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#42 乱入

「じゃあ、ト……リテル、行ってくる」


 ルブルムが振り返って俺に手を振る。

 俺も笑顔で手を振り返す。

 ディナ先輩とルブルムとを見送った後、俺一人が中に残された馬車(ゥラエダ)はクスフォード虹爵(イーリス・クラティア)様のお屋敷の方に案内され、専用の駐車スペースのような場所へと移動した。

 着替えの時点でうっすら予想していた通り、謁見はディナ先輩とルブルムだけだった。

 俺はカエルレウム師匠の弟子ではあるものの、まだ弟子免状の申請が終わってないので、対外的な扱いとしては弟子見習いとなる。

 身分としては単なる領民。

 領民が虹爵様に直接お会いするにはそこそこ面倒な手続きが発生するらしく、急な事態である今回はお留守番となったわけだ。


「ルブルム様は相変わらずだな」


 ウェスさんが馬車(ゥラエダ)の御者席から中へと移ってきた。

 相変わらずというのは、俺の名前をトシテルと言いかけてしまうことだ。

 (としてる)の素性を知られないようにするため、他の人が居る可能性がある場所では「ストウ村のリテルに対するように」接しなさいとディナ先輩から命ぜられたのだけど……リテルとして接した時間の方が長かったのに、俺が異世界人のトシテルというインパクトがよほど大きかったのか、なかなかリテル呼びに戻せないでいる。

 人に知られていない情報というものは情報自体の価値と知られていないということ自体と二重に価値がある、みたいなことをおっしゃられて、ルブルムも納得してはいたのだけど、なかなか。


「ですね」


 相槌を打ちながら奥へと詰める。

 というのも、ウェスさんが俺のすぐ隣に座ったから。

 さっき初めて乗ったこの馬車(ゥラエダ)の中はボックス席。

 四人がけ、いやルブルムやディナ先輩なら片側三人は座れそうな広さがあるシートは、藁よりももっと柔らかいクッション素材が使われているっぽい。

 そんなゆったりと座れるシート幅なのに、ウェスさんはなぜこんなぴったり近くにお座りに?

 二人なら隣じゃなく向かい合わせだっていい。

 それとも上座みたいなのがあってあっち側はディナ先輩とかって決まっていたり?


「リテル君、それほどかしこまらなくともいい」


 ウェスさんはかぶっているフードを外す。

 ミニウサギみたいな蝙蝠耳がぴょこんと動く。


「は、はい」


 とは答えたものの、俺の横顔をじっと見つめているその顔もけっこう近い。

 これ、どう対応するのが正解なのだろうか。

 しかも、当たってます――ええ、立派な膨らみが二つ、俺の二の腕に――にかけるに、ににんがし、にさんがろく、にしがはち。

 気を紛らそうと九九を数え初めて、ホルトゥスは十二進法だっけと思い出す。

 リテルの記憶では、この手の掛け算の覚え方みたいなのはなかったな。


「ふふ。君は良くも悪くも素直だな」


 良くも悪くも?

 それって褒められているのとはちょっと違うよね?

 ということはアレか。また何かを試されているのか、何かの訓練か。


「すみません……未熟者で」


「緊張し過ぎだよ、君は。私はまだ脱いでもいないのに」


 ぬっ?

 う、ウェスさんまでっ?

 さらに顔を近づけてくるウェスさんは、目もとはキツめだけど美人だし、それにいい匂いがする。香水みたいな。

 昨晩の経験からすると……これはからかっているとかじゃないだろう。

 心を落ち着けて、視界の端でウェスさんの動向に気を配る。

 あれ?


