#45 奪われたもの
声のした草むらから、何かが飛び上がった。
獣種――肩をおさえている――少年――年齢的にはこの女の子と同じくらいか。
耳からすると鼠種のネズミ亜種。
前歯が妙に大きく、長い尻尾も見えるから半返りか。
両手を上げて降参のポーズ。
「ぼ、僕も降参します!」
別の草むらからももう一人、両手をあげて降参のポーズで立ち上がる。
爬虫種のトカゲ亜種の男の子。
尻尾が見えるからこっちも半返りだ。
どういくことか男子二人からは寿命の渦が全く感じられない。カエルレウム師匠なみに。
これが世の中の偽装の渦レベルなのか?
「そうか。じゃあ、ちょっくら縛らせてもらうからな」
メリアンは縄を取り出し、ネズミ亜種とトカゲ亜種の男子二人を背中合わせに縛りあげる。
俺たちの馬車を降りるときは持っていなかったってことは、定期便に積まれていたのが残っていたのかな。
「ゾンビー……?」
「ビルルとマウスーはゾンビーじゃなく仲間。そして私はチェッシャー。もう抵抗しないから、武器を向けるのをやめてくれたら嬉しいけど……」
矢を戻し、弓は肩へかけたが、念のため短剣は抜いておく。
「どうする気だい? この子ら……まさかこのまま逃がすなんて言わないよな?」
メリアンが選択肢を一つ潰して提示したということは、普通はそんなことしないっていうことなんだろう。
ディナ先輩だったらもう殺しているのだろうか。
「盗賊団の一味なら体のどこかに入れ墨を入れている。その入れ墨だけ持ち帰るんでも討伐の証になるぞ」
それはディナ先輩も言っていた。
盗賊団は基本的に仲間であっても人を信用しない。
口約束だけでは簡単に裏切られてしまうから、死体になっても残る入れ墨を入れさせると。
ただ、魔法で隠せないこともないから、入れ墨がないくらいで信用するなとも。
「……脱げばいいの?」
チェッシャーが胸元の開いたワンピースをの裾を脚の付け根付近までたくし上げると、可愛い猫尻尾がひょこんとはみ出る。
「動くな」
俺がそう言うとチェッシャーの手がぴたりと止まる。
スカート丈がギリギリのミニスカレベルな短さで。
このあざとい感じ、油断を誘っているのだとしか。
だがディナ先輩に鍛えられた俺はこの程度では動揺するものか。
「君は……チェッシャーは、魔法を使った。だから入れ墨を隠せる可能性もある」
「魔術師か。街まで連行するにしても、無力化は難しいな。お前ら二人もそうなのか?」
メリアンが小剣を一本抜き、背中合わせに縛られている二人の首元へあてる。
なるほど。あれならいっぺんに二人の首を傷つけられる。
メリアンの手際がいちいち勉強になる。
「待って! 私は魔術師じゃない! そっちの二人も違うし、だいいち私、魔法も二つしか知らない」
「どうだか。どこか削げば本当のことを喋るか?」
メリアンはもう一本の小剣を抜くと、ネズミ亜種の方の鼻へスッと当てた。
「ほ、本当のこと言ってるよ! 私はアイシスの生まれで、姉さんに惚れ込んでいるお客さんの一人が魔術師で、その人が姉さんと私とに自衛のための魔法を教えてくれたんだ。あなたに使ったのは『愛しの夢見』って魔法。痛いことはないよ、ただ眠らせるだけ。しかも良い夢見れるの。夢中になってもらえればもらうほど、よくかかるんだ……かからなかったのは、あなたが初めて」
夢中になってもらう……そういう方法もあるのか。
魔法への抵抗力は、魂が持つ防御本能みたいなものだから、対象の意識の有無に関わらず自動的に発揮される。
拒否の意思を強く持ったり、意識がなかったりで抵抗の強弱は変化するから、味方が使う治癒やサポートの魔法については、事前に魔法の受け入れ同意を取っておく必要がある。
恐らく『愛しの夢見』は、対象の下心を魔法受け入れへの導入……呪詛でいう「ひとつまみの祝福」みたいに使ってるんだろうな。
状況は限定されるけど、相手の抵抗を突破する方法としては油断ならない威力がある。
「で。もう一つは?」
メリアンが尋ねる。
「もうひとつは『死んだふり』って魔法。魔術師や熟練の戦士には、物陰に隠れても見つけられちゃうことがあるから、この魔法を使いなさいって」
なるほど。
寿命の渦を見えなくする魔法か……そうだよね、そんな魔法があってもおかしくないはずなのに……見えていない時点で俺はその思考をやめていたのか。
まだまだ未熟者だな、俺は。
いや――そこで思考を止めるな。
チェッシャーの寿命の渦が彼女の感情の動き通りに揺れているのも、偽装の渦を使えないフリだとしたら。
