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第九話 最初の授業は驚愕ばかり


 ――1時間後――


 リアスハイド学園に入学してから一発目の授業が始まった。

 内容はこれからの授業を進める上で必要になってくる生徒個人の実力を測るというものだ。さっき決まった事だが俺はこの授業の中でユリスと勝負をすることになっている。


(さてと、勝負するのはいいとして形式はどうなるかな)


「よし、全員集まってるな。今日の授業では昨日言った通り個人の実力を測らせてもらう。計測方法は簡単、離れた位置に設置されたあの的を攻撃するだけだ」


(なるほど、確かに簡単だな。まぁ、大体予想してた通りだけど)


「攻撃方法は何でも構わん。ただし、法に触れたり道徳感の感じられない、いきすぎた行動はその時点で即失格。学長室へ連行だ。いいな」 

「「「はい!」」」 


 先生の説明を聞き、俺は隣にいるユリスへと提案をする。


「この形式なら的により多くの傷を付けられた方が勝ちってことでいいか?」

「えぇ、いいわよそれで」

「りょーかい」


 そうして俺とユリスが会話を終えたところでタイミング良く先生が順に生徒を指名しはじめた。


「それじゃあ、まずはユリス。前へ」

「はい」


(おぉ、早速ユリスが呼ばれたか)


「いい、しっかり見てなさい。私の力を」


 通り過ぎざま俺にだけ聞こえるような声で呟いたユリスはそのまま堂々たる足取りで指定の位置へと進んでいく。


「準備はいいか?」

「いつでも」

「よし。……では、始め!」


 先生の掛け声と同時にユリスは両手を前に突き出し詠唱を始める。さらに前に突き出した手の前方には一つの魔法陣が浮かび上がっていた。


「燃え盛れ、赫灼の火よ。その業火で全てを焼きつくせ」


(へぇ、魔法と魔術の同時発動か)


 あの魔法陣の系統からするに属性も無い強化系の魔法だろう。予め魔法陣を用意しておくことで身体強化同様に魔法を強化する作戦みたいだな。


(魔法と魔術の並列使用なんて並大抵の学生ができる事じゃない。この歳でそれが出来るって言うのは類稀なる才能の持ち主が相当な努力をしてきたって証拠だ)


 そして、ユリスの詠唱が終わった時。その魔法は形となって世界に姿を成した。


「権限せよ、巨人の大剣(レーヴァテイン)!」


 ユリスの放った魔法は真っ直ぐに的へと飛んでいき轟音を立てて衝突した。


「おぉ…」

「す、すげぇ」

「さすがユリス様……」


 すると、それを見ていた他の連中から感嘆の声が漏れる。


(今のは中級魔法の火炎斬(フレイム・スラッシュ)。けど、普通の火炎斬じゃないな。魔法陣による強化魔法で威力が倍以上に増えてる。あそこまで手が加えられたら殆どオリジナルの魔法と言っていいだろう)


「どう!?」


 ユリスが的の状況を確認する。土煙が晴れた先、現れた的はその中心が黒く焼け焦げていた。


「おぉ、さすがと言うべきか……あの的にあれだけのダメージを与えるとは。ありがとう、下がってくれ」


 先生にそう指示されユリスは待機組へと戻り、俺の方へと向かってきた。


「どう? 私の魔法は。驚いたでしょ」

「嗚呼、魔法の威力にって意味ならさほど驚きはしなかったが、その技術には驚かされたよ。魔法と魔術の並列使用もそうだけど既に完成されている魔法にあれだけ手を加えるのは相当難しい」

「そ、そう……」

「? 何か変な事でも言ったか?」

「そ、そうじゃないけど、あんたに素直に褒められと何か違和感があるわね」

「俺だって凄いと思ったことは凄いって言うさ。それの何がおかしい」

「ふふっ、別に。おかしくなんて無いわよ」


(と言いつつも笑ってるじゃねぇか。はぁ、女って言うのは何を考えているのか分からないな)


「それより、あんたは何の属性を使うの? やっぱり空属性?」

「うーん……まぁ、それは出番が来るまでのお楽しみってことで」

「あっそ、何でも良いけど、少しでも私に近づけるよう精々頑張りなさい」

「言ってろ、余裕で追い越してやる」

「ふっ、楽しみにしてるわ」


(ユリスの魔法を見るまでは無難に土魔法にしようと思ってたけど、あんなの見せられたら俺も少し本気を出したくなるじゃないか)


 その後も授業は順調に進んでいく。俺の番が回ってくるのは当分先になりそうだ。


 □


 先頭のユリスの後も的に傷を着ける生徒は何人か現れたがユリス程の結果を出す者は出ず、すんなりと進んで行った。そして、残すところあと一人。遂に俺の番が回ってくる。


「それじゃあグレイ、前へ」

「はい」


 先生の指示に従い前へ出た俺は先程考えていた事を実行するため準備に入る。


(本気を出すとは言っても要はユリスの結果を越えられればいいんだ。それなら詠唱も短めで、威力も抑えて良さそうだな)


「準備はいいか?」

「すぅー、はぁー、……はい」


 俺は一度大きく深呼吸をして先生の問いにそう返す。


「よし。では、始め!」

「ふぅー……潰せ」


 それまでの生徒同様、俺も的目掛けて右腕を突き出し、詠唱を始める。


(イメージは……あの的を、握りつぶす!)


重圧(プレス)!」


 それは一瞬の出来事だった。

 詠唱を終え、俺が魔法を発動すると狙った的は周囲から握りつぶされたかのように、その原型を留めることなく潰された。


「ま、こんな所かな」


 しかし、俺の測定が終わっても先生から声がかからない。


「ん?」


 何かおかしいと思って辺りを見回してみれば先生だけでなく他の生徒達も全員目を見開き、口をぽかんと開けているではないか。


(えっとぉ……もしかして、やりすぎた?)


「は、はぁぁぁあっ!?」


 直後、クラスメイト全員から同時に少し遅れた驚きの声が上がった。





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