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妖魔と共に見る景色  作者: てぃたいむ
第1章 ムネーモシュネー
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始まって終わる日常

「そういえばさ、ミィっていつ人間界に来たの?」

「え?」


気になるんだ。

ミィの作る料理は、明らかに人間のものだった。

もしかしたら冥界にもそういう技術があるのかもしれないけど…


って、そんんなことはどうでもよくて、とにかく気になったの!


「ええっと、1857年にあの人につかえ始めたから…166年前ですね」

「はああああああ!?!?」


今なんて言った!?

166年前!?

てっきり20代くらいだと思っていたのに…


「あ、訂正がありました。そこからしばらくすると戦争とやらのくだらないことが始まったので、しばらく冥界に戻っていて、1945年の夏に戻って来ました」


もう驚かないよ…

もう何言われても驚かないよ。

絶対に!!


「じゃあ、何歳?」

「うーん、確か50億年前くらい前に生まれた気がします。てか、レディに年齢を聞くとかマナー違反ですよ!!」


……わあ、すごい。

地球誕生より前だ…。


「そんな年寄りなのにまだまだ若いね」

「妖魔自体には寿命という概念はありませんからね。細胞も分裂しませんし」


寿命がないのか。

じゃあ、私はミィの記憶の中のほんの一瞬にしか過ぎないのかな?


「寿命っていう概念をつくった妖魔はいますよ。とっくの昔に追放されましたけど」

「追放?」

「悪いことをしたりすると追い出されたり、処刑されたりします」


そこは人間と同じなんだね。


「そろそろ学校に行く時間じゃないんですか?」

「じゃあ、そろそろ来るかな?」

「?」


ピーンポーン


ほら来た!!


「今日すみれとアレンと一緒に登校する約束してたんだ」

「それは良かったですね。はい、お弁当です」

「いつもありがとね。行ってきます」

「行ってらっしゃい」


ドアをあけ、見えた2人の人影に話しかける。


「おはよう」

「「おはよう、和乃ちゃん」」

「じゃあ、行こうか」


私は歩きながらいろんな話をして笑った。

いいな。一緒に投稿できる友達がいるって。


「お、もう学校だね。じゃあ、今日も音楽室で」

「了解」

「分かった」


もう学校についちゃったのか…

少し残念だけど、すみれが一緒のクラスだからいいや。


「今日って体育あったっけ?」

「うん。あったよ」

「じゃあ、ジャージ忘れちゃったわ」

「どうするの?」

「アレンに借りる」

「確かに前アレンが借りに来てたね」

「うん。その時みたいに借りに行く」


そんな話をしながら教室に入った。

すると、みんなが1つの場所に集まっていた。

みんなが私を見ると同時に責めるように睨みつけ叫んだ。


「まさかこんなことをする奴だなんて最低だ!!」

「そうだ!そうだ!」

「まさか人を殴って泣かせるなんて…!」


私はよくわからなかった。


「何の話?」

「とぼけるな!!昨日、お前は安藤さんを殴って泣かせたんだろ!!」


昨日のやつか。懲りない連中だな。


みんな私を責め立てる。

その光景に笑っている奴が1人いた。


あいつは…

昨日私をいじめようとした奴らの1人だ。


みんな私の方を見てるから気づかないのか。

やっぱりしょうもないな。


「はぁ。しょうもな」

「あ?今なんつった?」


私を責めてきた奴の1人の男が突っかかってきた。


「お前は安藤さんを殴って泣かせたんだぞ!!反省する気あるのか!?」

「ない。そもそも私は悪くない」


安藤さんって言うんだ。

初めて知った。


「お前…いい加減にしろ!!」


その男が私の胸ぐらを掴もうとしてきたので反撃しようとする。


「やめろ!!」


クラスに一際大きい声が響いた。

先生の声だ。


「なんでこんなことになった?説明しろ。櫻井」


櫻井って言うんだ。

これまた初耳だ。


「はい。一橋が安藤さんを殴って泣かせました。それに怒って問い詰めていたところです」


いや、問い詰めてたってほとんど集団いじめだろ。


「安藤、本当か?」

「…はい。本当です。昨日お腹を蹴られました。イライラするって言いながらすれ違った私のお腹を…うぇーん」


泣く演技意外と上手いな。

アレンより上手いかも。


「これは生徒指導の必要があるな…」

「そうですよね。おい!一橋!指導室でたっぷり反省するんだな!」


なんで、お前がそんな上からなの?

