７１．本当の目的
枕投げの話を膨らませたら、どこまでも膨らんで、ついには視聴者たちが枕投げ旅行に出掛ける話になったので没になりました。
「――とまあ、俺がエルフになった流れはこんな感じだ」
「お兄ちゃんが随分とファンタジーだよぉ……」
「信じられないか？」
「ううん。後で大恥をかくことは覚悟の上で、全面的に信じるって決めたから」
「そうか。で、何食べる？ スイーツはプリンとゼリーがあるぞ」
「お兄ちゃんは割り切り過ぎ！」
上位チャット：エルフが思い悩む瞬間、未だに観測されてません
上位チャット：行動力の化身である
「お兄ちゃん、これは配信中なの？」
「おう」
「うわ……凄い視聴者数。そうかなと思ったけれど、やっぱり、お兄ちゃんがエルフさんなんだ……」
「知ってるのか？」
「配信は見たことないけれど、有名だよ」
上位チャット：へぇ、エルフさんも知名度高くなったなぁ
上位チャット：まだまだローカルだと思ってた
上位チャット：苦節数日、感慨深いわ
上位チャット：お前の感慨、掃除するときのプールくらい浅くね？
「画面真っ暗だけど、カメラはないの？」
「ない」
上位チャット：壊れちゃいました
上位チャット：枕にやられた
「枕？」
「投げた」
上位チャット：白熱の枕投げバトルやってたんです
上位チャット：エルフさん、めっちゃ楽しそうだったなぁ……
上位チャット：修学旅行で枕投げする同級生を無視して寝た俺、やっときゃよかったと心底後悔してる
上位チャット：わかる
上位チャット：まさか、十年経っても次のチャンスが巡ってこないなんて思わないじゃん……
「枕投げって、普通の旅行でするものだっけ……？」
「したぞ」
上位チャット：普通はしないです
上位チャット：何なんだろうな、枕投げって
上位チャット：修学旅行限定イベント
上位チャット：やらないと人生損する類のやつ
上位チャット：あああああ……なんで、格好付けた、あのときの俺……
「カメラは直さないの？」
「俺には直せなかった」
「そうじゃなくて、保証は利かないの？」
「む」
上位チャット：めっちゃ、ガサガサ音するｗ
上位チャット：エルフさんは箱、捨てちゃうタイプかー
「ふむ。購入半年以内なら一回だけ無償で交換してくれるらしい」
上位チャット：おお！
上位チャット：マジか！
上位チャット：メーカー、グッジョブ！
上位チャット：【朗報】カメラ復活【万歳】
「俺は他にも買うものがあるから行くけど、キョーカはどうする？」
「う、うーん……どうしようかな……」
上位チャット：俺らも連れてってー
上位チャット：面白いことになりそうだしー
上位チャット：何、買うの？
「水着」
「え」
上位チャット：俺らも連れてってぇえええ！
上位チャット：ほら、早速面白いことになってきた！
「お、お、お、お兄ちゃん、み、水着って……ど、どっちの？」
「女物」
「着るのそれっ!?」
「男物にするか？」
「それはもっとダメーっ!?」
上位チャット：済まねぇキョーカちゃん……これはエルフさんと俺らの、男と男の約束なんだ！
上位チャット：そうだ！ 俺らの魂が水着を求めてるからしかたないんだ！
上位チャット：水着エルフ！ 水着エルフ！
上位チャット：私は女だけど、ブラン姫も体丸ごと借りておいて、水着姿見せる程度のことで文句は言わないとは思う
上位チャット：……そういえば、女性視聴者もいるんだった
上位チャット：でも、あんたらも多少は自重しなさいよ？
上位チャット：はい
「キョーカが選んでくれると助かる」
「うん。選ばせて……。ちょっと不安だし」
上位チャット：キョーカちゃんの好感度が下がった
上位チャット：真面目に自重します
上位チャット：反省
上位チャット：三メートル以上の高さから飛び降りません
上位チャット：それ、エルフさん
「三メートル以上の高さから飛び降りません？」
「キョーカ、行くぞー」
「あ、うん。お兄ちゃん、『三メートル以上の高さから飛び降りません』って何だろう？」
「気にするな」
上位チャット：エルフさんｗ
上位チャット：今、誤魔化しても、そのうちアーカイブでバレるぞｗ
「これで、デパートスイーツを食わせられる」
上位チャット：あ、まだ食わせる気だった
１万ブックマーク、６万ｐｔに到達しました。たくさんお読みいただきありがとうございます。
感想のお返事は最新話を優先して行おうと思います。
