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#60 妹

 意識の中心とは離れている肉体の耳に、声が届いた。

 ベイグルさんの声だ。

 自分の肉体を実感すると、意識の中心が肉体の側へと戻ってくる。

 魔法の効果時間はまだ続いていて、レムの声はまだ遠くに聞こえている。


「あ、無事です」


 レムに触れた手は離さずに振り返ると、ベイグルさんと、その傍らにはベイグルさんの外套を羽織った裸足のタービタさんもいた。

 となるとタービタさんを操っていたのはレム以外にいないと見て間違いなさそうだな。


「それは良かった。タービタもなんとか無事に取り戻せました」


「私のせいでご迷惑をおかけしました」


「いえいえ、タービタさんもご無事で何よりです」


「して、リテル殿。その子は」


「事情があって協力させられていた砦の兵士のようです。現在は麻痺毒で無力化していますが、俺たちとの戦闘継続の意思はないことは確認しています」


「あの……私がこんなことを言える立場ではないかもしれませんが、死せる旅人ヴィエートル・モルトスにするのはお許しいただけないでしょうか。盗賊団の支配下にあった私を守ってくれたんです」


 死せる旅人ヴィエートル・モルトスというのは、街の外で死んだ者の遺体を街まで運ばずに自然の中へ還すことを言う。開けた場所ならば燃やす、森など火を使うことをためらわれる場所ならば埋める、ということ。

 レムはまだ生きている――つまり、処刑を意味する言葉。

 また「自然へ還す」ということについては、この世界(ホルトゥス)では地球で言うような「墓」の概念がないからのようだ。

 死者の肉体を残すと、獣や魔獣に喰われたり、ゴーレムとして利用される恐れがあるというのがその理由らしい。

 基本は火葬で、焼け残った骨は砕いて遺灰と共に親族や親しかった人の家の周りにまくと、その人たちを守ってくれる、みたいな考え方なのだとか。

 王族や貴族の一部においては、その遺灰を壺などに入れて保管する場合もあるようだが、それでも墓は作らない。

 街道付近で死体を行き倒れの死体を見つけたら、焼いて残った骨を砕き、街道にまくとそこを通る者を守るという考え方すらある。

 焼ききるまでの時間が取れない場合は深い穴を掘って埋める。

 棒の類いの目印は立てない。知性の高い魔物にとっても目印になり得るから。

 寿命の渦(コスモス)が肉体と魂をつないでいる、というのは魔術的に解明されているため、魂の離れた肉体は物理的に「他人の迷惑がかからないように」処理する。当然、遺体損壊罪みたいなのはない。

 ちなみに「墓」という単語は、何らかの事情により燃やせなかった死体を埋めた場所のことを指す言葉のようだ。

 ラビツたちに壊滅させられたゴブリン集落の、ゴブリンたちの死体を埋めた場所のことをカエルレウム師匠たちは「墓」と呼んでいらしたし。


「俺も、この子は助けたいと思っています」


 街の外においては、証拠のない殺人は罪にはならない。

 たまたま死体を見つけたのか、悪意を持って殺したのか、自衛で返り討ちで殺したのか、その判別がつかないからだ。

 もちろん証人や証拠が発見された場合、街の中で裁かれることもある。

 それでも嘘を看破する魔法や、死者が生まれ変わる前ならばその証言を得る魔法みたいなのもあるようだし、そういう意味では地球とはまた違った発覚の可能性があるみたい。

 裁判にかかる費用――つまり使用した魔法にかかる魔法代償(プレチウム)は、裁判に負けたほうが自身、もしくは購入した寿命の渦(コスモス)で支払うため、取りっぱぐれがないというのもよくできている。

 で、今回のケースでいえば、俺たちは自衛したという証人が残っている。

 ケティも殺されかけたし、スノドロッフの子どもたちはさらわれたし、砦の兵士であるロッキンも証言をしてくれると約束してくれているし。

 しかもベイグルさんの方からフォーリーの魔術師組合へ既に連絡を入れているとのことで、そういう意味でも俺たちが過剰防衛として罰せられることはないとのこと。

 スノドロッフ村からクスフォード(虹爵(イーリス・クラティア))領への魔石(クリスタロ)の納入においては運搬等に関する秘匿性を守るために、フォーリーの魔術師組合から通信用の魔法品を支給されているらしく、それを使ったようだ。

