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第六話 入学


 ――入学試験当日――


 俺は試験会場でもあるリアスハイド学園の校門前に立っていた。


「ここがリアスハイド学園。まじかで見るのは初めてだけど、やっぱデカイな」


 あの後、当然試験が翌日まで迫っているのに申込書を申請する事は出来ず、じゃあ何故俺がこの場に立っているのか。理由は簡単だ。


(あのたぬき親父、俺が提案を受けると分かった上で事前に申込書を提出してるとは……)


 そう、学長は俺の返事を聞く前に既に申込書をリアスハイドへ提出していたのだ。


「まんまと手の上で踊らされるとは。生きてきた年数の差が出たな」


 前世で生きた歳と合わせてもあの学長には届かないからな。歳の差と言うやつか。


(まぁ、過ぎたことをいつまで言ってても仕方ないか。面倒だが、やるとなった以上は全力を出そう)


 だが、この時の俺はまだ知りもしなかった。この試験の結果があんな事になるなんて……


 □


 今回の試験は三つ。全て筆記試験で構成されているらしい。一つ目が魔法や魔術への理解度を図る魔法学。二つ目が数学や国学、社会学と言った常識を問う通常科目。三つ目が礼節や態度、言葉遣いの正確さを求められる貴族向けの問題だ。

 一つ目の魔法学に関してはもちろん何の心配も無く、確実に満点のパーフェクトだろう。

 しかし問題は他の2つだ。数学に関しては魔法に通づる所が幾つかあるため一応勉強しているが他の二つと三つ目に関しては危機的状況にある。


(そもそも、礼節とか態度なんて貴族でもない限りわざわざ勉強しないだろ! 国学と社会学にしたってどっちも俺が死んでからのことじゃねぇか!)


 現在は三つ目の試験、貴族学の時間だ。もちろん前の時間には国学と社会学で完全敗北している。


 そうして試験はあっという間に終わり、今日の日程は全て終了となった。結果は後日リアスハイド学園の校門を進んだ先にある掲示板に貼られるらしい。


「はぁ、最悪だ」


(正直試験を受ける前まではこんな物余裕だろうと自身を持っていたところもある。だが、蓋を開けてみればどうだ? 魔法学と数学以外は訳の分からないものばかりじゃねぇか)


 救われた点としては魔法学園と言うことでやはり魔法学がその得点の大半を締めているというところだろうか。それに数学を合わせればそれなりの点数にはなるだろう。他の教科は……運に任せるしかない。


(とりあえず、結果待ちだな……)


 □


 ――五日後――


 遂に結果発表当日を迎えた。受験人数は400人、その中から合格するのは150人と約3分の1だ。俺の試験番号は318、果たしてどうなるか。


「318……318……」


(まずい、今のところ見当たらないぞ……)


 今回の試験では結果と同時にクラスも発表される。その数は五つ、1クラス30人という事だ。振り分けは試験結果の高い順にAクラスが上位30名、Bクラスが31から60と言った感じだ。ちなみに、Cクラスまでで俺の番号は未だ出てきていない。


(これは落ちたか……?)


 そう思いつつ、Bクラスにも自分の番号が無いことを確認した時だった。


「あっ、あった……」


 Aクラスに入ってすぐ、一番下に俺の番号が記載されていた。


「はぁ〜、何とか落選は免れたな……」


(えっと、この後は確か……制服を受け取ってから入学式だったか?)


 ほっとした俺は何とか次の行動を思い出し、遠くで呼びかける係の人の元へと向かった。


 □


「試験番号318番……グレイ=ラインハルトさんですね。はい、確認しました。こちらがあなたの制服になりますね。この後はクラスで担任となる教師と顔合わせをした後入学式となるので、それまでは教室でゆっくりしていてください。試験合格、おめでとうございます」

「ありがとうございます」


 そう言って受付係の人から制服を受け取ると、俺はそのままAクラスの教室へと向かった。


(にしても、あの受付の人可愛かったなぁ。何より最後の笑顔が破壊力抜群だった。それに、胸もデカかったし。制服を来てたって事はあの人もこの学園の生徒なのか? いやぁ、予想以上にいい学園生活になりそうだ)


 そうしてこれからの学園生活に希望を抱いているといつの間にか教室の前へと到着していた。


「ここがAクラスか……」


(もう何人か人は来てるみたいだな)


「ちょっとあなた」

「上手くやっていけるか? 組織では割と人間関係は良かった方だけど、嫌でも最後は結局裏切られたし」

「聞こえてないの!? 扉の前に立ってるあなたよ!」

「それに中等部時代は殆ど研究室に篭ってたからな、正直友達なんて居なかったし、よく話すのも担任と学長ぐらいだから……」

「……っ! いい加減にしなさいよ、私を無視するなんてどういうつもり!」

「うおっ、何だ?」


 突然後ろから肩を掴まれ引かれた俺は、肩を掴むその主へ目を向ける。

 するとそこには、真紅の髪をたなびかせ、その美しい顔立ちに似合わぬほどの目でこちらを睨む、絶世の美女がいた。


「何だじゃないわよ! そこに立たれると通るのに邪魔なんだけど!?」

「あ、あぁ、悪い」


 その言葉で俺は自分が今どこに立っているのかを思い出し、一言謝罪を入れて横へ避ける。


「ふんっ。それより、あなた見ない顔ね。もしかして他の学園からの編入生?」

「そ、そうだけど。それがどうかしたか?」


 この学園は初等部、中等部と一貫校だ。在籍しているおおよそ3分の2が中等部から繰り上げの生徒、残りの3分の1が俺みたいな他の学園からの編入生という事になる。初等部から在籍する生徒が同じなら同じ学年の生徒の顔ぐらい覚えていてもおかしくは無い。


「いいえ、別に。それより、あなたもこのクラスの生徒ならもっと堂々としなさいよね」

「あ、あぁ、悪い」

「はぁ、まぁいいわ。それじゃあ、せいぜい振り落とされないように頑張りなさい」

「お、おう」


 そう言い残して彼女は教室へと入って行った。


(今のは、応援された……って事でいいのか? にしても、さっきの言動からするにあの子も多分貴族だよな。それにしては少し態度が悪くないか? 高圧的と言うか何と言うか)


「まぁ、今のはドアの前でぼーっとしてた俺が悪いし、仕方ないか。それより……」


(あの子も、意外と大きかったな)


 そんな事を考えつつ、俺も教室の中へと入った。


 

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