「あの……ウェスさんも魔法をよく使われるんですか?」


「どうしてそう思った?」


寿命の渦(コスモス)の形が……」


 偽装の渦(イルージオ)みたいに、不自然に小さくなっていたから。


「緊張しているのかと思ったが、ちゃんと周囲を見れているようじゃないか」


 そうだ。

 もう少ししたら俺とルブルムだけになる。

 慣れてないとか言ってられない。

 常に周囲を見ておかないと。


「き、緊張はしていますよ」


「私は蝙蝠種(カマソッソッ)だぞ? 加えて半返りだ。そんな女に対しても緊張するのかい?」


 こちらの世界では、蝙蝠にどんなイメージがあるのだろう。

 少なくともリテルの記憶の中に、変なイメージは見つけられない。

 ただ、もしそんなものがあったとしても俺は気にしないし、したくもない。


「俺は、半返りとか先祖返りとかそういう線引きは嫌いです。俺の可愛い弟も先祖返りですけれど、とっても大切にしています……それにウェスさんは……その……美人ですから、緊張はしますよ」


「君のことだ。お世辞ではないのだろう。その言葉はありがたく受け取っておく。だがね、女であることを武器として使う者は、大抵が整った顔立ちをしている。その上で駆け引きも使う。意図的に体を触らせたり、表面上は拒んだり小芝居を見せながら企てを実行しようとする者もいる。美人だからとか、胸が触れているからとか、そんな理由で緊張するくらいでは、肝心なときに困るのではないか?」


「おっしゃる通りです」


「戦場以外では素直さは武器にもなり得るが、戦いにおいては致命的な弱点となることの方が多い。君は人を信じすぎるんだよ。チキュウでは君みたいなやつばかりだったのか?」


「いえ、悪党もたくさんいました」


 俺は地球でも騙されたよな――沢地(さわじ)怜慈奈(れじな)の顔が脳裏に浮かんで消える。


「そうか。だがそれにしては君は献身的すぎるようにも感じるのだがな。ディナ様に対してあんな態度を通した男は初めて見たぞ」


「そんなんじゃないですよ。屋敷についてすぐの頃はディナ様の言動一つ一つに恐怖を感じていましたし」


「その割には食い下がっていたね」


「きっと裏に何かお考えがあるのだろうと。カエルレウム様からもルブルムをよろしく頼むと言いつかっておりましたし。ディナ様の言葉の裏側にあるお気持ちについてずっと思考していたら、恐怖も少し散りました」


「私は君が、単なる直情的な愚か者かと疑っていたよ」


「い、いえ。若輩なのも経験や考えが浅いのも事実ですし……貴重な助言、感謝します」


 ウェスさんは急に笑い出した。


「怒らないんだな。君は本当に……」


 そのとき、ウェスさんの手が動くのを感じた――とっさにその手を受け止める。

 冷たい手――だけじゃない。なんだこの手のひらに当たる感触。

 ひんやりとした感じは金属? それも筒状の。


「相手が特に意識を引くような動作をした場合、その裏には隠したい別の行動が潜んでいるものだ。目を、耳を、意識を奪われるものの、外側へ特に気を配ると良いだろう。今の君はそれに気づけはした……と思ったかい?」


 思った。

 まんまと思いました。


「ほら、すぐに表情に出る。君は警戒していたと思っていただけ。実際は、ただ待っていただけだ。私が置いたものを何も考えずに握りしめただろう? 刃だったらどうするんだ?」


 そうです。

 そこまでするはずは、なんて勝手に思っていました。

 受け取る以外にも選択肢はあったんだよな。

 ウェスさんの手首をつかむとか。


「ご指導、ありがとうございます」


「本当に可愛いな、君は。偽装の渦(イルージオ)を常に維持できるくらいなのだ。表情を隠すことも覚えろ」


「は、はいっ」


 動揺するなよ、俺。

 紳士たれ、俺。


「今、渡したモノの説明をする。命に関わるからしっかり聞いておけ」


「はい!」


 手のひらへ渡されたものを確認する。

 金属製の筒状の容器?

 容器の口には、コルクっぽい蓋がはまっている。


「時には魔法を使えないこともあるだろう。そんなときに役立つものだ。症状としては体が麻痺して硬直する。水にとても溶けやすいから、体や装備に付着したら水で速やかに十分に洗い流すこと。ただし湯は使うな。これを溶かした鍋の湯気を吸い込むだけでも呼吸が困難になるほどの効果がある」


