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第73話、頼む側

 リーディッドさんがやけに楽し気に話を進め、その様子をガライドが気にしている。

 領主さんの様子は余り変わらないけれど、エシャルネさんが少し心配そうな顔だ。

 ただ私はそんな皆の様子を少し見つつ、殆ど食事に意識が向いていた。


 昨日はやらかしてしまった以上、今日は失敗できない。

 ちゃんとマナーに気を付けて、出てくる食事を片っ端から食べて行く。

 ただ私の料理が減ると、今度は使用人さん達が慌てたように数人部屋から出て行った。


 追加を取りに行ってくれたんだろうか。そんなに焦らなくても良いんだけどな。

 食べさせて貰えるだけでありがたいんだし、作る時間ぐらい幾らでも待つんだけど。


「単純に、市井の者では手におえぬから力を貸して欲しい。そう乞われただけに過ぎん。その様な意図は無い。私としても早い内にかたを付けたいとは思っているがね」

「そうですか。それはそれは、頑張って頂きたいですね。ああそうだ、良ければお嬢様が戦う姿を見学させて頂いても宜しいですか?」

「・・・古代魔道具の戦闘は見世物ではないのだが」

「あらそれは残念です。では明日にでも対処され、街の人々が領主様へ感謝する様子を見るだけで我慢すると致しましょう。では、頑張って下さいね?」

「っ・・・!」

『私とグロリアの許可が無ければ出来ないがな。もし魔獣退治になど行かせれば、何も出来ずに恥をかくだけだろう。リーディッドはそうなるのを楽しみにしている、と言っている訳だが・・・目的を考えれば面子を潰す真似は損だろうに。一体何を考えているのか』


 ガライドの説明を聞いても、私には「そうなの?」と少し首を傾げてしまう。

 今の会話をどう聞いていればそんな話になるのか。私にはさっぱり解らない。

 なので取り敢えずもしゃもしゃと料理を食べる。美味しくて手が止まらないだけかも。


 その間にさっき出て行った使用人さん達が戻って来て、手には追加の料理があった。

 やっぱり追加を取りにいってくれていたんだ。今回はちょっと野菜が多いかな?

 私の前に料理が並んで行き、感謝してその料理にも手を付けて行く。


 どれも美味しい。緊張していても美味しくて意識が溶けそうになる。

 その度に「いけない」と自分に叱咤して、緊張感を保ちつつ食べ続けた。

 美味しいのに疲れる。けど美味しい。なんて変な思考になりながら。


「ですが数日とはいえお世話になる身として、少々手をお貸ししたいと思っての事だったのですけどね。断られたのですし、お言葉通り大人しくして居ましょうか、グロリアさん」

「もぐもぐ・・・っ、んっく、は、はい、わかり、ました」

「あらあら、ごめんなさい。邪魔しちゃいましたね。折角の美味しい食事ですから、いっぱい食べて下さいね。領主様も幾らでも食べて良いと仰ったのですから」

「は、はい。ありがとう、ござい、ます」


 話しかけられると思っていなかったので、慌てて呑み込んでからリーディッドさんに応える。

 魔獣は倒す気だったけど、彼女にそう言われたのなら仕方ないかな。

 領主さんも倒す気らしいし、きっと私が変に手を出しちゃ駄目なんだろう。


 美味しい料理をいっぱい食べさせて貰ってるのだから、余計に何も言えないと思うし。

 そう納得して食べるのを再開し、口に広がる幸せを堪能する。

 追加の料理を作っていると遠くから聞こえたので、まだ食べられる事がとても嬉しい。


「・・・手を貸していただける、という事かね?」

「あら、領主様。お嬢様が居られるのであれば、余計な手は必要無いのでは?」

「グロリア嬢に手を貸して頂けるのであれば、万全を期す事が出来る。貴女が手を貸して下さると言うのであれば、私は喜んでその手を取ろう」

「ですがその手は要らないと、先程言われましたので・・・出しゃばるのはやはり失礼かと」

「っ・・・確かに一度断ったのはこちらだ。厚顔な物言いだった。我が家と領地の者の為にも私から頼もう。グロリア嬢の力を貸していただけないかな」

「あらあら、それはそれは。貴方が私に頼むと? 宜しいのですか?」

「構わんさ。それでお互いに友好的な付き合いが継続できるのであれば。我が家に貸しを作り、我が家はその為に義理を果たさなければいけない。そういう事で良いだろう」

「ではお言葉に甘えさせて頂いて、魔獣退治に同行させて頂きましょうか」

『・・・領主から頼み込んだ、という形にしたという事か。どうせ仕事を受けるなら、他でも利益を出してやれという辺りが実にリーディッドらしい。本当にどちらが悪役やら』


 ・・・良く解らないけど、話は纏まったらしい。

 結局魔獣退治には向かう、って事で良いのかな?

 その後は特にこれと言った会話も無く、静かに食事が進んだだけだった。

 でもエシャルネさんは何だか嬉しそうだった、かな?


「も、申し訳ありません、もう食材が・・・これ以上は非常時の備蓄に手を出さなければいけなくなります。す、全て私の不備です。誠に申し訳ありません・・・!」


 ただ途中で料理人さんが青い顔で謝って来た時は、かなり慌ててしまったけど。

 美味しくてずっと食べていたら、どうも少し食べ過ぎたらしい。

 領主さん達も謝って来たけど、むしろ謝るのは私の方だと思う。


 とはいえリーディッドさんが「お気になさらず」と言ってくれて場は収まった。

 何も気にせず食べるとこういう事態も在るのか。今度から少し気を付けよう。


 ・・・食べてる時は普段以上に頭が働いてないから、あんまり自信がないけど。

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