 ここでレムを殺しても自衛の一環となるのが通例だからこそ、タービタさんはあえて「生かしてほしい」ということを言ったのだと思う。

 俺も、レムのことは助けたいと思っている――ディナ先輩には厳しめに叱られるかもだけど、俺が元の世界へと戻る手がかりになるかもしれないし。


「そうか。検討しましょう。麻痺している状態ならば、小屋へ運んでください」


「わかりました」


 ずっと触れたままだったレムへ意識を移す。


(とりあえずは、スノドロッフの村長さんがレムを助けることを検討してくれるようだよ)

(リテル、私のこと助けたいって言ってくれたね)

(聞こえてたのか)

(うん。遠くに、だけどね)


 俺がさっき麻痺毒にやられている間も意識や感覚が残っていたのは、『カウダの毒消し』を自身にかけていたからだと思っていたが、この麻痺毒の性質がそもそも意識を完全に遮断するものでもないのかもしれない。

 タービタさんも体を支配されていたときのことを把握していたようだし――となると、エルーシも俺たちの会話を聞いていた可能性がある。

 麻痺しているからといって油断してはいけないってことだな。


(レムがタービタさんの体を守ったからこそ、タービタさんもレムを助けたいって言ってくれたんだと思うよ)

(なんか Mom と同じようなこと言うね。人を助けると返ってくるんだよって)


 レムのお母さん、イギリス人のミュリエルさんはもう亡くなられている。

 ベイグルさんはああは言ってくれたけれど、レムとの会話がこれっきりという恐れもある。

 何か情報を引き出すのならば今のうちという思考が自分の中に湧くことに、その非紳士的な自分に、わずかだが嫌悪をも覚える。


(……でも、Mom は村の人たちを助けまくって命を失った。私たちの世代以降の生存率があがったって村の人たちは喜んでいたけれど、それは私以外の人たちの話。私は失っただけ)


 レムの次の言葉を聞く前に、俺はその先の言葉がわかってしまった。

 この『テレパシー』によるやりとりは、会話のようで会話ではない。

 言葉が伝わってくるとき、その言葉の裏側にある感情や思考、密接な記憶もまるごと流れてくるから。

 最初にイメージした通り「精神の接続」であり、俺が「テレパシー」という言葉に感じていた効果そのままだから。

 俺から言葉を送るときはなるべく言葉以外は送らないようにセーブしているけれど、レムから来るのは言葉ではなく言葉にならない部分まで含んだレムの想いそのものだった。


(お父さんはもっと早くに亡くなって、バータフラ世代も私以外は全員いなくなった。一番優しかったミンも……私はもう、一人ぼっちだから……)


 かけられる言葉が見つからないでいる間に、レムの想いがどんどんと流れ込んでくる。


(……だから、今回のことでもしも殺されるようなことがあっても、それでもいいかなって思う。そのときは、リテルがウォルラースを殺してくれたら嬉しいな)


 多分、一人ぼっちという境遇が、今の自分(としてる)に重なってしまったんだと思う。


(……リテル? 温かいよ……私のこと抱きしめてくれているの? いいよ。私のことを抱いても。その代わり、ウォルラースのこと、お願い)

(違うよ。抱くために抱きしめたわけじゃない。というか、抱きしめようと考えたわけじゃなくて)

(じゃあ、どうして? ……同情?)

(俺もだよ。俺も一人ぼっちだよ……俺はチキュウから来たんだ…… I'm from the earth)

(本当に? Mom と同じ the earth から?)

(本当だよ。ただ、国は遠く離れているから Englishman ではないし、普段使っている言葉も違うけれどね)

(そっか……でも、一人ぼっちは一緒だね。ね、リテル)

(うん)

(お互い一人ぼっち同士、家族になれたら嬉しいな)


 レムの伝えてきた家族という言葉の裏側は必死に伸ばしている彼女の手そのもので、結婚したいとかそういう感情ではなく、暗闇の中に見つけた一筋の光、唯一の希望、そんなイメージ。


(俺はこの体を借りている。いつかは本当の持ち主に返そうと思っている。だから家族という関係は難しいと思う)

(伝わってきているよ。好きな人がいるのね)


 ルブルムの顔が頭に浮かんだのを、ぐっと伝わらないように抑える――いや、でも伝わってしまっているから言われたのかな。


(リテルは正直だよね。優しいっていうか、甘いっていうか、Mom と同じ育ちの良さを感じる)

(……そうかもな。自分でも甘さはよく感じる)

(じゃあ、私が支えてあげる。お兄ちゃん)

(お兄ちゃん?)

