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ロージー①



「ロージー、婚約の話なんだが…」


毎回はぐらかして有耶無耶にしていた話。

テディが乗り気で無い事はわかってる。


事故にあった後、

私がお父様とおじ様に必死に頼み込んだ婚約だった。



「テディは私の事が嫌い?」


「嫌いじゃない。けど、俺はーー」


嫌いじゃ無いなら一緒に居てよ。

私は貴方の隣にずっと居たじゃない。


俺は?その先なんて聞きたく無いわ。



「じゃあ、問題無いと思うの。親同士が結婚を決める事なんて良くある事だし…」



「だけど、俺にはーーー」


その先を言わせない様に

必死に言葉を紡ぐ


「おじ様は喜ぶんじゃ無いかしら?私も娘みたいに可愛がってもらってるもの。お互い親孝行が出来るわね?」




「……っ…ロージー、聞いてくれ。俺は好きな人がいる。誰かを喜ばせる為に結婚する訳じゃない。」



ーーーーーっ。



そんな言葉は…聞きたく無いのよ。



「……でも、テディ。離岸流に巻き込まれた所を助けたのは私だよね?相手が誰だか知らないけれど、お見舞いにも来なかったじゃない」


そう、一緒には()()()()()でしょ?



「……事情があるんだ。それに…本当にロージーが助けたのか?」


「…どういう意味?」


自然と眉が寄る。


どこまで知っているか…いえ、覚えているのか

分からないから迂闊な事は言えない。


「そのままだ」


「…助けたわ。運良く海岸に倒れていた所を手当てしたのは私よ」


そう、手当てしたのは私。



「……そうか」


「…テディ、もし相手が居るのならここに連れてきておじ様と私に会わせて欲しいわ」



出来る訳無いわ。

だって、貴方の好きな人はーーーーー



人魚でしょ?






あの日ーーーー


事故にあった日。

テディ達の仕事が休みだと聞いた私は

屋敷に遊びに来ていた。


だけれど、テディは出掛けてしまっていて

少し待ったけれど帰ってくる気配も無い。


折角、会いに来たのに…

そんな残念な気持ちを振り払い

探しに行くことにした。



思い付く場所を一箇所、二箇所と探していく

三箇所目で海に着いた。



…嫌な事でもあったのかしら?

テディは何かあると海に行くのよね、泳げない癖に。

ふふふと笑みが溢れる。


そんな時

遠くから声がしたーーー




「誰か!!誰か居ませんか!?助けて!!!」




声のした方へ走って行くと

そこにはテディと女の子が居た。



ーーーーーえーーー?

テディーーー?



状況が飲み込まず固まってしまった私の脚に

女の子が縋り付く。


「溺れてしまったの!!息は吹き返したけれど、お医者様に見せないと…っ。お願い!!テディを助けて!!」



ーーはっ!と我にかえり



「ええ!勿論!私の大切な人だもの…!

人、人を呼んで来ないと…っ」



どうして?何で?人を呼んで来てくれなかったの!?

と怒りが増し、キッと睨んでしまった。



何か違和感があった。その時は必死で…

すぐに走って人を呼んで来た。


使用人も医師も

助けるのに必死で誰も気付いて居なかったけれど…



顔をぐしゃぐしゃにした女の子は脚が無かった。

正確に言うと尾鰭だった。





テディは意識朦朧とする中で

「……る……シャル……」と何度もうわ言を呟いた。



私の爪が手のひらに食い込むほど

ぎゅっと握り。

視界がぼやけるのを必死で耐えた。



「これまでも、これからも…

貴方の側に居られるのは私よ、テディ」



テディの手をそっと握り

回復を祈った。




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