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09 一組

「ミナー」


訓練場での授業を終えて校舎に戻ってきた所で、エマとハンナに遭遇した。


「お昼行こう…っと」

ミナの隣にいるフランツィスカを見て、二人は慌てて畏る。


「ミナの友人?」

「ええ…一緒に昼食を取る約束をしていまして」

「私もご一緒していいかしら」


「えっ」

「あ、あの…」


「そんなに畏まらなくていいわ。私、身分とか気にしないから」

貴族令嬢を目の前に強張る二人に、フランツィスカはそう言って笑顔を向けた。





「エマが土属性でハンナは風属性なのね」

四人は料理を取ると食堂の隅のテーブルに腰を下ろした。


「私が火でミナが水。四属性揃うわ」

フランツィスカは嬉しそうな声を上げた。

「女子四人で魔物討伐に行けるわね」


「…四属性が揃うと魔物討伐に行けるんですか」

「属性ごとに攻撃以外の役割があるのよ」

ハンナの問いにフランツィスカは答えた。


「火が先鋒、土が防御で風は支援、そして水が回復ね。魔術団は四属性での複数行動が基本なの。自分の役割をきちんと果たして互いに協力し合あえば、強くて数が多い魔物とも戦えるわ」

「フラン様は詳しいんですね」

「魔術団に入りたくて色々調べたもの」


「でも私達まだまともに魔法を扱えなくて…。一緒に行っても二人の足手まといになってしまいます」

「そんなすぐに行くわけじゃないから大丈夫よ。それに」

フランツィスカはミナを見た。

「攻撃はミナに任せておけば中級の魔物だったら余裕よ、ね?」


「そ…んな事は…」

「さっきの殿下との模擬戦凄かったじゃない。学生のやる内容じゃないって先生が引いていたわ」


「あれは…殿下が挑発したので…」

「あら、最初に挑発したのはミナの方に見えたけど」

「…う…あれは挑発じゃなくて…魔が差したというか…」

その時の事を思い出してミナは思わず手で顔を覆った。




午前の授業では、いきなり一対一の模擬戦を行った。

新入生とはいえ即戦力を求められる一組、各自既に得意な魔法を持っており、次々と戦っていく。

フランツィスカも強力な火魔法を操り男子に勝利していた。


そして何故かミナは、最後にアルフォンスと対戦する事になったのだ。



「ミナから攻撃していいよ。遠慮はいらないからね」


小説でのアルフォンスの能力は知っている。

魔術団員からも既に一目置かれているアルフォンスには、確かに遠慮など必要ないだろう。


(…この授業の目的は今の力を知る事だから…とりあえず撃ってみるか)


ミナは昨日、ライプニッツ先生が見たいと言っていた水球を作り出した。

それをアルフォンスへ向けて投げようとして…ふと昨日の先生や殿下の言葉を思い出した。


(幻…そうか)


ミナの瞳の奥が一瞬光を帯びた。


水球がアルフォンスを襲う。

アルフォンスが手のひらを掲げると炎が立ち上った。


炎が触れようとした瞬間、水球は突然その姿を消した。


「なっ」

動揺したアルフォンスの背後に突然現れた水球が大きく膨らむと、一瞬でアルフォンスを飲み込んだ。




水球の中が赤く光ると、大量の水飛沫となって弾け飛んだ。


「———へえ、やるな」


中から現れた…髪を濡らしたアルフォンスがミナを見据えた。



「何だ今の!」

「幻…?」


「…ばかな」


幻という高度な魔法を出したかと生徒達が騒めく中、ライプニッツ先生は呆然とした。


ミナの出した水球は幻ではなく本物だった。

だがミナはその表面に幻術をかけたのだ。


アルフォンスの炎が触れる直前、幻術に覆われた中の水球を瞬時に移動させ———アルフォンスに幻を襲わせた隙に背後から水球をぶつけたのだ。


一つの攻撃に水球、幻術、瞬間移動と三種類の魔法を込めるそのやり方は高い技術が必要で相当訓練しないと扱えない。

更にミナは、水球の威力を途中で変化させたのだ。

魔術師でも使えるものが限られる高度な魔法を入学したばかりの、しかも平民の少女が扱うとは。


(本当に…何者なんだ)


たとえ高位貴族の血を引いていたとしても、それだけであんな魔法が使えるようにはならないはずだ。

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