129.アイマスクの使い方
装着した状態で十回ほどぐるぐる回ってからスイカを割るのに使います。
「なんで、エルフが事務所に居るのじゃあ!」
していたアイマスクを取った女の子に叫ばれた。
上位チャット:まあ、当然の疑問
上位チャット:意外と冷静
上位チャット:シラフか? もっと飲んでいこう!
「契約しに来たから」
「なぬ? ……お主、2.5Dに入るのか?」
「んーん。案件の契約を仲介してもらっただけだ」
上位チャット:すみません、今の「んーん」もう一回お願いします!
上位チャット:イエス「ん」
上位チャット:ノー「んーん」
上位チャット:エルフ語の解析が進んできましたね!
上位チャット:エルフ語じゃなくてエルフさん語なんだよなぁ
上位チャット:それより、カメラもうちょっと上げてー
「カメラ上げていいのか?」
「少し待つのじゃ。……配信に出ると言った覚えはないんじゃがのう」
上位チャット:ボソッと本音がw
上位チャット:流れに乗せられる酒飲み幼女
「もうよいのじゃ」
「ん」
「改めて、2.5Dの酒呑幼子じゃ。『おさなご』と書いて『ようじ』と読ませておる」
肩口に揃えた髪に、イチゴの模様をあしらったシャツとジャージのズボン。口元を隠すマスクを除くと、頭に載せた大きなリボンが強い主張をしていた。
上位チャット:酒飲み幼女がちゃんとちっちゃい
上位チャット:よかったよかった
上位チャット:解釈が現実と一致してます
「ワシは配信でも言っとろうが。現実もチビじゃと」
そう言う彼女の身長は、一五〇センチに少しだけ届かない。
上位チャット:いやー、割と酒飲み幼女の根幹設定なところあるし
上位チャット:そうそう
「根幹設定?」
「ワシは早生まれでの。小さい頃からチビしとったんじゃよ。背の順では先頭が定位置で、体育ではクラスメイトどころかボールにすら当たり負ける有様だったのじゃ」
「ふむ」
「それでワシはしっかり運動嫌いになった。体育があるから学校を休んだりしとった。ま、不良じゃな」
上位チャット:それ、不良かな?
上位チャット:多分違う
上位チャット:自虐でしょ
「ほいで、ズル休みしても家には暇潰しに遊べるゲームがろくになくての。ずーっと古臭い数本のゲームをやり続けることになったのじゃ。何時間も何時間も――後に、世界最速のプレイヤーになるほど、のう」
上位チャット:風が吹く→砂が舞う→目に砂が入る→失明する人が増える→三味線弾きになる人が増える→三味線の材料に猫が減る→捕られなくなってネズミが増える→ネズミが木桶をかじる→酒飲み幼女が生まれる
上位チャット:桶屋「あれ?」
上位チャット:へー、そういう経緯だったんだ
上位チャット:なるほど、これは根幹設定
上位チャット:もっとゆるい理由でRTAやり始めたものとばかり
「世界最速」
「そうじゃぞ。お主の目の前に居るのは世界最速じゃ」
「勝負する?」
「嫌じゃ」
上位チャット:断られたw
上位チャット:――世界最速、挑まずには居られない
上位チャット:ノータイムで拒否られましたが
上位チャット:もっとうまくやる気にさせないと
「世界最速」
「うむ。ワシは世界最速の女じゃ」
「凄いな」
「そうじゃろう、そうじゃろう」
「勝負する?」
「嫌じゃ」
上位チャット:搦め手を覚えたエルフさん
上位チャット:覚えたと言えるのだろうか
上位チャット:二、三歩助走をつけて突撃することを覚えたんだぞ
上位チャット:ガガーリンは一歩だが、エルフさんは二、三歩
上位チャット:つまり、エルフさんは二倍以上速い……?
上位チャット:これはもう勝負するしか!
「――らしいぞ」
「なんで、ガガーリンが突撃した人になっとるんじゃ!」
上位チャット:乗ってこない
上位チャット:意外と冷静
上位チャット:シラフか? もっと飲んでいこう!
「そもそも、ワシが何のゲームをしとるか知っとるのか?」
「知らん」
「『スカイハイ』というアクションゲームじゃ、やったことはあるかの?」
「ない」
「ならば、いきなりやって勝負になるわけがないのじゃ」
「そうなのか?」
上位チャット:エルフさんには悪いけど、ボロ負けすると思う
上位チャット:ダブルスコア付けられても不思議じゃない
上位チャット:マジで? エルフさんだよ?
上位チャット:昨日の『落ちりて』もプレイヤー人口の多いゲームだったけど、『スカイハイ』はその上に三十年以上の時間が加算されているゲーム
上位チャット:だから、表技も裏技もしゃぶり尽くされてる
「RTAは知識と反復練習で一秒を削る競技じゃ。素人がいきなり挑んで戦える世界ではないのじゃ」
「凄いな」
「そうなんじゃよ、そうなんじゃよ」
「アイマスクはどう使うんだ?」
上位チャット:それは縛りプレイしてただけだと思います
酒飲み幼女は目隠し縛りプレイをしていました。