油断させておいて、まだ他にも隠れているとしたら。
風が草むらを撫でる音が、やけに大きく聞こえる。
こいつらが囮で、別働隊が馬車を襲ったら――ルブルムは『魔力感知』が使えるがゆえに『死んだふり』がかかっている連中が大挙して押し寄せたら気づけないかもしれない。
馬車の状況を知りたいという思いが、感覚を極限まで『魔力感知』へと寄せる。
もっと広く――いや、円じゃなくていい。
楕円でもいいから、とにかく馬車まで範囲を――範囲だけじゃなく精度もだ。
『死んだふり』という魔法がかけられていると分かった状態で見れば、寿命の渦自体の存在は感じられないが、そこに居るという前提で神経をとがらせた『魔力感知』でとらえると、「魔法に触れた」感覚は感じられるのだ。
その感覚でルブルムたちの所まで――うわ。
脳が疲れるというか、要求に追いつかない――もっと範囲を絞れ――線へ。
ふと閃いた。
地球で見た魚群探知機――回転する線。
俺は『魔力感知』を細く長く凝縮する――いける。
ルブルムたちの居る場所のさらに先まで――『死んだふり』を拾うべく、それを回転させる。
それぞれの地点を断片的な線で見ているのに、全体像が頭の中に浮かぶ。
世界を俯瞰しているような。
しんどい、けど、見える。
睡眠不足から来る疲労もあるだろう。
自分の中にわずかに残る精神力が、ぐいぐい減ってゆくのを感じる――だがルブルムたちの周囲には『死んだふり』の奴も含めていないように感じる。
今の所は。
俺がチェッシャーをここまで警戒するのはもう一つ理由があった。
チェッシャーが『愛しの夢見』を使ったとき、消費命の集中を感じなかったから。
ディナ先輩に教えていただいた偽装消費命を、使えるほどの凄腕だとしたら――ディナ先輩がおっしゃっていたのは、偽装消費命は一般には知られていない技術だということと、だからこそそれを知られた相手は確実に殺せということ。
このような技術が世の中に存在することを知られないようにせよ、と。
「待っとくれよ。質問どれだけするんだい……全部終わったら殺すつもりかい? 命がかかっているからこそ、人には話さない秘密だって話しているんだよ……約束してよ。喋り損にはさせないって……全部話したら、助けてくれるって」
メリアンは俺をじっと見ている。
判断をまかされているというよりは、俺の言動を見定めているようにも感じる。
「さっき俺が寝たら、どうするつもりだったんだ? そういうやりとりを仕掛けてきたってことは」
「傷つけるつもりなんてないよ! 私らは、フォーリーに行きたいだけなんだ。姉さんを助けるのにお金が必要なんだよ。アイシスでは半返りは差別されていて、寿命を売っても大した額になりゃしないんだ。フォーリーは半返りにも真っ当な金額を出してくれるって聞いてね……だけど定期便が襲われて、裕福そうな商人さんと御者と馬なんかは連れてかれちゃったんだ」
「君らはどうして助かったんだ? 護衛は殺されていたのに」
「えっ……森へ逃げろって逃してくれた護衛さん、殺され……てたの?」
悲壮な表情のチェッシャーの寿命の渦には悲しみや申し訳なさが現れている。
「本当なんだそれ……残念ながら、理由は知らないよ。必死に逃げてきたんだ……でも、かなり静かになって……だから野盗がもしも確認に戻ってきたらって思って……私らは半返りだから。あなたらだって知っているでしょ? 半返りの命は安いんだ。少なくともアイシスじゃ、普通の人よりずっとね。だから自衛しないといけないんだ。追っ手をうまく眠らせられたら、馬だけ頂戴してフォーリーまで行く計画だったんだってば」
目の前の必死なチェッシャーの言葉をどこまで信用できるのだろうか。
そして俺の言動次第ではメリアンが俺を見る目も変わるかもしれない。
「そろそろどうするか決めてくれ。あんまり時間をかけたくない」
メリアンが会話を遮った。
そうだった。
俺たちが戻るのが遅かったら、こいつらが敵とか囮とかじゃなくともトラブルがあったと思われて馬車はフォーリーへ帰ってしまうかもしれない。
「そ、そう。急いだ方がいいよ! 連れ去られた商人さんだって半返りだったから、今頃酷い目に合わされているかもだし」
「わかった。決断する」
「待って……もう一つだけ言わせて……私が『愛しの夢見』を使ったのは……怖かったから……だってあなた、すごい怖い顔してたもの。殺されるかもって思ったんだ」
……俺が? 怖い顔?
