13 一組
「それじゃあパーティ分けだが、魔力の量がより多いグループと少ないグループとで分けた。なるべく差が少ない方がいいからな」
翌日、早速パーティ分けが発表された。
水属性のミナは火属性のアルフォンス、土属性のエドモントと一緒になった。
残りの風属性は双子のバルドゥルとエルンストのリヒテンベルガー兄弟だ。
「目が緑色が兄のバルドゥル、青が弟のエルンストです」
そう自己紹介した双子は目の色以外はそっくりだった。
小説ではミナの代わりにヒロインがこのパーティに入っており、ヴィルヘルミーナはもう一つのパーティだった。
「…ちっ、最悪だな」
ミナを横目に見てエドモントは舌打ちした。
「エドモント様、よろしくお願いいたします」
ミナはエドモントの前に立つと彼を見上げてそう言った。
「———俺はよろしくするつもりはない」
「魔術団に入って平民の魔術師と組んでもそう言うのですか?」
エドモントから目を逸らさずミナは言った。
「それと、文句を言うならもっと強くなってからにして下さい。昨日の模擬戦、エドモント様は無駄な動きが多かったですから」
「何だと…」
「ミナの言う通りだ」
ライプニッツ先生がやってきた。
「エドモント、お前は魔力は十分だが技術が追いついていない。訓練が足りないんだろう」
先生はそう言うと生徒達を見渡した。
「昨日も言ったが、ともかく身体に覚え込ませること、これが大切だ。技を使うのにいちいち考えたり魔物の攻撃への反応が遅れたりしたら負けるからな。息をするように魔法を使いこなすためにはともかく訓練する事だ。いいな」
昨日は午前に実習を行ったが授業は基本、午前が座学、午後が実習になるという。
今日の座学はパーティを組む事の意義、補助魔法の重要性などが中心だ。
一組の生徒は皆魔術団へ入ることが前提となっているため、皆真剣に聞いている。
ミナも聞き漏らさないようノートを取りながら熱心に聞いていた。
シスターは魔法の基本や技術については教えてくれたが、それらを学んだのは魔物が増える前だったのでパーティでの戦い方や最近の知識についてはあまり詳しくなかったのだ。
「ミナと同じパーティになれなくて残念だわ」
食堂へと向かいながらフランツィスカが言った。
「そうですね…」
「ライバルが殿下なのは厳しいわ。殿下は既に魔術団の訓練にも参加しているそうだし」
「そうなんですか」
「あまりにも熱心すぎて逆に不安だって兄が言っていたわ」
「不安?」
「お兄様のハルトヴィヒ殿下が前線で戦っているのに、アルフォンス殿下まで魔術団に入ったら万が一の時に困るんですって」
「…そうなんですね…」
(ハルトヴィヒ殿下…何か大事な事があったと思うんだけど…)
小説の中でハルトヴィヒに関わる大きな事件があったはずだ。
だがミナの頭の中で小説のストーリーはぼんやりとしていて、小説と同じようなシーンになるとその事を思い出す、という事が多い。
(小説と全く同じという訳ではないから…?)
本当に、この世界はどこまで小説と同じなのだろう。
それを考えても仕方ないとは思うのだけれど…どうしても気になってしまう。
誰かに相談してみたいけれど、ここがミナが前世で読んだ小説の世界だなどと他の人に言えるはずもない。
ローゼリアは同じ転生者のようだけれど…彼女にミナも転生者、しかも悪役令嬢などと知られたら面倒な事になるだろう。
(ともかく今は、一人前の魔術師となれるよう頑張ろう)
午後は属性毎に分かれての補助魔法の訓練だったが、朝言われた事を気にしたのか、エドモントは黙々と壁の作り方を練習していた。