(うん。お兄ちゃんっていいよね。お兄ちゃんなら、他の誰と結婚しても私ともずっと家族だもんね)


 妹はいたことないけど――でも逆にいなかったからこそ、妹という存在には姉や弟のような嫌なイメージはつきまとわない。

 というかなし崩し的にどんどん懐の内側に飛び込んでこられているというか。


(ね、向こうの世界で育ってからある日突然、こっちで目覚めたのは一緒?)


 他の転生者も赤ん坊状態から転生したんじゃなく、俺と同様にある日突然主観がリテルから(としてる)に切り替わった感じなのかな。


(同じだよ)

(じゃあリテルっていうのはこっちの名前? Mom の本当の名前は Muriel だよ。リテルの本当の名前は?)


 ルブルムの顔がまた浮かぶ。それからディナ先輩の顔も。

 でも、それでも、俺はこの子――レムには、本当のことを伝えたい、と思った。


(トシテル)

(トシテル……本当だ。Mom とは全然違う響きだね。違う国……でも、同じ世界……ね、もしもトシテルが向こうの世界に帰れることになったら、そのときは私も一緒に連れて行って欲しいな。家族なんだし)


 これは安請け合いしちゃいけない、とは思った。

 だけど、レムの気持ちも痛いくらいに伝わってくる。


(……ううん。お兄ちゃんのこと、困らせちゃったね。でも覚えておいて。私、お兄ちゃんのためなら、何でもするから……だから、こうやって時々、お話して。あと、お兄ちゃんの世界の歌も教えて。私も Mom からいろんな歌を教えてもらったんだ。一番好きなのは The Beatles の Eleanor Rigby って歌。孤独な人の歌)

(あー、うんうん。メロディは好きだけど歌詞まで覚えていない。The Beatles だと、歌えるのは Yesterday とか Let It Be とかそのへんかな)

(歌ってほしい)

(発音はレムのお母さんに全然及ばないと思うけど、じゃあ、一曲)


 Yesterday は中学のとき、音楽じゃなく英語の授業中に皆で歌わせられたからけっこうしっかり覚えている。

 それを頭の中で思い浮かべる――うわ、脳内再生のせいか演奏まで付いている!

 しかも、歌を歌うというよりは、曲のイメージをそのまま伝えるというか、音楽データをアップロードしているような感じ。


(すごい! お兄ちゃん! Mom の歌と同じ! しかも楽器の演奏までついている!)


 喜んでいるレムには悪いが、なんか話が明後日の方向に向かってしまっているような気がした。


(ね、ね、Queen は? 知ってる? 歌える?)

(よく聞くけど歌ったことはないよ……じゃなくて、レム、大事な話をするよ)

(……はい)

(今から、レムのことをある場所に連れて行かなきゃいけない。俺はできる限りレムのことを守るけれど、それでもこっちの世界に来てお世話になっている人もいて、何もかも全てを守るというのができないかもしれない恐れもある)


 これはきっと最初に伝えておかなきゃいけないこと。

 甘いと言われた直後だからこそ余計に、俺の覚悟を知っておいてもらう必要がある。


(わかってる。自分がそれだけのことをしたってことも。でも平気だよ。もし殺されるのなら、トシテルお兄ちゃんに殺してほしい。私が死ぬまでぎゅって抱きしめていてほしいな)

(……わかった)


 そう答えるしかない、と思った。

 そして、ベイグルさんたちからあまり遅れるのもまずい気もして、意識を肉体へと戻す。

 え?

 思ったよりもベイグルさんたちの背中が近くに見えることに驚く。

 もしかして、現実での会話に比べて『テレパシー』のデータ転送速度が超早い感じ?

