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【コミカライズ&書籍化】空の乙女と光の王子(旧題:私、悪役令嬢だったようです)  作者: 冬野月子


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51 予言

「そう、この本だわ」

アルフォンスの持ってきた本を手に取るとリゼは懐かしそうに目を細めた。


「やっぱり王宮の図書館だったのね」

「いや、兄上の書斎にあった」

アルフォンスは答えた。

「兄上に尋ねたらおそらくこの本だろうと」


先日リゼが言っていた、黒い女神の事が書かれていたという本が気になったアルフォンスがハルトヴィヒに尋ねると、しばらく考えてから一冊の本を出してきたのだ。



「綺麗な本ですね」

「読んでみる?」

金箔で装飾された、子供用とは思えない豪華な本をリゼから渡され、ミナはぱらぱらとめくってみた。

中身は確かに子供向けらしく、大きめの平易な文体で書かれている。


一枚の挿絵にミナの手が止まった。

剣を構え、光に包まれた青年が長い黒髪の女性と対峙している絵だった。


「これが…光の王子と黒の女神?」

「ええ。この絵だわ」

リゼが本を覗き込んだ。

「綺麗でしょう」

「確かに…」

頷くと、ミナは首を傾げた。


「…でも、どうして他の本には黒い女神の話は出てこないんでしょう」




ミナが教会に来て十日ほど経っていた。

教会では魔法を教わりながら、リゼの手伝いで教会にある文献の調査も行っているのだが、教会にある本にはどこにも黒い女神の事は書かれていなかったのだ。


「おそらく、王にしか伝えられない話なのだろう」

アルフォンスが言った。

「この本は王太子にのみ与えられる本だと聞いた」

「…どうしてそんな本を私が読んだのかしら」

「片付け忘れていたのを部屋に来たアンネリーゼ嬢が見つけて、読んでみたいとねだられ断れず渡したそうだ。だが読んだアンネリーゼ嬢があまりにも怖がって泣いてしまったので反省したと言っていた」


「…そんな事まで言わなくてもいいんじゃないかしら」

少し顔を赤らめると、リゼはアルフォンスに向いた。



「この本はお借りしてもよろしいのでしょうか」

「ああ、父上にも許可を得た。関係者以外に見せなければ良いと」

「ありがとうございます」

アルフォンスにお礼を言うとリゼはミナを見た。


「この本には他にも女神に関わる事が書かれているわ。教会にある本と比べてみましょう」

「はい」

「ミナは資料集めが上手いから助かるわ」

「…好きな作業なので」


前世から、ミナは本を読んだり何かを調べたりするのが好きだった。

向こうの世界ではインターネットという便利なものがあったが、誰もいない家に帰りたくない寂しさから図書館へもよく通っていた。

目に止まった本を手にし、興味を持てば関連した本を探していく。

あの頃の経験がここで生かされるとは。



「学園に行かれなくても忙しそうだな、ミナ」

アルフォンスが言った。

「はい…友人に会えないのは寂しいですが、フランやエドモント様が様子を見に来て下さいましたし」


「エドモント?」

アルフォンスは眉をひそめた。

「彼が来たのか」

「はい…昨日エーミール様と一緒にいらして、授業の事を教えてくれました」


アルフォンスのチームは回復役のミナがいないため、今は一組全員が一つのチームとして訓練をしているという。

それまでの五人から九人に増えた事で変わった事やエドモントが気づいた事などを色々と教えてくれたのだ。

同じ後衛という立場のエドモントの話は興味深く、とても為になった。



「———彼と話したのは授業の事だけか?」

どこか硬い響きを含んだ声でアルフォンスが尋ねた。


「はい」

「エドモント様は、前はお兄様の後ろに隠れている印象だったけれど、今はすっかり嫡男の顔になったわね」

リゼが言った。

「そうエーミール様に話したら、ミナのお陰だと言っていたわ」

「私…ですか?」

「ええ。ようやく次期当主としての自覚が出てきたのか将来の事を考えるような発言が出てきたんですって」

「…そうなんですか」

「学園での授業にもますます力が入っているし、家族も喜んでいるそうよ」


エドモントの事はフランツィスカも言っていた。

以前からも熱心だったが、最近は更に力が入っているようだと。


先日言っていたように、まずは一人前の魔術師となるために頑張っているのだろう。





「———そうか。彼も本気か」

小さく呟いて、息を吐くとアルフォンスは二人を見た。


「昨日といえば、ローゼリア・リーベルの件は聞いたか」

「自分を〝聖女〟だと言ったという事ですか」

リゼが答えた。

「学園でそう吹聴していたそうですね、魔物が溢れるこの国を自分が救うのだと」



リゼとミナがその話を聞いたのは今日、アルフォンスが来る少し前の事だった。

普段の彼女の言動から信じている生徒はいないという事だったが、教会がローゼリアの事を調査している事は学園にも伝えてあったため、報告があったのだ。


「魔女だったハイデマリーもよく言っていました。自分は特別な、選ばれた人間なのだと」

「…今日は更に聞き捨てならない事を言っていたらしい」

「聞き捨てならない?」


「———近い内に兄上が死ぬ、と」

アルフォンスはそう言った。

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