俺はそんなに……ゆとりのない顔していたのか。
メリアンを見ると、首を左右へ振る。
ホルトゥスでは同意の意味。
不意に思い出す、元の世界の姉さんを。
コンクールが近付くたびに表情が特に険しくなっていった。
ゆとりがなくて攻撃的で、作る必要のない敵を作って余計にストレスを溜めて。
姉さんが俺を罵る言葉の中に、姉さんのかつての友達たちが離れていくことへの愚痴が含まれていることがあった。
普段は正論でしか俺を刺さない姉さんが、初めて理不尽な、俺に関係ないことで俺を責めた内容だったから記憶に強く残っている。
攻撃で身を守り続けると、その先にあるのは負のスパイラルだけだ。
油断はしないことと、恐怖に呑まれて何にでも咬み付きまくるのは違うような気がする。
現に今だって、自らのゆとりのなさから敵を作り出そうとしていたんだし。
力が抜けたら、思考もクリアになった。
広域の『魔力感知』――『魔力探知機』とでも名付けておこうか。
『魔力探知機』には相変わらず、ここからルブルムたちの居る場所より先までの半径に、獣種以上の大きさの生き物も『死んだふり』を使っている形跡も見つけらないまま。
ならばどうする?
こいつらは敵じゃないのか?
敵じゃなかったとしても殺すのか?
チェッシャーを見つめる。
俺がもしこの子を殺したら、俺は自分を誇れるのか?
そんなことをするのは紳士か?
違うだろう?
俺は、守るために全力を出すんだ。
この子たちを殺そうとして、失敗したら?
かえって敵を増やすだけだろう?
額を手のひらで覆う。
集中力がもう限界だ。
再び視界を開き、チェッシャーたちを見つめた。
「わかった。じゃあ、今回はお互いに悪かったということで、平和的に別れよう……彼らの縄も解こう」
「へ?」
「え?」
メリアンとチェッシャーが同時に変な声を出す。
ディナ先輩には激怒されそうだけど、俺が人を殺すときってのは少なくとも今じゃない。
チェッシャーの言うこと全てが本当でないとしても、姉さんのために金が必要だと言った時の真剣な表情と寿命の渦とに嘘はないと信じたい。
「守りたい人が居るのも、そのためならどんなことでもするという覚悟も、わかるよ……だから、君らから攻撃してこない限りはこちらも応戦しない。フォーリーからここまで馬車で半日もかからない。乗せてくれる誰かを待つよりは、徒歩ででもさっさと向かった方がいいだろう。今からなら日が暮れる前に着けるだろう」
チェッシャーは瞳を潤ませながら立ち上がり、両手を広げた。
「大好き!」
その言葉のせいか、集中力が途切れてかけていたせいか、チェッシャーが俺に飛びつくのを、避けるのも防ぐのも失敗した。
短剣と手斧の鞘だけは奪われないようにとっさに押さえたが、チェッシャーの攻撃は俺の無防備の唇にヒットした。
柔らかいものが俺の唇を覆ったあと、下唇を名残惜しそうに何度も甘噛みされる。
というか、自分がキスされているという状況を把握するまでにちょっとかかった。
これが毒ならば俺は――慌ててチェッシャーを引き剥がして距離を取る。
あまりにも油断し過ぎだ。
「えー……もしかして、女がダメで男が好きな人?」
「そ、そういうわけじゃない」
「そっか。それなら良かった。今のは本気のキスだから、嫌だったのと違うんならよかった」
本気の?