 これならもう少し話しても――そう考えた一瞬を自分の中から切り捨てる。

 変に時間をかけてレムの生存に悪い影響が出たら嫌だ。


(レム。必ずまた話しかける。だから俺を信じて待っていて)

(わかった。お兄ちゃん、大好き)


 不意打ちの大好きに、肉体の頬がやけに熱くなる。

 本当にまるごとの「大好き」だったから。

 レムはすごいな。自分の命に見切りをつけることも、自分の感情を伝えることも、一切のためらいがない。

 甘さを持つゆとりのない人生というものがこの決断力につながっているのであれば、俺も甘さから脱却できればもっと決断を素早くできるようになるだろうか。

 俺は抱きしめているレムの頭を撫でてから、いったんレムを草むらへと置き、周囲に散らばっている装備なんかを回収する。

 そして改めてレムをお姫様抱っこすると、ベイグルさんたちを追った。




「リテルっ! 無事でよかっ」


 ベイグルさんに続いて小屋へと入ったとき、ケティがすごい勢いで抱きついて――こようとして、俺が抱えているレムに気づいた。


「……その子は?」


 ケティの眼光が鋭く光る。

 俺とレムのことを舐め回すように眺めたあと、すっと手を伸ばして俺の頬を二本指でつまんだ。その指からは、つねる気満々というのが伝わってきている。


「説明してもらえる? どうしてこの子がこんな状態なのか」


 ケティの視線の先はレムの股間――あっ、ウォルラースの魔法品の『身籠りの祝福』を使ったから――子宮の生理周期を強引に「回復」するということは、つまり生理を強制的にうながすということ。

 その血はレムの生理によるものなのだが、童貞の俺もさすがに今回は察することができた。

 俺がレムに何かしたことでレムが出血したというのをケティは疑っているのだ。

 さもなければいきなりつねるだなん――痛い痛い痛い、答える前につねってるってば!


「はえふふ……」


 「この子は」と言いたいのにケティの指がそれを許さない。

 ちょっと待ってケティ。(リテル)の体はそういうことをできない呪詛にかかっているんだってば。


「ケティ殿、リテル殿は断じてやましいことはなさっておりませんよ」


 ベイグルさんの言葉でようやくケティが俺の頬から指を離す。


「それどころか、こちらのタービタを救えたのもリテル殿のおかげなのです」


「じゃあなんでこの子の……」


 ケティはその先こそ濁したが、疑いの目はまだ俺に向けたまま。


「というかリテルは私とちょっと離れるたびに新しい女の子連れてくるの、なんで?」


 いやマドハトは男の子ですって言葉がすぐに浮かんだが、それをここで言う勇気はない。


「この子は、砦の兵士だ。そしてダイクとウォルラースの悪事について知っている証人なんだ」


「ウォルラースっ!」


 俺の言葉に反応したのか、ルブルムが飛び起きた。

 周囲を見回し、俺の顔を見て表情に安堵が混じる――が、俺の抱えているレムを見つめ、それから少しだけ視線が痛くなった。


「ト……リテル、その爬虫種(セベクッ)の子は?」


 元の世界に関する情報は伏せつつ、状況を説明する。

 タービタさんも、彼女自身の経験談でフォローを入れてくれて、なんとか伝わった――よね?


「今の状況を、カエルレウム様に伝える」


「え、寄らずの森へいったん帰るってこと?」


 俺がルブルムに聞き返すと、ベイグルさんが笑う。

 ルブルムたち魔術師が持つ魔術師免状は、それ自体が魔法品で、『遠話』という魔術が格納されているため。

 『遠話』をつなげられる先は、自分の師匠、弟子、それから登録した魔術師組合のみ――ルブルムの場合はフォーリーの魔術師組合になる。

 魔術師免状は、完全オーダーメイドで見た目は魔石(クリスタロ)付きの装身具。

 ルブルムの場合、右の二の腕あたりに腕輪の形で装備しているはず。袖の中だから見えないけど。

 『遠話』をもう始めたのだろうか、ルブルムが頭を下げ始める。

 声ではなく脳内で会話するっぽい魔法のようだが、相手が目の前にいなくとも頭を下げるのは、元の世界の電話と一緒なんだな――お。話し終えたっぽいな。


「カエルレウム様が魔術師組合に連絡を入れた後、魔術師組合から私へ連絡が来る」


 その待ち時間を利用して俺はルブルムに、ルブルムが寝ている間のことを説明した。

 ケティが居たから『テレパシー』ではなく、口頭で。

 やがて、体感で一ホーラ(時間)くらい経った頃、ルブルムの魔術師免状が輝き始めた。

 服の上からでもわかるくらいに。


「フォーリーの魔術師組合から」


 しばらく『遠話』していたルブルムが、突如として緊張した面持ちに。


「リテル、私の袖から手を入れて、魔術師免状の魔石(クリスタロ)に触れて」


「え? はい?」


 勢い、返事はしたものの、なんというか女子の袖の中へ手を入れる行為に非紳士的なイメージがあるというか、ケティの視線はいまだに痛いままというか。


「急いでって言っている」


「す、すみません」


 思い切ってルブルムの半袖の中へと手を滑り込ませる。

 けっこう肩の近くに付けている魔術師免状の腕輪まで指が届く前に、ルブルムの二の腕にふゆっと触れてしまうと、ルブルムの上半身がピクッと反応する。ケティの顔はもう怖くて見れない。

