表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
20/27

チャプター8 アーチ・エンジェル #1

人物紹介

リベルタ カウボーイスタイルの10歳の少女 凄腕のガンマン 


グリップ君 リベルタの使用するサミュエル社製拳銃に搭載されている支援AI カタカナ混じりに喋るのはこいつ


ZERO-NEMO リベルタに仲間を助けられ同行するサイボーグニンジャ 

サワー 老スナイパー サミュエル社のスタッフの一人

コードウェル サミュエル社の現社長 ダメな青年


 シェルターに隠れていた4人は食い入るようにモニターを見つめた。

 今度はなんだ?どうしてタレットはあれを撃ち落さない?一同に浮かんだ疑問はそんな所だ。


「アりゃ一人乗りノドロップポッドだナ」


 ドロップポッドとは大気圏外から地上に降下する時などに使う装置である。一人乗りの小型な物を選んだのは、何らかの理由で目立たないように着陸したかったのだろう。


「それは判ってるけど、何者? 一人で何しにきたの?」


 ポッドのハッチが開き、中から人影が現れた。大型のハチを思わせる、重厚だが女性的フォルムのサイバースーツを着ている。

 その人物は地表に降り立つとしばらくの間、周囲を見渡していた。安全確認でもしているのだろう。

 やがて確認を終えたのか立ち止ると、スーツの前半分が車のウイングドアの様に開き、中から赤髪の女性が姿を現した。


「お、おい、あれは……!」

 コードウェルが女を見るや慌てた様子で端末を操作し、モニターに女の顔をアップにする。

「知り合いなのか?」とZERO-NEMO。

「な、なんちゅう事じゃぁ!」

 サワーもその人物を知っているらしい、大きな声を上げ狼狽していた。


「で、誰なのよ?」

「エリーだ…… おれの妹の」



 シェルターに新たな人物が加わった。

 赤髪、赤い眼、服やアクセサリーもそれに合わせて赤を基調としている。美しく、それでいて野性味的な魅力のある女性だ。


「兄さん!」「エリー!」


 エリーと呼ばれた女とコードウェルが互いに抱きしめあう。どうやら兄妹の感動の再会というやつらしい。

 コードウェルとひとしきり抱きしめあった後は、今度はサワーとも抱きしめあった。


「エリー……大きくなった、しかもこんなに美人に!」

「兄さん貴方も ……なんていうか、少しダイエットしたら?」

「まさかもう一度会えるなんてのぉ 最後に見た時はまだこんなに小さくて……」


「あーええと…… あたしたちにも紹介してもらえない?」


 手持ち無沙汰なリベルタは、ばつが悪そうに話しかけた。


「ああ、ごめんなさい」

「すまないリベルタ あー、彼女はエリーだ エリー、この娘は……」

「ドレッドホークの娘のリベルタでしょう? 知ってるわ、マルティニの星で大暴れしたって、有名人よ」

「そりゃどうも」

「向こうのニンジャは……あー、ええと……」

「ZERO-NEMOだ」

「ああそう、ZERO-NEMOな! それで、エリーはもう十年も前にその……」

「家出したの」「そうだ」

「それでどうしてまた戻ったの?」

「長い話になるわ……」


 エリーは長い睫を伏せ、壁にもたれかかって話し出した。



 エリーは幼い頃から不思議な力を持っていた。

 彼女の触れた機械が急に動かなくなり、手を離すとまた動き出すという事が常にあった。

 逆に壊れていたはずの装置が突如作動したり、さらには近くの建物が停電したり、などという不可思議な現象が頻発するにつれ、幼いエリーは塞ぎこむようになっていったのだった。

 周囲や父親はそんなエリーを誰とも分け隔てなく扱ったが、等の本人ばかりがそれを気に病んでいたのだった。

 そしてある日、エリーは自分がなんなのかを確かめる、といった内容の手紙を残して家を出てしまった。まだ幼い頃だ。

 その後も何度か連絡はあったが、ここまでがエリーとコードウェルが共に過ごした最後の記憶だ。



「それから私はいろいろあって、エンディミュオン社に入ったの そこでアーチファッソルの研究をしていたわ」

「エンディミュオンに? あんな大企業に…… マジかよ優秀だなエリー」

「ええ、でもそのせいで父の葬儀にも行けなかった…… 許して兄さん」

「いいんだエリー 待てよ、じゃぁ今はどうして?」

「順番に説明するわ ええと、御伽噺にアーチと言われる古代人が出てくるわよね? 聞いたことある?」

「うん、知ってる」「うむ、なんでも強大な文明を持っていたそうじゃな」「ワタシの祖先はアーチは実在すると言っていた。」「……知らないの俺だけ? ていうかなんで急にそんな話?」


「そこのニンジャさんの言う通り、実在するわ 今の私の技術の基礎、デジタル転送装置や組成機(コンパイラー)も全て彼らが生んだ技術 あと、実際に幾つかの存在の証拠は、今までも見つかっていたけど、私はもっと確実な証拠をつかんだの」

「確実な証拠? それはなんだエリー?」

「東地区にアーチファッソルの廃坑があるの知ってるわね兄さん? よく二人で探検に行ったわね」

「ああ、しょっちゅうミッキーに見つかって怒られてたな あそこに何が?」

()()()という言葉には偉大なる、という意味があるの」

「それで?」

「偉大なる種族、アーチのかつての遺跡は今までも何度か見つかっている それも全てアーチファッソルの鉱山の周辺で」


「ほう、つまり偉大なる祖先の遺跡がそこにあると?」とZERO-NEMO。


「そうよ、遺跡というよりは、かつての都市と言ったほうがいいわね かつて来たりし人達の都市がそこにある事を、私は突き止めたの そこに眠るアーチの技術の価値は計り知れないわ もしかしたら世界を変えてしまうかもしれない」