正直気持ち悪い。

まぁいいや。

これもまた想定内だし、手を打っておいて正解だったな。


「よし、安藤、絹衣、田嶋、一之瀬。お前らは生徒指導だ。来い」

「「「「「え?」」」」」


さっき呼ばれた4人と櫻井の声が重なる。

私?

私は驚かないよ。

だって、私が仕組んだことだから。


「な、なんで?私たちなんですか?」

「“何で?“だ、ふざけるな!いじめを行ったのはお前らだろ!」

「なっ!?どういうことですか、いじめをしたのは安藤さん達って!?」

「まずはこれを見ろ」


先生はスマホを取り出してあるビデオを流した。


そこに写っていたのは私にいちゃもんをつけて暴力を振るっている場面だった。


「何これ…何なんなのよ!?説明しなさい和乃!!」


私は帰り際に先生にこのビデオを渡した。

それだけだ。


「と、盗撮よ!盗撮!れっきとした犯罪だわ!!」

「盗撮?それってこれが事実だって認めたってこと?」


クラスのみんなの視線が4人の方に向く。


「ちっちが…」

「それに、撮影しているのに勝手に入り込んできただけでしょ」


私はただ1日の記録を録画しようとしただけだ。

それに気づかずに写り込んだのはあんた達だよ。


「今回は一橋が正しい。大人しく従いなさい」

「先生。なぜ証拠があるのに安藤さん達の話を聞いたんですか?」


そう櫻井って奴が質問して。

それに対して先生は一瞬驚いた顔をした。

でもすぐにこう言った。


「それはお前に話を聞くことの大切さを学んでもらうためだ」

と言った。


「櫻井。お前は安藤が一橋に殴られたと聞いた時どうした?」

「一橋を責めました」

「それは安藤の話からそう思ったのか?」

「はい」

「なら何故一橋の話を聞かなかったんだ?」

「あ…」


やっと気づいたか。

そう。彼は間違った判断をしてしまった。

それは、双方の話をしっかりと聞かなかったことだ。


「それをお前に理解して欲しかったからあえて話を聞いたんだ。一方の話に流されるな。大人になれ、櫻井」

「はい…」


反省したようで何よりだ。


さて、あまり大事にしたくないからな…

どうしよう?


「一橋…さん」

「ん?何?」

「ごめんなさい」

「いいよ。気にしてないし。それよりさ!前から思ってたんだけど!櫻井くんが学校に持ってきてる本って『駆け込み訴え』?」

「うん。って、もしかして君も太宰ファン!?」

「うん!!」


そう。私は太宰治の本が大好きなんだ。

特にその中でも駆け込み訴えは本当にね!!


「どの場面が好き?」

「どの場面っていうか、ユダのセリフだけで狂っているっていうのがすぐわかるのがすごく好き!」

「わかる!」


しょうもないとか言ってすいませんでした。


「ゴホン。とりあえず4人は生徒指導だ。櫻井はしっかりと反省するように」

「はい」


これで一件落着だね。


「一橋さん。改めてごめんなさい」

「いいよ。気軽に和乃って呼んでくれれば。それより話の続きをしよう」

「うん。俺のことも夜端って呼んでくれ」

「分かった。夜端ね。これからよろしく」

「よろしく…」


その時の夜端の顔は少し赤くなっていた。

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