22 兄と妹
目を開けると寮の天井が見えた。
もう朝なのだろう、カーテンから明るい光が差し込んでいる。
「…あ…れ…?」
ミナは瞳を瞬かせた。
「私…いつ帰って…?」
記憶がない。
確か森で魔物の大群と戦った後、魔鼠の死骸を見せられて…
「あ…っ」
気を失うまでの事を思い出しミナは慌てて飛び起きようとしたが、途端に強い目眩を覚えた。
心臓がばくばくする。
「ど…うしよう」
魔鼠の大群にパニックを起こしただけでなく、死骸を見てまた混乱して意識を失うなんて。
魔術師として———失格なのではないだろうか。
(退学…まではいかなくても、下のクラスに移動するよう言われたら…どうしよう)
あんな小さな魔鼠に怯える魔術師などいないだろう。
落ち込み、枕に顔を埋めているとドアをノックする音が聞こえた。
「…はい」
「ミナっ!」
バタン!とドアが開いてエマとハンナが飛び込んできた。
「良かった…」
「痛いところない?大丈夫?」
「うん…大丈夫…」
心配そうな顔で自分を覗き込む友人達に、ミナは笑顔を向けた。
「ありがとう…心配してくれて」
「先生が運んできたんだよ」
「あ、着替えは私達がやったから大丈夫よ」
「…ありがとう…」
「無事で良かった…」
エマがミナにぎゅっと抱きついた。
「ミナがいくら強くても、魔物は怖いし危ないもん」
「すごく沢山でたんでしょ」
「うん…」
「頑張ったね、ミナ」
ハンナにも抱きしめられ、ミナは鼻の奥がツンとするのを感じた。
その時、誰のものとも分からないお腹の音が大きく響いた。
「———」
三人は顔を見合わせ…一斉に笑い出した。
「朝ごはん食べよう」
「そうだ、遅れちゃう」
「ミナは今日はお休みしてもいいって先生言ってたよ」
「———ううん、行くわ」
首を振ると、ミナはベッドから起き上がった。