「毒なのですね」


「ああ。君はいずれこれを必ず使わざるを得ない状況に遭遇する。だから無駄使いはするなよ」


「気をつけます……それと、ありがとうございます。いただいてばかりですみません」


 ウェスさんには貧民街シャンティ・オッピドゥムでの最低限の知識やマナーも教えていただいたんだよな。


「そうでもないぞ」


 ウェスさんは再びフードを深くかぶり直す。

 ちらりと笑顔を見せてもらえた、ような気がした。


「ほら、ディナ様たちが帰ってきたぞ」


 ウェスさんにうながされて馬車から降りる。

 虹爵様のお屋敷の正門前に、ルブルムとディナ先輩がちょうど出ていらしたのが見えた。

 あんな遠くの足音まで判別できるのか――ウェスさん、やっぱりすごいな。




「ト……リテル、マウルタシュ様は寛大なお方だったぞ」


「ウェス、先ずはいったん屋敷へ戻る」


「承知しました」


 ウェスさんは御者席へと戻り、ディナ先輩、ルブルムに続いて俺も再び馬車(ゥラエダ)へと乗り込む。

 屋敷へ着くまでの間に、今後の予定を先に確認する。

 屋敷で着替えて装備を整えたら、まずは衛兵の詰め所へと行き、マドハトを解放する。

 その脚でロズさんの用意してくれた馬車(ゥラエダ)に乗り、フォーリーの街を出てラビツたちを追いかける――実際、予定は滞りなく実現された。

 途中までは。


 屋敷ではディナ先輩が、ルブルムのお母さんかってくらいにルブルムに忠告を色々と繰り返していたし、「どうするか迷う前に殺せ」なんかは五十回くらい言っていたし、ウェスさんは葉っぱにくるんだ携帯用の昼食を用意してくれたし、マドハトはどこのフェスかってくらい跳ねて喜んでたし、ロズさん達にはまたからかわれたりもした。


 用意されていた馬車(ゥラエダ)は、ストウ村から乗ってきた荷車(クールルス)よりも一回り大きく、屋根枠には梁、壁枠には筋交いも使われ、頑丈に作られている。

 二頭立てで、藁を詰めたクッションが十個、十進換算で十二個積まれているから、少なくともそれだけの人数は乗れるってことだろう。

 どうやら大きな街と街とを結ぶ定期便馬車(ゥラエダ)と同じ規格らしい。

 水の入った木樽が二つ、保存のきく食糧も幾らか、そして槍も二振り積み込まれていた。


 フォーリー以北の治安の悪さについては、ディナ先輩からも十分な説明を受けた。

 というより北側が危険なのではなく、寄らずの森近くのストウ村やゴド村が特別なのだと。

 ディナ先輩曰く、自分で働かずに他人の上前をはねて楽して生きたがるクズに限って自分の身を大事にしたがるから、他の地域よりも異門(ポールタ)が発生しやすい寄らずの森近辺には近寄らないのだそうだ。

 そんなに魔物が多かったのか……とリテルの記憶を辿ってみると、確かに少なくはなかった。

 カエルレウム師匠は危険な魔物から優先して対処していらしたし、実際には害の少ないカリカンジャロスやゴブリン、モルモリュケーのような魔物はあえて放置することもある。

 そりゃ魔物の生態に詳しくない人から見たら、魔物が跋扈(ばっこ)する場所、みたいに見えなくもないか。

 カエルレウム師匠のことだからそこまで見越して害の少ない魔物を後回しにしているまでありそう。


「幌は基本的には降ろしておけ。風通しよりも荷物の中身やこちらの人数が外から把握しにくいことを優先しろ」

「側面の幌を少しだけ開けた隙間から矢を射る訓練はしておけ」

「襲ってきた者とお前たちが魔法を使うところを見た敵は基本的には殺せ。特にリテルの見た目は狩人だし、公的にも見習いであって魔術師ではない。通常から従者として振る舞うことで欺ける目も多い」

