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生放送! TSエルフ姫ちゃんねる  作者: ミミ@2~4巻エルフさん出しました!
4.木の上のエルフさん ―各種アクティビティ―
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63.変な趣味

答え合わせ。

「ここーで一発、笑多イム! かっとばせー、笑多! フレーフレー、笑多!」


 御道陸から見て、御道海空は変な趣味をした姉であった。

 スポーツ観戦を好み、野球にサッカーにバスケにと、節操なく応援をする。そこまでならばちょっと珍しい程度なのだが、ミソラはどうにも応援するチームに偏りがあった。


「あっ、だめっ! 早く戻って! あっ、あっ! 戻って! 戻って! あーっ!?」


 ミソラは弱いチームばかり応援するのだ。


「ああぁ……また最下位に戻っちゃった……」


 弱いチームだから負ける。負けるからよく叫ぶ。理屈はとても単純だった。

 さて、ミソラにとって幸いだったのは、弟リクが姉の魅力を理解していたことだろう。


「ミソラ、月曜日は事務所に出掛けるので忘れないでください」

「事務所?」

「はい。Vチューバー事務所の面接があります」

「ええっ!?」


 リクは勝手に話を進めた。きっと、多くの人がミソラの虜になると思ったから。

 そして、それが現実になったのは、これからすぐの話。


「びっくりしたけど、凄く倍率高いみたいだし、私なんかが採用されるわけないよね。あはは」


 ミソラにとって不幸だったのは、弟リクが姉の魅力の引き出し方まで理解していたことだろう。

『逆神様』と呼ばれるようになったのも、これからすぐの話。


「では、五連敗の罰ゲームです」

「にゃんでぇ!?」


        ◇◆◇


 一本先制された状態で、配信者チームはミソラだけ。対する四天王チームはエルフを加えた五人。

 エンドラインの外――つまり、配信者チームが守るゴールの後ろ――からのスローインでゲームは再開されるが、ミソラにはボールを受け取る相手すらいないのだ。


「ミソラ。さあ、遊ぼうぜ!」

「え、エルフさん、こんな状況でどうしろっていうんですかぁ!?」


上位チャット:もっとも過ぎる

上位チャット:勝負にならんでしょ

上位チャット:そもそも、ボールをどこに投げりゃいいのさ

上位チャット:足元に投げて、それを拾うのはダメなの?

上位チャット:他のプレイヤーが触れるまで触れないルール


「ワーッハハハ! 事情はわからんが、勝たせてもらうぞ! 征くぞ、ブラック、グリーン、ピンク、そして、エメラルドグリーン!」

「「「ヤーッ!」」」

「おう」


上位チャット:そこは乗ってあげてw

上位チャット:草


 にじり寄るエルフたちを前に、ミソラの腕がついに狙う先を見つける。


「そこですっ!」

「むっ!」


上位チャット:おっ

上位チャット:なるほど、それがあったか

上位チャット:相手にぶつけるのってありなのか

上位チャット:スローインで相手にぶつけてライン外に出させることで、スローインをやり直すことは稀にある


 ミソラがスローイン相手に選んだのは、レッド。ただし、取りにくいよう強く低く投げ込んだ。

 果たして、ボールはレッドの体を跳ね返り、ミソラはエルフたちに奪われることなく、ボールを確保できた。


「ワーッハハハ! やってくれるわ! ブラック、グリーン! 左右から詰めろ! 前を向かせるな!」

「……っ!」


 しかし、そこから先のプレーに繋がらない。

 ミソラのドリブルを潰そうと、レッドたちは圧力を強める。

 シュートを放ろうにも、ゴールを正面に捉えることすらできない。


「無駄だっ! ここは通さんぞ!」

「ううっ……まだです! そこぉっ!」


上位チャット:そうだ、ここには木があるんだった


 だが、ミソラは粘る。

 フィールド上に生えた木のみきにボールを当てて、ドリブルを継続しながら囲いを抜け出す。


「ミソラ、通さないぞ」

「う、ううっ……!」


 それでも、まだ足りない。

 囲いを抜けた先にはエルフが待っていた。たったひとりでもレッドたち三人を上回る脅威。一瞬でも気を抜けばボールを失うことになると、ミソラは直感する。

 さらに、その後ろでは、レッドたちが再度囲いを作ろうと回り込み始めている。

 センターラインすら遠い。到底、投げて入れられる距離ではない。


「こんなの――」


上位チャット:こんなの、無理じゃないか


「どう考えても――」


上位チャット:どう考えても、できっこない


「何と言おうと――」


上位チャット:何と言おうと、通れないよ


「誰にとっても――」


上位チャット:誰にとっても、不可能だ









上位チャット:だって、相手が強すぎるんだもん









「――最っ高じゃないですかっ!」


上位チャット:え

上位チャット:叫んだ

上位チャット:逆神様?

上位チャット:団長?


「あっははははは! 行っきますよぉ! 上手に――取ってくださいっ!」


 ミソラは吠えた。

 吠えて、ボールを力いっぱい投げつけた。

 ミソラはもちろん、エルフも四天王もいない、フィールドの最奥。四天王ゴールの、その前。そこに待つ――


「ミソラ、僕はスタッフなんですよ?」


 ――リク目掛けて。


「リクくん、『配信者チーム』なんだから間違いじゃないでしょ?」

「そうですね。そうしておきますよ」


 誰かが間に合うはずもなく、リクは悠々とシュートを決めた。


「よぉおおおっし! エルフさん相手に、同点だぁー!」


上位チャット:同点! 同点!

上位チャット:うぉおおおおおおお! 逆神様!

上位チャット:逆神様! 逆神様!

上位チャット:団長! 団長!

上位チャット:逆神様! 逆神様!


「本当に変な趣味ですよね。ミソラの――ジャイアントキリング好きは」


 かつて、姉の魅力を発信しようとした少年は、そうひとちて苦笑いした。

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― 新着の感想 ―
[一言] その巨人か…逆境じゃないとアドレナリンが出ずに満たされない人は確かにいる
[一言] 変わった趣味だなぁ
[一言] おひょー!楽しくなってきたぁ!
感想一覧
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