「今のあなたの顔は怖くない……っていうか優しいよ。今の大好きは、社交辞令抜きだから。ありがとうね、本当に……恩にきる。でさ、あなたの名前、教えて!」
メリアンが首を振るより前に、俺は首を縦に振り否定を示す。
偵察を開始してからメリアンが俺の名前を突然呼ばなくなったのは、元の世界で言う個人情報的な考え方だと思ったから。
そういう意味でも、この子たちにはプロフェッショナルさを感じない。
「あは。お忍びのお貴族様とか? でもまあいいよ。そこまでわがままでも野暮でもないから……でも、もう一つのお礼はもらっておくれよ」
手渡されたのは、年季が入った小さな髪飾り……おそらく銀製の。
「アイシスに来ることあったら宵闇通りを尋ねて。私が居なくても、これ見せてチェッシャーの紹介って言ってくれたら大サービスするから! 姉さんは半返りじゃないから、半返りダメな人でも伝手はあるし!」
元気よくぴょんぴょん飛び跳ねるチェッシャー。
マドハトみたいに真っ直ぐな子なのかもな。
メリアンも小剣を鞘へと戻し、二人の縄を外して回収する。
三人は横一列に並ぶと、恭しく両手を組んで両膝をつく。ラトウィヂ王国では深い感謝のお礼だ。
「馬車に戻ったら、大変なものを奪われましたって、密告していいか」
「や、やめてくださいメリアン……事故ですよ」
くっくっくっと笑うメリアンと一緒に街道まで戻る。
チェッシャーたちもあとからついてきて、護衛の死体へも深い感謝のお礼をしている。
根は悪い子じゃないのかもな。
そのあと三人が馬車を漁り出したので、身を守るための武器でも探しているのかと思ったら、メリアンが「移動証書」を探しているのだろうと言った。
アイシスはクスフォード領の北に位置するボートー領の領都。フォーリーはクスフォード領の領都なので、「移動証書」が必要になるらしい。
「移動証書ならさっき拾っておいたぞ」
襲われた定期便を見つけた証拠というか報告用に回収しておいたらしい。
安心した表情の三人を見て、ホルトゥスにおける領土間の移動が簡単な話ではないことを改めて思い知る。
ついでに五人で横転している馬車を街道脇まで押して退かす。
その様子を見ていたのか、ルブルムたちの乗った馬車も向きを直して近づいてきた。
ニヤニヤ笑うメリアンが余計なことを言い出さないうちに三人をとっとと見送り、俺たちの馬車もようやく再出発した。
● 主な登場者
・有主利照/リテル
猿種、十五歳。リテルの体と記憶、利照の自意識と記憶とを持つ。魔術師見習い。
ラビツ一行をルブルム、マドハトと共に追いかけている。ゴブリン用呪詛と『虫の牙』の呪詛と二つの呪詛に感染している。
・ケティ
リテルの幼馴染の女子。猿種、十六歳。黒い瞳に黒髪、肌は日焼けで薄い褐色の美人。胸も大きい。
リテルとは両想い。熱を出したリテルを一晩中看病してくれていた。フォーリーから護衛として合流した。
・ラビツ
久々に南の山を越えてストウ村を訪れた傭兵四人組の一人。ケティの唇を奪った。
フォーリーではやはり娼館街を訪れていたっぽい。
・マドハト
ゴブリン魔法『取り替え子』の被害者。ゴド村の住人で、今は犬種の体を取り戻している。
リテルに恩を感じついてきている。元の世界で飼っていたコーギーのハッタに似ている。街中で魔法を使い捕まっていた。
・ルブルム
魔女様の弟子である赤髪の少女。整った顔立ちのクールビューティー。華奢な猿種。
槍を使った戦闘も得意で、知的好奇心も旺盛。様々なことを学び、成長中。
・アルブム
魔女様の弟子である白髪に銀の瞳の少女。鼠種の兎亜種。
外見はリテルよりも二、三歳若い。知的好奇心が旺盛。
・カエルレウム
寄らずの森の魔女様。深い青のストレートロングの髪が膝くらいまである猿種。
ルブルムとアルブムをホムンクルスとして生み出し、リテルの魔法の師匠となった。『解呪の呪詛』を作成中。
・ディナ
カエルレウムの弟子。ルブルムの先輩にあたる。重度で極度の男嫌い。壮絶な過去がある。
