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第67話、行先

「いっぱい買ったし、これでお土産が無いとか言われる事も無いでしょ!」

「買い過ぎだ。持って来た金使い果たした上に俺から借りるとか、万が一帰りで一人になったらどうするつもりなんだお前は。パン買う金すら無いとか洒落にならないぞ」


 キャスさんがホクホク顔でお土産を抱えていると、ガンさんの指摘が入った。

 あれもこれもと買うつもりだったキャスさんは、余りお金を持って来てなかったらしい。

 なので途中でガンさんに借りて、ガンさんも財布の中身が大分軽くなってしまった様だ。


「え、大丈夫だよ? それぐらいのお金は残してるから。その為にガンに買って貰ったんだし」

「なっ、お前、騙したな!? しかも買って貰ったって何だ! 貸したんだよ俺は!」

「ガンは貸したと思った。でも私は買って貰ったと思った」

「良しそこになおれキャス。今日ばかりは許さん」

「ま、まさか体で返せって言うの!? ガンはそんな事言う人じゃないって信じてたのに!」

「子供の前で人聞きの悪い事を言うな! あっ、コラ逃げんな!」


 ショックを受けた様な事を言いながら逃げるキャスさんと、それを追いかけるガンさん。

 けどキャスさんは何処か楽しそうだし、本気で逃げている訳じゃないんだろう。

 ただ追いかけてるガンさんは結構本気の様な気も。ほおって置いて良いのかな。

 あ、キャスさん捕まった。頭を拳でぐりぐりされてる。


「ふふっ、お姉さまのお仲間は楽しい方々ですね」

「何時までも子供なだけですよ、あの二人は」

『全くだ』


 そんな二人を見るエシャルネさんはクスクスと笑い、リーディッドさんは呆れたように返す。

 けれどそんな彼女の表情も優しい笑顔で、悪くなんてきっと思ってないんだろう。

 ガライドは・・・どうなのかな。でも声音は優し気だったと思う。


「エシャルネ様、またねー!」

「ばいばーい!」

「グロリアちゃんもありがとー!」


 別れ際には子供達が元気よく手を振ってくれて、先生達も笑顔で見送ってくれた。

 私達も手を振り返してその場を去り、来た道をまた戻って行く。


「さて、土産も買ってしまった事ですし、城に戻りますか?」

「えー、まだ日も高いし、他にも回ろうよー」

「そうは言ってもキャス、貴女はもう手持ちが無いでしょう」

「うぐっ・・・で、でもほら、折角の大きな街なんだし、グロリアちゃんの経験になるでしょ。だってほら、今後を考えたらもっと都会に行く可能性だってある訳だし・・・」

「・・・それは一理ありますが・・・まあ良いでしょう。口車に乗ってあげます」


 リーディッドさんがため息を吐きながら納得し、私は初めての話に少し驚く。

 ここより都会に行く機会が有るんだ。もっと人が多い所なのかな。


「ではグロリアさん、田舎では確実にお目にかかれない様な店に向かいましょうか」

「は、はい」

「今のリーディッドの発言ってかなり田舎者っぽいよね」

「安心しろキャス。俺達はまごう事無き田舎者だ」

「はいはい、良いから行きますよ。エシャルネ様もそれで宜しいですか?」

「はい! お姉さまと一緒ならどこまでも!」


 全員意見を一致させ、城に戻らず街を歩く。

 道中に見つけた屋台にキャスさんが突撃したり、その支払いをガンさんがしながら。


「キャス君、何か言う事は有るかね」

「ごちそうになります! ガンさん!」

「うるせえ。奢ったんじゃなくてお前が逃げたんだよ。何で金持ってないのに注文した」

「もぐもぐ。おいひひょう、もぐもぐ、ひゃったから」

「人が話してる最中に食うなよ・・・」

「んっく。これ美味しい。グロリアちゃんもどうぞー。あ、エシャルネ様もいります?」

『今日のキャスは全開だな。自由過ぎる』


 ガンさんと食べ物に視線を往復させながら、オロオロしつつ串焼きを受け取る。

 で、でもこれ本当に食べていいのかな。あ、あ、何か付いてる物が垂れる。


「あー・・・もう良いよ。お食べグロリア。俺の事は気にするな」

「は、はい、ありがとう、ござい、ます」


 許可を貰ったのでもぐもぐと食べ、口の中に甘辛い味が広がる。

 ちょっと荒っぽい味な気がするけど、それがきっと良いんだろう。


「おいしい・・・」

「うん、俺はグロリアの為に買った。そう自分を誤魔化す」

『ガン・・・お前は本当に人が良いな。もう少し怒っても良いと思うぞ、私は』


 ガライドが何か切なそうに言っていたけど、串焼きが美味しくて聞いていなかった。

 その後は美味しいお菓子やお茶の有る所や、良く解らない小物店にも向かった。

 ただキラキラした石を売ってるお店は、私には少し不思議だったけれど。

 確かに綺麗な石だったけど、子供達の細工や食べ物より遥かに高いのが良く解らない。


「はー、色々回ったねー。グロリアちゃん、何が一番楽しかった?」

「フワフワ、美味しかった、です・・・」


 良く解らないフワフワしたお菓子が物凄く美味しかった。

 まだ口に中に甘さが残ってる気がして、頭がぽわぽわする。


「ふふっ、そこまで喜んで頂ければグロリア様を案内した甲斐が有りましたわ」

「ありがとう、ござい、ます・・・」

「いえいえ、どういたしまして」


 エシャルネさんがそのフワフワを教えてくれて、つまり彼女のおかげで今の幸せがある。

 感謝しよう。もし出来るなら、友達にも食べさせてあげたかった。

 でも日持ちしないからお土産には無理、って言われちゃったからなぁ・・・。


「所で皆さま、もう行きたい所などは無いのでしょうか」

「私はそもそも特に目的もありませんし、ガンとキャスはどうですか?」

「ん? 俺は別に戻るならそれで全然いいぞ。そもそも元々仕事なんだし」

「私も良いよー。お気になさらずー」

「グロリアさんは・・・食べられたら満足そうですね」

「はい・・・満足、です・・・」


 エシャルネさんが次はどこに向かうのかと聞き、それに皆が答える。

 私は皆が居ればどこでも良い。そして皆ももう戻る気の様だ。

 そもそも私は未だフワフワの幸せを噛み締めている。

 

「で、ではその、良ければ皆様と共に、傭兵ギルドに向かっても良いでしょうか! 今までは危ないからと入れて貰えなかったのですが、皆様と一緒なら入れますよね!」


 すると皆の返事を受けたエシャルネさんは、少しモジモジしながらそう言った。

 傭兵ギルドが危ないって・・・そんな事全然ないのに。何か誤解があるのかな?


『私はこの娘の事が良く解らなくなって来た・・・それと危ないという発言に、嫌な予感がするのは私だけだろうか。いや、流石に物語の様な典型的な展開は無いよな・・・無いよな?』

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