「おいおい待ってくれエリー! ちょっと混乱してる 一体どうなってるんだ? それとこの状況とどう関係する!?」


「簡単に言うわ その情報がどこかからダレルに漏れたの もしかしたら世界を滅ぼしてしまうかもしれないモノを あのダレル社が狙っているの OK?」

「なんてこった」


「それであいつらはここを襲ったのか? マルティニにはどうしてだ?」

「おそらく目くらましの陽動よ 情報が漏れたってことはじきに他の企業も嗅ぎつけるわ その前に先手を打ったのよ」

「やれやれ、なんちゅう奴らじゃ 頭がおかしいとは思っておったがここまでとはのう」


「だけど狡猾だわ やつらのボスは狂人だけどバカじゃない そしてそれが何であれ、奴らには渡せないわ だから私がここに来たの エンデュミオンは退社してきたわ」

「退社してきたって? なんでそんな…… あそこに居れば将来安泰だろ!?」

「その将来のためよ 狂人の手に、私たちの未来を委ねる事は出来ない アーチの遺跡は封印されるべきなのよ!」


 エリ―の剣幕にコードウェルは半歩たじろいだ。アーチの遺跡の話をしている時の彼女は明らかに興奮していた。


「ごめん兄さん…… でもこれはとても大事な事なの 絶対に、あいつらに好きにさせる訳にはいかないのよ、だから協力して」

「まってよ、エンデュミオンはそれを知っててダレル社をほっといてるわけ? エンデュミオンならダレルなんて簡単にやっつけられるでしょ?」

「ええ、ダレル社の横暴は許されない事だけど、エンデュミオンの様な大きな企業が動くには、どうしても時間がかかるのよ」

「銀河企業間協定という奴だな エンデュミオンは主席だ 奴らダレルとは違うというわけだ」とZERO-NEMO


 それからエリーは大きくため息をつき、部屋の中央へと歩き出した。

 その場に居た者たちは皆、ただ成り行きを見守った。


「もう一つ、言っておかないといけない事があるの…… 私の力の事」

「力?」

「ええ、兄さんが一番判っているでしょう? 私が不思議な力を使えるって」

「…… もしやそれもアーチとかいうのに関わりが?」

「そうよ 私にはアーチの力が宿っているの」


 女は片手をモニターへかざし、何かしら力を込めるような動作をする。女の瞳が赤く揺らいだかと思うと突然モニターの電源が落ちた。

 さらに今度は、女の体から球状の光る領域が現れ、それが周囲を包んだかと思うと、部屋中の電気が消えシェルターの中が真っ暗になってしまう。

「ちょっ、何っ!? どうなってんの!?」

「お、おい停電か?」


 暗い部屋の中央で、女の体を覆う赤いベールのような光が浮かぶ。女が両手を預言者のごとく広げると、そのまま空中に浮かび上がった。

 暗黒の中で赤く輝く女の姿。それは妖艶で、そしてとても神秘的な光景だ。


「すごい! どうなってるのこれ!?」

「こいつぁたまげたのう! まさかエリーがサイコパスとはのう!」

「それを言うならサイキックだサワー! エリーを頭おかしい見たいに言うな!」

「ナンだこりゃア! 俺のセンサーがおかシくなっちマったのか? 何の浮力モ無いノに浮いてるゾ!?」


 エリーは少し顔をしかめ、そして指を鳴らすと電気が元通りになり、彼女もまた地に足をつけた。

「この力の研究をしていて、アーチにたどり着いたのよ おそらく、アーチ達はこういう力があったのよ」

「待てよ、俺たちは兄妹だろ? なんでお前だけ……」

「先祖帰りって事ね 私達人類のの中にはアーチの遺伝子が含まれているのよ それが極稀に強く出る人がいるの」


「極稀ってどのくらい?」

「今のところの研究だとそうね、1000億人に一人くらいかしら 私を含めてほんの数人しか見つかっていないわ」

「スごイな! つまりアーチはアーチファッソルを操れルのか!」

「さっきからそれってAIが喋ってるの?」

「そうだよ、あたしの銃に付いてるグリップ君! サワーじいちゃんが造ってくれたんだよね」

「へぇ……妙な奴ね まぁいいわ 私はこの力を持つ人の事をアーチ・エンジェルと呼んでいるわ」

「アーチ・エンジェル…… ねぇお姉さん、それって自分で付けたの? 恥ずかしくない?」

「いいえ」 エリーはピシャリと答えた。

「そう、強いんだね」


「それで」部屋の隅で壁にもたれて立っていたZERO-NEMOが口を開く。正確には外部スピーカーをだ。

「それで、ワタシ達にそんな秘密を明かしたということは、巻き込むつもりだなエンジェルレディ」

「ご明察ね 人手が欲しいの 少数精鋭でダレル社と戦える人がね」

「その廃鉱にはもうダレルの手が?」

「当然、それが彼らの本命だもの あいつらを何とかしないと、私たちだけじゃなくて世界中が危険よ というわけで貴方たち二人を雇いたいの もちろんそれなりの報酬はだすわ、退職金もらったの」


 ZERO-NEMOとリベルタが顔を見合わせる。

「乗った」二人は同時に同じ応えを出した。




「ああそうだ、一つ条件があるエンジェルレディ」

「なにかしらニンジャさん?」

「ワタシの周りであの力を使わないでくれ」

「あぁ…… ご自慢のスーツが動かなくなっちゃうものね ごめんなさい」

そう、彼女がその力を使い、みながそれに感嘆していた時の事。スーツのエネルギー源を奪われたZERO-NEMOは、喋ることも出来ず人知れず混乱していたのであった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