「ルブルムの思考はともすれば学習に向く。一瞬の迷いが生死を分ける。危険なものは調査よりも排除を心がけろ。リテル、お前が、だ」

「あとルブルムはリテルという名前を忘れぬようにな」

「野外、市街問わず、休憩の際は必ず一人が周囲の警戒に当たれ。それは街の宿屋で就寝するときも含むぞ」

「一番大事なことは、いざとなったら自分たちの命を優先しろ。カエルレウム様もそうおっしゃっていた」

「あと」


「ディナ様」


「ああ、そうだな。引き止め過ぎた」


 ディナ先輩はルブルムを抱き寄せて、何かを耳打ちした。

 俺はと言えば、さっきからずっと喜びジャンプしまくりのマドハトに引っ張られるようにして馬車(ゥラエダ)へと乗り込む。

 続けてルブルムが乗り込み、ディナ先輩からの差し入れとしてさらに水の木樽が一つと、食糧とが運び込まれる。

 さらに槍をもう二振りと、矢が二十本入った矢筒が二つ、予備の弓。

 願うらくはこれらを使うことなく無事に指名を果たせること。


「リテルさまっ! まだ行かないんですかっ!」


 ディナ先輩が手配してくださった護衛の到着を待っているのだとさっきも説明したんだけどな。

 さっきまで牢屋にずっと入りっ放しだったこともあってマドハトは、散歩を一日休んだハッタが散歩紐を見たときみたいにはしゃいでいる。

 異世界なのに、出会ってから数日だってのに、マドハトの喜んでいる顔を見ているとなぜか懐かしさを感じて、うっかり頭を撫でそうになる。

 というか撫でてしまった。

 するとなぜかルブルムが隣に頭を出す。

 これは撫でろということなのか?


 いったん深呼吸する。

 リテルの記憶の中で、この世界における「頭を撫でる」行為に含まれる意味を探してみると、目上の者が目下の者への親愛の情を表現するものだと分かる。

 だとすると俺の従者扱いなマドハトはともかく、姉弟子であり魔術師であるルブルムの頭を見習いの俺が撫でるのは問題があるのでは?

 俺がためらっていると、ルブルムがちらりと上目使いに俺を見た――さらに頭をくいっと近づけてくる。

 ……うーん。これは仕方ないか?

 右手をかざし、ルブルムの赤い髪の中へそっと下ろす。

 ふんわりと柔らかく、手のひらにルブルムの温度を感じる。

 そのまま何度か撫でると、マドハトを撫でたときとはまた違う、じんわりとした温かいものが胸の奥に染みてゆく。


「へー。いいなぁ。私も撫でてもらおうかなぁ」


 あまりにも聞き慣れた声にビクついた俺は慌ててルブルムの頭から手を離すと同時、声の方向へ勢いよく振り向いた。


「おまたせ。私たちが護衛だよ!」


 笑顔のケティが馬車に乗り込んできた――目だけ全然笑っていないケティが。


「え? ケティ? ……なんで?」


● 主な登場者


有主(ありす)利照(としてる)/リテル

 猿種(マンッ)、十五歳。リテルの体と記憶、利照(としてる)の自意識と記憶とを持つ。魔術師見習い。

 ラビツ一行をルブルム、マドハトと共に追いかけている。ゴブリン用呪詛と『虫の牙』の呪詛と二つの呪詛に感染している。


・ケティ

 リテルの幼馴染の女子。猿種(マンッ)、十六歳。黒い瞳に黒髪、肌は日焼けで薄い褐色の美人。胸も大きい。

 リテルとは両想い。熱を出したリテルを一晩中看病してくれていた。リテルが腰紐を失くしたのを目ざとく見つけた。


・ラビツ

 久々に南の山を越えてストウ村を訪れた傭兵四人組の一人。ケティの唇を奪った。

 フォーリーではやはり娼館街を訪れていたっぽい。


・マドハト

 ゴブリン魔法『取り替え子』の被害者。ゴド村の住人で、とうとう犬種(アヌビスッ)の体を取り戻した。

 リテルに恩を感じついてきている。元の世界で飼っていたコーギーのハッタに似ている。街中で魔法を使い捕まっていた。


・ルブルム

 魔女様の弟子である赤髪の少女。整った顔立ちのクールビューティー。華奢な猿種(マンッ)

 槍を使った戦闘も得意で、知的好奇心も旺盛。様々なことを学び、成長中。


・アルブム

 魔女様の弟子である白髪に銀の瞳の少女。鼠種(ラタトスクッ)の兎亜種。

 外見はリテルよりも二、三歳若い。知的好奇心が旺盛。


・カエルレウム

 寄らずの森の魔女様。深い青のストレートロングの髪が膝くらいまである猿種(マンッ)

