04 魔力テスト
「それじゃあ次の者だ」
平民グループの測定が始まった。
やはりというか、平民達は皆さっきのローゼリアと同じくらいか、それよりも少し強いくらいの光の量だ。
「最後!ミナ」
「…はい」
名前を呼ばれてミナは前へ出た。
これが最後だと言ったからか、皆の視線が集まっているのを感じる。
(目立ちたくないんだけどな…)
そう思いながら、ミナは水晶に手をかざした。
その瞬間、パシッと強い水色の光が弾けた。
「きゃっ」
思いがけない反応に咄嗟に水晶から手を離してしまう。
「何…?」
「今の色は…」
教師達が騒つく。
(え、何…?何かやらかした…?)
「え…あの子平民でしょう」
「ずいぶんと強い光だな」
教師達の騒つきが生徒達にも広がっていく。
「…あー、今日はこれで終わりだ。明日の朝はクラス分けの掲示を見てから各自の教室へ行くように。それじゃあ解散」
生徒達を見渡してそう言うと、教師はミナを見た。
「ミナ、お前は残れ」
「…はい」
ミナは頷いた。
「ミナ、大丈夫?」
「頑張ってね」
心配そうにしながらエマとハンナが立ち去って行くのを見送る。
後に残ったのは三人の教師とミナ、それに何故かアルフォンスがいた。
「殿下も…」
「彼女の魔力について調べるんだろう?私も興味があってね」
王子様スマイルでアルフォンスは言った。
(ええ…この人とは関わりたくないのに…)
入学早々認識されてしまった事にミナは嘆いた。
「…まあいいです。それじゃあミナ、いくつか確認したいんだけど」
教師はミナに向いた。
「はい」
「君は孤児院出身なんだね。両親の事は分かる?」
「はい…北部の、テールマンという町で行商の仕事をしていました」
ミナは答えた。
「五年前の疫病で二人とも死んで…それで孤児院に入りました」
疫病という言葉にアルフォンスがぴくりと反応した。
「そうか、それは大変だったな。それで自分が魔法が使えると気づいたのは?」
「ええと…三年くらい前です。孤児院の子が怪我した時に咄嗟に魔法で治して、それでです」
「ほう、回復魔法が使えるのか」
それまで黙っていた教師の一人が口を開いた。
「するとやはり水属性か」
「でもあの色は初めて見るわ」
もう一人の女性の教師が答える。
「色…?」
「ベーレンドルフ先生、水晶に手をかざして下さい」
主に話していた教師が回復魔法に反応した教師に言った。
ベーレンドルフ先生が水晶に手をかざすと、青くて強い光が放たれた。
「これが水属性の色、ミナの色よりずっと濃いよね」
水晶を示しながら教師は言った。
「回復魔法を使えるのは水属性だけだ。だからミナも水属性なんだろうけれど…それにしては色が薄すぎる」
「これまで彼女のような色を持った者は?」
アルフォンスが口を開いた。
「いや…初めて見ますね」
「魔力の強さと色の関係はあるのか」
「そういう話は聞いた事がありませんね。ミナ、もう一度やってくれるかい」
「…はい」
ミナは恐る恐る水晶に手をかざした。
先ほどと同じように水色の強い光が放たれる。
「ほらミナ、君の色は明らかに薄いだろう」
「はい…」
「魔力量はとても多いのだが」
「…そうですか…」
「さっき回復魔法を使ったと言ったね。攻撃魔法を使った事は?」
「…あります」
「ほう、見せてもらっていいかな」
教師が手のひらを上に向けると、そこに火の玉が現れた。
「これを消せる?」
高く浮き上がった火の玉は、人の頭よりも大きくなった。
「ライプニッツ先生、それは…」
「失敗してもいいからやってみて」
制しようとした女性教師の声を無視すると、ライプニッツ先生はミナを見た。
「…はい」
ミナは火の玉を見上げた。
(熱くて…本物に見えるけど)
あれは幻だ、ミナはそう判断した。
本物の火球ならば水球をぶつければ消滅できる。
だけど幻の場合は…
ミナの右手が光ると水色の光が放たれた。
光は火球を覆い尽くすと、火球と共に消えていった。
「え?」
「は?」
「…こりゃすごいや」
(え?私また何かやらかした?!)
…今のはそう難しい魔法ではないはずなのだが。
呆然とした様子の教師陣とアルフォンスにミナは動揺した。