 いやこれは仕方がないことだからと気持ちを切り替えて腕輪まで触れた――けど、問題はこの後。

 そこから指先をルブルムの腕輪と二の腕との間へ割り込ませようとする。


「そこ、違う……もっと内側」


 ルブルムが何かを我慢しているかのような声でそんなことを言うから悪いことしている感が半端ない。

 いやいや、紳士たれ、俺。

 ルブルムの二の腕を撫でるように、指先を動かしてゆく。

 手の甲にルブルムの胸が触れる。もっと内側なの?


「もっと」


 精神的に凄まじく疲弊しながら指先を動かし続け、やがてそれに触れた。


(遅すぎるっ!)


 脳内に突然、ディナ先輩の声が響いた。


● 主な登場者


有主(ありす)利照(としてる)/リテル

 猿種(マンッ)、十五歳。リテルの体と記憶、利照(としてる)の自意識と記憶とを持つ。魔術師見習い。

 ラビツ一行を追いかけている。ゴブリン用呪詛と『虫の牙』の呪詛と二つの呪詛に感染。自分以外の地球人の痕跡を発見。


・ケティ

 リテルの幼馴染の女子。猿種(マンッ)、十六歳。黒い瞳に黒髪、肌は日焼けで薄い褐色の美人。胸も大きい。

 リテルとは両想い。フォーリーから合流したが、死にかけたり盗賊団による麻痺毒を注入されたり。


・ラビツ

 久々に南の山を越えてストウ村を訪れた傭兵四人組の一人。ケティの唇を奪った。

 フォーリーではやはり娼館街を訪れていたっぽい。


・マドハト

 ゴブリン魔法『取り替え子』の被害者。ゴド村の住人で、今は犬種(アヌビスッ)の体を取り戻している。

 元の世界で飼っていたコーギーのハッタに似ている。変な歌とゴブリン語とゴブリン魔法を知っている。


・ルブルム

 魔女様の弟子である赤髪の少女。整った顔立ちのクールビューティー。華奢な猿種(マンッ)

 槍を使った戦闘も得意で、知的好奇心も旺盛。ウォルラースの魔法品により深い眠りに落ちていたが目覚めた。


・アルブム

 魔女様の弟子である白髪に銀の瞳の少女。鼠種(ラタトスクッ)の兎亜種。

 外見はリテルよりも二、三歳若い。知的好奇心が旺盛。


・カエルレウム

 寄らずの森の魔女様。深い青のストレートロングの髪が膝くらいまである猿種(マンッ)

 ルブルムとアルブムをホムンクルスとして生み出し、リテルの魔法の師匠となった。『解呪の呪詛』を作成中。


・ディナ

 カエルレウムの弟子。ルブルムの先輩にあたる。重度で極度の男嫌い。壮絶な過去がある。

 アールヴを母に持ち、猿種(マンッ)を父に持つ。精霊と契約している。トシテルをようやく信用してくれた。


・ウェス

 ディナに仕えており、御者の他、幅広く仕事をこなす。肌は浅黒く、ショートカットのお姉さん。蝙蝠種(カマソッソッ)

 魔法を使えないときのためにと麻痺毒の入った金属製の筒をくれた。


・『虫の牙』所持者

 キカイー白爵(レウコン・クラティア)の館に居た警備兵と思われる人物。

 『虫の牙』と呼ばれる呪詛の傷を与える異世界の魔法の武器を所持し、ディナに呪詛の傷を付けた。


・メリアン

 ディナ先輩が手配した護衛。リテルたちを鍛える依頼も同時に受けている。

 ものすごい筋肉と角と副乳とを持つ牛種(モレクッ)の半返りの女傭兵。


・エルーシ

 ディナが管理する娼婦街の元締め、ロズの弟である羊種(クヌムッ)。娼館で働くのが嫌で飛び出した。

 仲間の猿種(マンッ)鼠種(ラタトスクッ)と共に盗賊団に入団しようとした。現在逃走中と思われる。


・バータフラ

 クラースト村出身の、とある四年分の世代全体に対して付けられた名前。全員が爬虫種(セベクッ)

