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第38話、逃げ

「んで、どうだグロリア、少しは見直して貰えたか?」


 ガンさんが光を消した『光剣』をくるくる手元で回しながら、楽し気に歩み戻ってくる。

 その様子に思わず、本当に思わず――――――全力で飛び退いてしまった。


『グロリア!?』

「ふぇっ!? ど、どうしたのグロリアちゃん」

「え・・・何で俺逃げられたの」

「・・・周囲に何かが近付いている、という訳ではなさそうですね」


 私の行動にガライドとキャスさんが驚きの声を上げ、ガンさんは困惑を目を向ける。

 リーディッドさんだけは敵が来たのかと周囲を見回していた。

 けれど危険が無い事を確認すると、二人と同じ様な困った目を私に向ける。


「どうかしましたか、グロリアさん。ガンの視線がいやらしかったとかですか?」

「え、そうなの? ガン、ちょとグロリアちゃんから離れてくれる? あ、私達からもね」

「冤罪だ!」


 ガンさんは何も悪くない。そう思っているけれど、上手く言葉が口から出ない。

 上手く自分で自分の事を動かせないでいると、ガライドがすぃっと近付いて来た。


『・・・グロリア。本当にどうした。一体何を恐れた。何を警戒した』

「おそ・・・れ・・・」

『ああ。心拍数の上がり方・・・いや、私はからはそう見えた』


 恐れている。そう、怖い。怖いと思ったんだ。多分そうだ。

 だってこんなにもアレに、彼の『光剣』に近付きたくないと思っているだから。

 そう理解すると、自分の行動にも納得出来た。あの光が、私は怖かったんだと。


「・・・そうか、怖かったんだ」


 今更になって自覚する。私は怖かったんだ。今の今までずっと。

 あの時の死の感覚をずっと怖がって、何も平気なんかじゃなかったんだ。

 主人が、あの光が、あの煌めきが、あの時の為す術の無い状況が。

 一瞬で戦う事が出来なくなった、何も抗えなかったあの自分が。


「・・・っ!」


 ギリッと歯を噛み締めて拳を握る。目の前の恐怖を睨んで、力を籠める。

 この怖さから目を逸らすな。逃げるな。私は闘って、勝って、生き残るんだろう。

 何時だってそうやって生きて来た。これからもそうやって生きる。そう、決めたのだから。

 勝つ為に下がるなら何も問題は無い。けれど怖くて逃げる為に下がるのは違う。


「グ、グロリア? どうした、本当に大丈夫か?」

「・・・大丈夫、です。もう、大丈夫、です」


 ・・・うん、もう大丈夫だ。もう解ったから。私はあれからずっと逃げていたんだと。

 自分の生き方は闘って勝つだけ。そう言っておきながら実際は逃げていたんだ。

 もう逃げない。逃げたら次は何も残らない。何故か、そんな気がする。

 取り敢えず深く息を吐いて、ガンさんに謝ろうと思い三人の下へ戻った。


「ごめん、なさい、ガンさん」

「あ、いや、別に良いんだが・・・何か俺やらかしたか?」

「いいえ。ガンさんは、何も。ただ私が、解ってなかった、だけです」

「・・・良く解らんが、詳しく聞いて良い事か?」

「はい」


 ガンさんさんの問いに頷き、あの時の事を語った。

 一度傭兵ギルドで語ったけれど、語っていない細かな内容を。

 私を斬ったあの光。私を斬ったあの主人。あの力の気配。


 どれが魔道具かは解らない。あの剣がそうだったのかもしれないし、別なのかもしれない。

 けれど確かにあの時ガンさんが体を光らせた様に、主人の体と剣筋も光っていた。


「そういう事か・・・魔道具で斬られたのか、グロリアは。そりゃ似た様な事が出来る魔道具持って近付かれりゃ警戒して当然か。悪いな、怖がらせちまったみたいで」

「問題、無い、です。もう、解りました、から」

「・・・解ったって、何が?」

「私が、逃げていた、事が、です。もう、逃げません。だからもう、平気、です」

「それは――――――いや、うん。そっか」


 私の答えにガンさんは何かを言おうとして、ぐっと呑み込む様子を見せた。

 そして優しく私の頭を撫でると、ふぅと溜息を吐いて後ろの二人に目を向ける。

 向けられたキャスさんとリーディッドさんは少し難しい顔をしていた。


「私はグロリアさんの生き方を否定する気は有りませんよ」

「・・・私は・・・ごめん、上手く、言えない。だから今は、黙っとく」


 リーディッドさんとキャスさんはそう言うと、彼と同じ様に私の頭を撫でる。

 その手がやけに優しくて、普段以上に優しい気配を漂わせていた。

 ただキャスさんだけは、少し悲しそうに見えたけれど。


 流石に解っている。私だってそこまで何も見えていない訳じゃない。

 キャスさんは私が戦って生きる事を、余り良いと思っていないんだろう。

 美味しい訳でもないのに魔獣を、ただ生きる為に魔獣を食らう事にも良い感情は無い。

 けれど否定はしないでくれる。私の生き方を認めてくれている。それだけで私は嬉しい。


『グロリア。私は・・・いや、私は君がどういう選択をしようと、これからも共にある』


 ガライドは少し悩む様に、けれど強く言い切ってくれた。

 なら私は何も問題ない。ガライドが一緒に居てくれるなら怖くはない。

 私は『暴食のグロリア』として、この魔道具で戦う闘士として生きていける。


「・・・ガンさん、次は、私が、やります。いい、ですか?」

「ん? ああ、解った。お手並み拝見と行こう。何時も通りやってくれ」

「何時も通り・・・解り、ました。ガライド」

『あー・・・まあ良いか。先のガンの実力を見た限り、奥まで行かなければ大丈夫だろう』


 ガライドに声をかけると、悩んだように呟きながら『マップ』を出した。

 けれどガライドの言う通りガンさんは強い。奥に行かなければ魔獣にやられる事は無い。

 なら私は言われた通り、普段通りに赤く光る点を見ながら近い順に狙いを決める。

 そして一番近い方向に体を向けて『何時も通り』全力で地面を蹴った。


「なっ!?」

「あ、グロリアちゃん!」

「ガンの馬鹿! 驚いてないで早く追いかけますよ!」


 三人の声を後ろに聞きながら、先ず一体目の魔獣の頭を殴り飛ばした。

 倒した魔獣を捕まえたまま次の魔獣へと飛び、二体目の魔獣も頭を殴り飛ばす。

 その二体を地面に置いて、更に地面を蹴って三体目に近付き殴り飛ばした。

 取り敢えず三体。一旦これを食べてから次に行こう。


『・・・やはり少し抑える様に言うべきだったか?』

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