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三題噺もどき2

野原の夢

作者: 狐彪

三題噺もどき―さんびゃくにじゅうなな。


※匂わせ程度(のつもり)だからR15にしてないけど、一応注意※



 気が付くとそこは、一面緑色の世界だった。



「……」

 緑、というと、夏に枝葉を広げている新緑の葉っぱみたいなイメージだとっさに出てきそうなので訂正するが……。

 正確には、黄緑とか薄緑とか、若草色とか言った方が近い。多分。

 たいして色に関心があるわけではないので、目の前に広がる野を、何色と言ったらいいのか分からない。

「……」

 あぁ、いや。そうか。

 緑なんて、色で言わずに、野原が広がっているでいいのか。

 そうか……全く。

 まわりくどい言い方をしてしまって申し訳ない。

 誰にって……誰にだろうな?

「……」

 ふむ。

 ……まぁ、その辺の自問自答みたいなものはとりあえず置いておいて。

 今すべきことではない。

 今はとりあえず、現状把握と打開をしなくてはいけないだろう。

「……」

 残念ながら、こんな所にいる理由からして分からないし、全く記憶にないのだが。

 そもそも、目の前に広がる野原に見覚えがない。

 田舎の公園とかはこんなもんだろうとは思うけど、どうしても。

 それとは違うような気がしてならない。

「……」

 それに。

 それに、だ。

 この野原に広がっている草が、そういう公園とかにはなさそうなほどに背が高いのも気になる。

 確かに、長年放置していればこれぐらい―正確に言と150程ある私の腰あたり―になるかもしれないが。

「……」

 こういうのって。

 もっと、前段階で短く切りそろえてしまうものはないのか……?

 実際近くにある野原みたいなものがる公園は、短く刈られていいるはずだ。

 この間、業者の人が刈ってたのを通り掛けに見たし。

「……」

 ここまでの高さになると、大人は平気だろうが。

 ここで遊ぶ主役のはずのお子たちは、少々危ないだろう。

 そこまで鋭くはないとしても、目にでも入ったらどうするよ……。

「……」

 鋭くはないといったが、触った感じ、下手をすると手を切るタイプの草だった。

 ちょっと堅めの、薄くて、強めに握ったままにスライドする怪我をする。

 紙で手を切るのと同じような感じに近い……地味に痛いやつだ。

「……」

 しかし……。

 なんでここに居るかが全く分からないので、この先の行動が分からない。

 動くべきなのか、ここにとどまるべきなのかが分からない。

 先程から、色々と考えてはいるが、考えているだけである。

 この状態を他人に見られでもしたら、疑われるかもしれない。

「……」

 でもなぁ……。

 おかしいというか……。

 ここに私以外の気配が、全くしないのも気にはなっている。

 残念ながら、視界を動かしては居ないので、目の前に野原が広がっている事しか事実としてはつかんではいないが。

 後ろに人が居るような感じもしないし、遊歩道みたいなものもきっとないだろうし。

「……」

 そも。

 風すら吹いていないのは。

 異常だろう?

「っ――!?」

 そこまで思考が至り、もう少しで何かに気づけそうだと思った瞬間。

 手の甲あたりに、痛みが走った。

 何かと見れば、うっすらと傷ができていた。

 紙で切ったような、地味に痛いやつ。

「――」

 私が。

 たまに。

 限界になってしまうと。

 作ってしまう。

 ソレに似た。

 傷。

「――!?」

 今度は逆の手。

 続いて足首。

 逆。

 くるぶし。

 逆。

「――???」

 鈍い痛みが、全身を襲う。

 増え続ける傷は、どれも酷いモノではない。

 だから、地味に痛いと言うやつだ。

 大した、痛みはない。

 切られた瞬間の痛みはあっても。

「???」

 ひたすらに増えていく。

 混乱する私をよそに、次は頬のあたりにまで痛みが走る。

 なすすべはない。

 だって、何に何をされているのかも分からないのに。

 どうしろと。

 ただ増え続けるそれを。受け入れるしかできない。

「???」

 鈍い痛みだけが、傷だけが、増え続ける。

「―――」

 どうして。誰か。助けて。どうしたら。なんで。私が悪いの?自分のせい?何がいけないの?あんなことしたから?だって。だって。

「―――」

 ここに居る痛みが。ここに居る意味が。ここに居る価値が。

 私には―





 ―――――――――――――――!!!!!」



 びくんと、体が跳ねる。

 心臓がドクドクとうるさい。

 なんだ……寝ていたのか。

 身体の節々が痛む。

 椅子に座ったまま、机に伏して寝ていたようだ。

 視界に入った手首を、無意識に撫でる。

「――」

 ジワリと汗をかいている。

 気持ち悪い……。

 少々呼吸が乱れている気がするが、これはまぁすぐ落ち着く。

 軋む体をゆっくりと起こし、椅子に座りなおす。

 パサ―

「――?」

 何かが、床に落ちた音がした。

 背もたれ越しに見ようと、首を回す。

 そこには、少し離れたところに置いていたはずの。

 薄手の肩掛けが落ちていた。

 自分でひっかけた記憶はないから……。

「……なんだ。入ってきたんなら、助けれくれたらよかったのに」





 お題:野・増え続ける・肩掛け

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