 上から、リーダーのミン、ダイクに心酔した実の兄弟アッタとネルデー、広場でメリアンに殺されたカンタ、そしてレム。


・レム

 爬虫種(セベクッ)。胸が大きい。バータフラ世代の五人目の生き残り。不本意ながら盗賊団に加担していた。

 同じく仕方なく加担していたミンを殺したウォルラースを憎んでいる。ひょんなことからトシテルの妹になった。


・ロービン

 マッチョ爽やかイケメンなホブゴブリン。メリアンと同じくらい強い。正義の心にあふれている。

 マドハトと意気投合し、仲良くなれた様子。


・スノドロッフ村の子どもたち

 魔石(クリスタロ)の産地であるスノドロッフ村からさらわれてきた子どもたち。カウダの毒による麻痺からは回復。

 猫種(バステトッ)の先祖返りでアルバス。ミトとモペトの女子が二人、男子がトーム。


・ベイグル

 スノドロッフ村の若き村長。槍を武器に持つ。魔法も色々と得意。


・トリエグル

 スノドロッフ村の弓の名手。


・タービタ

 スノドロッフ村の女性。数日前に行方不明になった後、全裸で槍だけを装備して突然姿を現した。レムに操られていたが、現在は元に戻った。


・ウォルラース

 キカイーの死によって封鎖されたスリナの街から、ディナと商人とを脱出させたなんでも屋。金のためならば平気で人を殺す。

 キカイーがディナたちに興味を示すよう唆した張本人。ダイクの作った盗賊団に一枚噛んだが、逃走。


・ロッキン

 名無し森砦の守備隊第二隊副隊長であり勲爵(エクウェス)。フライ濁爵(メイグマ・クラティア)の三男。

 ダイクが率いていた守備隊の中で、唯一、盗賊団ではなかった。脚の怪我はリテルが回復してあげた。


・ダイク

 名無し森砦の守備隊第二隊隊長であり勲爵(エクウェス)であると自称。筋肉質で猿種(マンッ)にしては体が大きい。

 実績作りのためにカウダ盗賊団を自作自演した。ロービンに左腕を切り落とされ、何かを呑み込んで人を辞めたっぽい。死亡。


・プラプディン

 名無し森砦の守備隊にして盗賊団。小太りの両生種(ヘケトッ)。頭に赤い花が咲いて死亡。


・スナドラ

 名無し森砦の守備隊にして盗賊団。鼠種(ラタトスクッ)。頭に赤い花が咲いて死亡。


・ホリーリヴ

 名無し森砦の守備隊にして盗賊団。鳥種(ホルスッ)。魔法を使うが、そこまで得意ではなさげ。暴走したダイクに殺された。


・ブラデレズン

 名無し森砦の守備隊にして盗賊団。馬種(エポナッ)。ルブルムやケティを見て鼻の下を伸ばしていた。

 ウォルラースの魔法品でうずくまっていた女性陣を襲おうとしてメリアンに返り討ちにされた。




■ はみ出しコラム【魔物デザイン その一の三】

 今回のはみ出しコラムでも、#47 の【魔物まとめ その一】について、別の角度から書く。


・ホルトゥスにおけるゾンビー

 肉体を失った魂のうち、寿命のまだ残存する者が、本来の肉体ではないものを仮の肉体として使用しているものを「ゾンビー」と呼ぶことを、かつてとある魔術師が提唱し、一般化した。

 仮の肉体は、有機物である必要はなく、魂が生命体のものでありさえすれば、「ゾンビー」という表現が使用される。

 ちなみに、肉体と結びついていない魂(とそれに付随した寿命の渦(コスモス)のワンセット)は「アニマ」と呼ばれる。


・ホルトゥスにおけるゴーレム

 魂の代わりに魔法を宿らせた肉体のものを「ゴーレム」と呼ぶことを、かつてとある魔術師が提唱し、一般化した。

 魔法を宿らせた肉体が有機物であろう無機物であろうとも、「ゴーレム」という表現が使用される。


※ とある魔術師

 「ゾンビー」「ゴーレム」という呼称を提唱した魔術師。

 ワードナには転生者としての記録はないが、魔術特異症だったという記述は遺されている。


・イミタティオ

 本来とは異なる魂と肉体の不自然な結びつきの存在について「魔術特異症」という表現が使用されるが、「ゾンビー」や「ゴーレム」を「魔術特異症」というカテゴリに加えたくない魔術師たちが、これらを「イミタティオ」というカテゴリでくくっている。


