１１４．巨大人工物は好きですか？
準決勝その２。
「でかい」
コースの中盤。俺の目の前で、プレイヤーの百倍はあろうかという超巨大水車が大音を立ててゆっくりと回っていた。
上位チャット：本当にでっかいなぁ
上位チャット：水車をまるごと滝にぶち込むという発想
上位チャット：こういう物理法則無視した巨大人工物好き
上位チャット：巨大戦艦
上位チャット：あー、好き
上位チャット：巨大ロボ
上位チャット：好き
上位チャット：エルフさん
上位チャット：大好き
上位チャット：つまり、エルフは巨大人工物
上位チャット：違う
「涼しげ」
滝となって流れ落ちる水が水車の水受けに注がれているのだが、そこからもさらに溢れてプレイヤーが走るエリアにも断続的に流れ込んでいた。
上位チャット：水があると、それだけで涼しいよねー
上位チャット：わかるー（でも、電車の冷房はもっと強くしてください）
上位チャット：言えてるー（強冷房車ください）
上位チャット：冷蔵車かな？
上位チャット：あ、真上から水浴びたやつが滑って谷底に
「流し人間」
上位チャット：夏にぴったりな、どえらい料理が生まれてしまった
上位チャット：スケールの大きな料理ですね（物理）
上位チャット：人間の食べ物じゃないと思います
上位チャット：やはり、エルフは巨大人工物
上位チャット：違う
「次のエリアまで流されたい」
上位チャット：無理です
上位チャット：さっきも言ったけど、『落ちりて』の水は力が弱い
上位チャット：せいぜいコケる程度なの
上位チャット：見た目と違って安全な水なんです
上位チャット：言い回しィ
上位チャット：骨とか浮いて泡立ってそうｗ
「水の力が弱いなら、泳いで登れる？」
上位チャット：泳ぐコマンドがないです
上位チャット：そもそも断続的だし
上位チャット：水浴びしたいエルフ
上位チャット：水着は買ったな！ 行くぞォ！
上位チャット：いいよいいよーその表情ー！ せっかくの水着だし、ちょっと大胆になってみようかー（巨大化）
上位チャット：大胆（物理）
上位チャット：肝以外も大きい
上位チャット：きっと、エルフは物理法則を無視した巨大人工物
上位チャット：違う
「キリシたんさん、後ろから来るお兄ちゃんは怖いですね」
「予想はしてたけど、脱落しそうにはないわね」
「はい……」
上位チャット：で、エルフさんとは反対にキリシたんとキョーカちゃんは不調そうですね
上位チャット：不調そう（現在一位二位）
上位チャット：仕掛けるのに使えそうなのは、タルがわずかに二個だけ
上位チャット：数がないのが痛いな
上位チャット：ここのタルはステージギミックじゃなくてただの装飾だからねぇ
「お兄ちゃんに当てられそうですか？」
「……ちょっと難しいわね」
上位チャット：これは「無理」の意味だと、子羊は思います
上位チャット：高低差あるコースだし、狙えそうだけど
「キリシたんさんでも当てられないですか？」
「動きが鈍るポイントはあるから、カスるだけでいいならいけるわよ。でも、それじゃ、ヒヨコは出せないわ」
上位チャット：ヒヨコ？
上位チャット：クリーンヒットすると、出るやつのこと
上位チャット：頭の周りをぐるぐる回って、最大八秒間気絶させられる
上位チャット：エルフさんを脱落させるなら、せめて、そのくらいのロスは欲しいか……
「でも、練習試合では当ててましたよね？」
「あの時は、プレイヤーの動きが固定されるシーソーがあったでしょ。あたしはそれを狙って投げたのよ」
上位チャット：クリーンヒット以外を命中と認めないキリシたん
上位チャット：普通、「当てる」って言ったら、カスるだけも含めるんですよ？
上位チャット：キリシたんは日本語が通じないわけじゃないんだ、ただ修羅なだけで
上位チャット：修羅なだけとは
「――動きを止めれば、いいんですね？」
上位チャット：お
上位チャット：キョーカちゃん？
「そうね。動きを止められれば、あたしはエルフに当てられるわ」
「わかりました。よろしくお願いします」
上位チャット：え、戻るの？
上位チャット：このまま行けば、決勝出場は確実なのに
「セイレーン、いいの？」
「構わないです」
「あたしがタルを外したら、あんただけが決勝進出できないかもしれないわよ？」
「挑まなかったら後悔すると思うので」
「どうして？」
「『全力で遊ぶ』って決めたからです」
上位チャット：笑った
上位チャット：キョーカちゃんもキリシたんも、いい笑顔してる
上位チャット：うーん、青春
「セイレーン」
「はい」
「またコラボしましょ。今度はエルフ抜きで」
「はいっ！」
上位チャット：祝、セイレーン、お友達に遊びに誘われる！
上位チャット：大漁旗を掲げろ！
上位チャット：祝、キリシたん、お友達を遊びに誘う！
上位チャット：シンボルを掲げろ！
上位チャット：さあ、盛り上がってまいりました！
６００万ＰＶを突破しました！
たくさんお読みいただき、ありがとうございます。
２章にまたがるキョーカの物語、最後までお付き合いいただければ嬉しいです。
