何なの?」


「おっ、これが楽器ってよく判ったな。これはギタウラと言って、南方の島で使われていた民族楽器だ。もしかしたら、吟遊詩人に売れるかもと思って購入したが、さっぱり売れやしない。荷物にもなるし、ほとほと困ってるんだ。どうだい、お兄ちゃん買わないかい?弦が切れた時のスペアも入れて、おおまけで金貨二枚だ。これでもほとんど原価だからな。かなりお得だぜ。」


それを手にとって見せてもらうと、ほとんど傷んでおらず、大切に扱われていることが理解できた。俺は高校時代のバンドでギターを担当していたので、それがどうしても欲しくなった。


「ごめん、すごく魅力的なんだけどさ、俺は持ち金が金貨一枚しかないんだ。だから、無理かな。」


「金貨一枚かぁ、それはちょっと厳しいな。さすがにそれじゃ原価割れだからな。他になんか持ってないかい?」


「あんまり金目の物は....」


そこまで言って、俺は転移してきた時に身に着けていたバ◯ラのペンダントを思い出し、アイテムポーチからそれを取り出した。


「これは母親の形見(嘘)なんだけど、どれだけの値打ちがあるのか判らないんだ。もし、そこそこ価値があるなら雑貨屋かギルドでお金に替えてくるよ。」


すると、そのオヤジはそのペンダントをマジマジと観察し、この世界では見たことのないような加工がされており、材質も宝石や魔石並みの価値があると判断し、これを他の店に持っていけば、金貨十枚になるかもしれないと

判断した。


「母親の形見ってだけで、そのペンダントには価値があるよ。見た所、安物の材質で加工も甘いが、これとそのギタウラを交換してやるよ。もしお前に金ができたら、午後に来てくれたら金貨二枚と形見を交換してやるから、またここに来てくれれば良い。どうだ交換するか?」


と提案した。男の本音は交換した日にこの街を去ることに決めており、心の中ではこの商談が上手くいくことを舌舐めずりしながら、返答を待っていた。


「ありがとう。そう言ってくれると嬉しいよ。明日にでも適当に魔物を狩ってお金に替えてくるから、よろしくね。ありがとう。」


そう言って、戻ってくる気はサラサラないのに、笑顔でその場を去っていく俺の商人のランクは(1)となった。


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