 ルブルムとアルブムをホムンクルスとして生み出し、リテルの魔法の師匠となった。『解呪の呪詛』を作成中。


・ディナ

 カエルレウムの弟子。ルブルムの先輩にあたる。重度で極度の男嫌い。壮絶な過去がある。

 アールヴを母に持ち、猿種(マンッ)を父に持つ。精霊と契約している。トシテルをようやく信用してくれた。


・ウェス

 ディナに仕えており、御者の他、幅広く仕事をこなす。肌は浅黒く、ショートカットのお姉さん。蝙蝠種(カマソッソッ)

 魔法を使えないときのためにと麻痺毒の入った金属製の筒をくれた。


・『虫の牙』所持者

 キカイー白爵(レウコン・クラティア)の館に居た警備兵と思われる人物。

 『虫の牙』と呼ばれる呪詛の傷を与える異世界の魔法の武器を所持し、ディナに呪詛の傷を付けた。


沢地(さわじ)怜慈奈(れじな)

 元の世界において、英志(ひでし)狙いで利照に近づいた女。




■ はみ出しコラム【言語】

 ホルトゥスにおいて使用される言語は、ラテン語が元になったと思われるものであり、国を超えてほぼ同じような言語が用いられる。

 ただ、明らかに英語や日本語などラテン語以外の発祥と思われる単語も少なくなく、転生者がそれなりに存在することをうかがわせる。


・文字

 地球とほぼ同じアルファベットが用いられている。

 ラトウィヂ王国民が通常書く文字は「筆記体」である。

 書く道具としては羽根ペンが一般的であり、富裕層になるとガラスペンや金属製のペン先を取り付けた取替ペンも存在する。

 インクとしては墨が一般的。

 個人的な書物はだいたいが手書きである。


・活版印刷

 アルファベットに関しては「整字体」という、ブロック体のような書体も存在する。

 公共の場所にて掲示・頒布される情報チラシに関しては、整字体の金属製活字を用いた活版印刷にて作成されることが多い。


・版画

 江戸時代の浮世絵のように、絵と文字が彫られた版画モノはラトウィヂ王国内においては一般的であり、子供向けの教訓話や大人向けのエロ話、全年齢向けの笑い話や人情話、恋愛モノについては、一話一枚の形で販売されることが多い。

 絵が多めの漫画タイプ、文字が多めの文章タイプなど様々である。

 日本の浮世絵とは異なり、長くなった場合は巻物状に作られる。

 読み物としての娯楽は版画が多く用いられ、作家、絵師、彫師、摺り師など分業化されていることが少なくない。

 人気が出て話数が進むと、長編の書籍として改めて発売されることも少なくない。

 このときは活版印刷に変更される場合もある。


・同人誌

 版画のような出版物を個人で作る場合、絵師や彫師、摺り師などを手配できないからといって全て手書きで作る強者もいる。

 その場合は販売ではなく貸本としてこっそり流通することが多い。

 そのような背景からか、内容は過激であったり刺激的である作品がほとんどだという。


・書道

 ラトウィヂ王国には毛筆を用いた筆記体の書道が存在する。

 貴族の嗜みとして流行し、一時期は公共の頒布物もこの書道で書かれた文字を版画化したものが使われることもあったが、あまりにも芸術的過ぎて情報が入ってこないとして、活版印刷技術が発達する後押しをした。


・カンジ紋章

 明らかに漢字をもとにしたと思われる紋章が存在する。

 これらの紋章は一般使いされることはなく、兵士や傭兵が、自分たちのチームを表すエンブレムとして用いることが多い。

 カンジ紋章辞典はラトウィヂ王国北部のルイース虹爵領、領都アンダグラにある図書館に原本があり、その原本にはカンジ紋章が持つ「願い」もあわせて記載されている。

 例えば「勝」によく似たカンジ紋章には「勝利を願う」と添えられている。

 この「願い」は、漢字の意味にごくごく近いものがほとんどだが、中にはトンデモなものも混ざっている。

 原本から幾つかをピックアップしたカンジ紋章一覧シリーズは、版画化されて売られてもいる。

 ちなみに、カンジ紋章の始まりは、かつてラトウィヂ王国で名を馳せた傭兵団「キリシタン」のジュストと名乗る男だと言われている。


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