・地球におけるゾンビ

 ゾンビ(英語: zombie)は、何らかの力で死体のまま蘇った人間の総称である。多くはホラーやファンタジー作品などに登場し、「腐った死体が歩き回る」という描写が多くなされる架空の存在である。

 「生ける死体」として知られており、ブードゥー教のルーツであるヴォドゥンを信仰するアフリカ人は霊魂の存在を信じている。こちらについては「目に見えないもの」として捉えている。 「ゾンビ」は、元はコンゴで信仰されている神「ンザンビ(Nzambi)」に由来する。「不思議な力を持つもの」はンザンビと呼ばれており、その対象は人や動物、物などにも及ぶ。これがコンゴ出身の奴隷たちによって西インド諸島のハイチに伝わる過程で「ゾンビ」へ変わった。

(Wikipedia より)


・地球におけるゴーレム

 ゴーレム(ヘブライ語: גולם, 英語: golem)は、ユダヤ教の伝承に登場する自分で動く泥人形。「ゴーレム」とはヘブライ語で「未完成のもの」を意味し、これには胎児や蛹なども含まれる。

 作った主人の命令だけを忠実に実行する召し使いかロボットのような存在。運用上の厳格な制約が数多くあり、それを守らないと狂暴化する。

 ラビ(律法学者)が断食や祈祷などの神聖な儀式を行った後、土をこねて人形を作る。呪文を唱え、「אמת」(emeth、真理、真実、英語ではtruthと翻訳される)という文字を書いた羊皮紙を人形の額に貼り付けることで完成する。ゴーレムを壊す時には、「אמת」(emeth)の「א」( e )の一文字を消し、「מת」(meth、死んだ、死、英語ではdeathと翻訳される)にすれば良いとされる。(Wikipedia より)


・ゾンビーとゴーレムのデザイン

 「ゾンビ」という存在はその設定が「宇宙人」という言葉に表されるものくらい多種多様に富んでいる印象がある。

 ゾンビといえば「噛まれれば感染する」という特徴が有名だが、この特徴はジョージ・A・ロメロの映画『Night of the Living Dead』以降のものであり、そもそものゾンビにおいては感染という概念はない。

 なので、ホルトゥスにおけるゾンビにおいては、感染力をもたない存在にデザインしようと考えた。


 ホルトゥス世界の設計において、魂と肉体とを別の存在とした時点で「肉体を失った魂」「魂を失った肉体」という概念が生まれ、それぞれが魔法的な力で失ったモノを補完した状態をそれぞれ「ゾンビー」「ゴーレム」と位置付けた。

 地球におけるゾンビのイメージとしては、ホルトゥスにおける「ゴーレム」に近いかもしれないし、ホルトゥスにおける「ゾンビー」はポルターガイストなどの現象も含むことになる。

 このイメージの変化は、ゾンビやゴーレムと呼ばれている存在が昔からずっと居るわけではなく、「とある魔術師」の項での説明の通り、転移者と思われる魔術師の提唱が広まったものであるため――としてはいるが、魂と肉体について一方を失い補完した存在について、自我を持たぬモノを「ゴーレム」としたのは良いが、「ゾンビー」とした方はもっと他の表現でも良かったのかなとは今更ながら思っている。


・霊的な存在

 「アニマ」という言葉があるように、肉体を持たない魂だけの存在というものも当然のように世界観の中には存在する。

 ただしそれは地界(クリープタ)天界(カエルム)のような異界においてであり、「ホルトゥス」においては、物質的な(「肉体」に相当する)何かと結びつかないと存在を維持できない。

 その「物質的な何か」には「水」や「炎」や「砂」など分子構造を持つものが含まれ、特に個体である必要はないが、個体でない物質的な何かの場合、それを魂と結びつける寿命の渦(コスモス)の消費が、個体の肉体の場合に比べて著しく激しい。


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