冥界
目が覚める。
「どこ?ここ?」
確か転んでボタン押しちゃったんだっけ。
詳しく覚えてないな。
とりあえず歩いてみるか。
500mくらい歩いた時、家が見え始めた。
木造で古い雰囲気の家だった。
「おい、そこの人間の嬢ちゃん」
「はい?」
後ろから話しかけられる。
誰だよ?
ナンパか?
「何ですか?」
「お前人間だろ。ここは危ないから早く人間界に帰りな」
「そうだ。ここには悪い妖魔がわんさかいるさ。お家に帰りな」
え?ここ人間界じゃないの?
てことは…
「もしかして…ここ冥界?」
「「ああ」」
私、冥界に来てしまいました。
「ほら、早く帰りな」
「あの、ミィっていう妖魔の女性知りませんか?」
「う〜ん…知らないな」
「生まれたのはいつぐらいって言っていたか?」
「ええっとね、50億年前くらいって」
「「!?」」
「え?どうしたの?」
「嬢ちゃん。そいつの名前は?」
「だからミィですって」
「だったら、その女は嘘ついてるぞ」
ミィが嘘?
「理由を聞いてもいいですか?」
「50億年前に生まれた妖魔のことを『原初姫』っていうんだ」
「その原初姫は9人しかいないが、ミィなんて名前の奴はいない」
そっか…
ミィも嘘つきなんだ。
「とりあえず、ここの近くに原初姫の1人がいるから、話を聞きに行こう」
「…うん」
少し歩くと言われて歩く。
歩く。
ずっと歩く。
何時間経った?
「遠くね!?」
「え?そんな遠い?」
「うん!」
「大丈夫。もうついたよ」
体内時計だと、2時間半くらい歩いたぞ。
漢字で武器屋と書かれたお店に来た。
今の時代に武器屋なんてあるんだね。
「ブキ様。話を聞きたいですが、空いてますか?」
「いいぞ」
「さあ、入れ」
「失礼します」
その中に入ると、剣や刀だけではなく、盾などもあった。
「お前人間か。珍しいな」
カウンターらしきところから聞こえた声はミィとどこか似た雰囲気の声だった。
「さて、聞きたいこととはなんだ?」
「あっはい。ミィっていう妖魔を知りませんか?」
「ミィ?聞いたことないな」
「その嬢ちゃん曰く、ブキ様と生まれた年が同じらしいんすよ」
「特徴は?」
多分、年で覚えてたくらいだから、身体的特徴を話してもわからなそうだな。
なら、
「いつも敬語話してるけど、時々乱暴な口調になります。あと、料理がうまいです」
「「なっ!?」」
「本当か!?」
ブキさん?だけじゃなく、案内してくれた2人も驚いていた。
「はっ、はい。心当たりが?」
「あるが、ありえない。そんなことがあってたまるか。今から客としてもう1人原初姫が来る。そいつに聞いてくれ」
「その原初姫の名前は?」
「ココロ」
「珍しいな。ココロ様が冥界にいるって」
ココロ?
もうわけわかんない。
とりあえずその人に聞いてみるか。
「ブキ?いるか?入るぞ」
「来たぞ。聞いてみろ」
なんか聞き覚えのある声のような…
「ブキ?いるなら返事しろよ」
「…ミィ?」
「え!?和乃さん!?何でここに…」
「まさかミィって…原初姫?」
「言ってなかったっけ?そうだよ」
もういいや。
私は何にも驚かないよ。