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【コミカライズ&書籍化】空の乙女と光の王子(旧題:私、悪役令嬢だったようです)  作者: 冬野月子


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70 二回目の実戦

戻りは行きとはルートを変えていく事になっていた。

その分岐の手前でアルフォンスが立ち止まった。


「殿下?」

「———大量の魔物の気配がする」

剣に手を掛けながらアルフォンスは言った。



「全員構え!」

一瞬騒ついた一同だったが、エドモントの声に即身構えた。

ミナも神経を周囲に集中させる。

———遠くからザワザワとした不快な気配が近づいてくるのを感じた。


「来るぞ!」

アルフォンスの声と共に木々が大きく揺れた。

それは前回の実戦で遭遇したのと同等くらいの大量の魔物だった。


「光と風!」

アルフォンスが剣を抜き金の光を放つと同時に風による広域魔法が放たれた。




「…へえ。相乗効果か」

感心したようにエーミールが呟いた。


広域魔法はその名の通り広い範囲に届くが個々への威力は弱くなる。

そこへ光魔法を重ねると強度とスピードが増すのだ。

これは唯一の光魔法の使い手であるアルフォンスありきの作戦だが、皆で幾つもの魔法の組み合わせを試している時に発見したのだ。



「リーダー!我々にも指示を」

魔物の大群を前にしても落ち着いて戦う生徒達の様子を見てブルーノがエドモントに声を掛けた。


「…防衛の支援を!火は攻撃へ!」

エドモントの言葉に魔術団員達がザッと動いた。



(わあ…やっぱり凄い)


さすがに魔術団員はスピードも、技術も生徒達を遥かに上回っている。

それでも生徒達の攻撃を邪魔せず、あくまでもサポートに回るそのプロ意識は感嘆するばかりだ。

見る間に魔物はその数を減らしていった。



「ミナ!」

魔術団員に気を取られていたミナのすぐ目の前に何かが飛び落ちる気配を感じた。


それは巨大な魔鼠だった。




「ひっ…」

喉の奥から悲鳴が漏れ、ミナは身体を強張らせた。

「ミナ!落ち着いて…!」

近くにいたフランツィスカが叫んだ。



(大丈夫…怖くない…)


ミナはマントの上から胸元を押さえた。

そこには朝、父親から渡されたアメジストのペンダントがかけられている。

家に代々伝わるもので、旅に出る時などに魔除けとして身につけるものなのだという。


実戦へ赴くミナを心配そうに見送った家族の顔を思い出す。

母親は泣きそうな顔をしていた。


———大丈夫。

もう私を邪魔だと思う家族はいない。

もうネズミは———怖くない。


胸元に当てた手が水色の光を帯びると、魔鼠へ向かって光の矢が放たれた。







「今日は皆よくやった。二回目として上出来だ」

森の外へ出るとライプニッツ先生が皆を見渡して言った。

「迎えの馬車が来るまでまだ時間があるから、それまで休憩していてくれ」


「ミナ」

フランツィスカが駆け寄ってきた。


「魔鼠倒せたわね!」

「…うん」

「気分悪くなったりしていない?」

「大丈夫」

心配そうな友人を安心させるように、ミナは笑顔を向けた。


巨大な魔鼠を倒した後も、数頭の魔鼠が出没したが難なく倒す事が出来た。

前回の時のように大量の魔鼠が出て来た場合はどうなるか正直分からないけれど…ネズミに対する恐怖心は減ったと思う。



「君は攻撃魔法も強いんだな」

ブルーノがミナに声を掛けた。

「水魔法は回復を最優先にするから攻撃力はあまり必要ないのだけれど」

「ミナの魔法は水魔法のそれとは少し違うからね」

エーミールが言った。


「あの水色の魔法か」

「殿下の光魔法同様、ミナにしか使えない魔法だから。今回の件が落ち着いたら調べさせて欲しいな」

「…はい…」


「ミナを実験台にしてもらいたくないな」

ムッとした顔のアルフォンスがやってきた。


「魔法にはまだ分からない事が多いですから。この国のためにも必要な事ですよ殿下」

「お前の場合は国のためというよりも個人的な興味だろう」

ブルーノは呆れたようにため息をついた。

「まったく、お前がアーベントロート家の後継にならなくて良かったよ。魔術団を私物化しかねないからな。———エドモント!」

そう言いながら、ブルーノは担任との話を終えたエドモントを呼んだ。


「どうだ、初めての司令役は」

「…緊張した」

「そうか。だが周りがしっかり見えていたし判断も冷静だった。初めてとは思えなかったぞ」


「…良かった」

エドモントはほっとしたようにその顔に笑みを浮かべた。


「魔術の技術もだいぶ上がったな。団長も喜んでいるぞ、入学してから熱心にやっていて、家に帰ってからもずっと勉強していると」

「…それでもまだ、兄上の成績には追いついていない」


「確かにエーミールの知識は凄いが、お前に必要なのは人の上に立つ力だ。兄と成績を比較する必要はない」

諭すようにそう言いながら、エドモントを見るブルーノの眼差しには彼への愛情が感じられ、二人の付き合いの長さを感じさせた。



「馬車が来たぞ」

ライプニッツ先生の声が響いた。

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