畢生アレン
「どうして急に話してくれなくなったの?」
「それは…」
「まあ、言いたくないこともあるよね。ごめんね、無神経で」
「あ、良いですよ。こちらこそ」
まさか、まさかアレンが男の子だったなんて。
この子は畢生アレン。
アレンは幼稚園の時に水筒を落としてしまった子のことだ。
そして、和乃はアレンのことを女の子だと思っていた。
「なんで敬語なの?前みたいに普通に話してよ」
「だ、だって…男の子だとは思わなかったんだもん」
「男の子とか女の子とか関係ないでしょ」
「そうだね。じゃあ今まで通りアレンって呼ぶよ」
「うん。よろしくね。和乃ちゃん」
でもよかったな。アレンが元気そうで。
私は、1人でほっとしていた。
「ところで聞いていい?」
「なんだい?」
「なんで1人でピアノ弾いていたの?」
「あぁ。それはね、、、」
アレンが言うには、
クラスは居心地が悪いらしい。
趣味の話とかしたいのに女子がずっと自分に寄ってきて
“かっこいいね“とか“イケメンだね“とか顔の話ばっかりしてくるらしい。
1人で好きな本を読んでいたら他のクラスの知らない子が寄ってきたり、
それを見たクラスの男子がずっと睨んでくると、
そのせいで、クラスにいると居心地が悪いらしい。
だから人があまり来ない音楽室で趣味の1つのピアノを弾いていたと。
「あのさ、もしかしてアレンって2組?」
「え?うん。そうだよ」
あの時のクラスの女の子の言葉を思い出す。
『2組にイケメンがいるって聞いた?』
『聞いた聞いた。すごくかっこいいんだってね』
間違えない。アレンはクラスの女の子が言っていたイケメンだ。
「それは、かわいそうだね…」
「うん。お願いだ。助けてくれ。何かいい方法はない?」
「私にはどうしようもないけど、知り合いに相談してみるよ」
そう。こう言う時にはあの人を頼ろう。
「女子を寄らせない方法ですか?」
そう、ミィだ。
「うん。相談されてね」
「うーん。あ!そうだ!」
「何かいい方法があったの!?」
これがアレンの助けになるのなら、ぜひ聞きたい。
「ふふっ」
「なっなに?」
「いや、何にもありませんよ。それより、その子にこう伝えてください」
それを聞いて
「え?それだけ?」
「はい。あまり正面からは寄って来なくなると思います」
「わかった。そう伝えてみる。ありがとう」
「はい。…よかったです。本当に…」
次の日の昼放課に音楽室に集合してアレンに昨日のことを伝えた。
「え?本当にそれだけ?」
「うん。私も疑ってるけどね。はい、これイヤホン」
そう。これはイヤホンを使うのだ。
人間がやってしまうミスをあえてするらしい。
「スマホ持ってることだし、連絡先交換しようよ」
「え?いいけど、何で?」
「もっと和乃ちゃんと話したいから」
私なんかと話していいことでもあるのかな?
まあいいや。
「じゃあ、また明日な」
「うん。明日結果教えてね。頑張ってね」
「うん」