アールヴを母に持ち、猿種を父に持つ。精霊と契約している。トシテルをようやく信用してくれた。
・ウェス
ディナに仕えており、御者の他、幅広く仕事をこなす。肌は浅黒く、ショートカットのお姉さん。蝙蝠種。
魔法を使えないときのためにと麻痺毒の入った金属製の筒をくれた。
・『虫の牙』所持者
キカイー白爵の館に居た警備兵と思われる人物。
『虫の牙』と呼ばれる呪詛の傷を与える異世界の魔法の武器を所持し、ディナに呪詛の傷を付けた。
・メリアン
ディナ先輩が手配した護衛。リテルたちを鍛える依頼も同時に受けている。
ものすごい筋肉と角と副乳とを持つ牛種の半返りの女傭兵。
・御者
ディナが管理する娼婦街の元締め、ロズの用意してくれた馬車の御者。ちょっと訛っている。
・チェッシャー
乗っていた定期便が野盗に襲われ、街道脇へ逃げのびた女の子。猫種の半返り。動作がいちいちあざと可愛い。
命を助けてくれたリテルへ本気のキスのお礼をお見舞いした。姉がアイシスで娼婦をしている。
・ビルルとマウスー
チェッシャーの仲間である爬虫種トカゲ亜種と鼠種ネズミ亜種の男子。
チェッシャーと共にフォーリーへ行く予定だった。年齢的にはチェッシャー含め三人ともリテルと同じくらい。
・(有主利照の)姉さん
才能がない人は努力していない人として厳しくあたる。自分に対しても厳しいが、利照に対する正論DVは苛烈を極める。
敵を作りやすい性格で、そうやって友達を敵化してしまったストレスで利照に当たったことが一度だけある。
■ はみ出しコラム【庶民の移動】
ホルトゥスにおいて、人民は国王または領主に所属する。
十歳になったら発生する税金も、自分が所属する国王または領主へと納める。
王民であれば国王直轄地内、領民であれば領地内であれば、それぞれ監理官に連絡は必要なものの比較的自由に移動できる。
それ以外の「よその土地」への移動については、原則的に監理官または国王や領主が発行する通行証が必要となる。
・個人通行証
商人などの場合、都度都度の通行証発行は手間で時間を取られるため、半年なり一年単位なりでパスポート的な個人通行証を発行してもらえる制度もある。
ただし個人通行証を発行してもらう条件としては、所属する組合の推薦が必要となる。
商人以外も医師や職人などは個人通行証を持っている場合が多い。
監理官が認めれば、出稼ぎ用の個人通行証が発行されることもある。
・実績紋の登録
傭兵や兵士の場合、実績紋の登録が義務付けられる。
そこに戦歴や仕事の実績、犯罪歴などが記録され、逆に実績紋のない者は傭兵や兵士として雇用されることはない。
・傭兵証明
出身国毎に、傭兵として参加可能な国の範囲が定められている。
これは実績紋にも記載される。
戦場で同郷の者同士が戦うことやスパイの防止などを目的としている。
・移動証書
定期便にのみ許可された簡易の移動証書。獣種や所属、性別、名前、年齢、予定滞在期間等が記載される。
定期便用馬車にはこれを収める箱があり、基本的には出発時に封印され、到着時に開封される。
この証書は各門の詰め所にて保管され、予定滞在期間を過ぎても戻らない場合、捜索される。
・国外からの旅人
ラトウィヂ王国への来訪者、もしくはラトウィヂ王国からの出国者については、傭兵や兵士に限らず実績紋の登録が義務付けられる。
ただし、王や貴族により招かれた招待者についてはこの限りではない。
・所属の移転
所属する国や領主が変わるには、所属元の国王や領主と、移転先の国王や領主との、両方の許可が必要となる。
戦乱や天災などにより居住地域を出ざるを得ない場合は難民扱いとなり、実績紋の義務付けや、組合職への就職禁止、通行証の発行不可など各種制限が設けられる。
ただし、所属元の地域が住めない地域となったり、所属元地域へ戻ることが難民たちの死や不幸な境遇に繋がると難民受け入れ先の国王や領主が認めた場合、新たな王民、領民として認められる場合もある。




