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異世界に生まれて  作者: ガラス片
4/4

重い話になります。


 変わらないこの日々が、好きだ。


 マリーは俺を我が子のように可愛がってくれる。両親に見放されているから、俺は貴族らしい生活なんてできなかったけど。マリーのおかげで、毎日幸せに過ごせている。


 そして、俺がこの世界で生まれて、三年がたったとき。



 唐突に、日常は破壊された。


◇◇


 おはよう、と挨拶をする。

 マリーと沢山話しをして、いっぱい笑って。


 そんなある日、いつもはマリーしか入ってこない扉から、父親が入ってきた。

 もちろん警戒したけど、まだどこか甘かったのかな。ついてこい、と言われて、のこのこついていってしまったんだ。



 その後のことは、どこか他人事のようだけど。


 俺は地下牢らしき場所に幽閉されて。


 拷問された。


 何故か、なんてよくわからなかった。

 それまで一切関わって来なかったし、特に理由がある訳でもなかった。

 強いて言うなら、機嫌が悪かったから。仕事が上手くいかず、腹立たしかったから、かもしれない。


 一通りの拷問は受けたさ。

 爪を剥がされる、鞭で打たれる。冷水をかけられる。火で焼かれる。殴られる、蹴られる。

 死なない程度に、じわじわと苦しめる、そんなやり方で。


 痛かったよ。苦しかったし、憎かったし、寒くて、寂しくて、どうしようもなかった。

 でも、何よりも堪えたのが、マリーに会えなかったこと。


 その後のことを考えると、もう二度とマリーと顔を合わせなかった方が、幸せだったのかもしれない。



 拷問を受け続けて、精神が不安定になっていた時。マリーが、地下牢にやって来た。来て、しまった。

 彼女は、ひたすらに俺に謝った。助けられなくてごめんなさい、痛かったでしょう、苦しかったでしょう。今、ここから出しますからね。私と一緒に逃げましょう。と、そう言ってくれた。

 嬉しかったけど、何よりも、ここにいてはマリーが危ないから、逃げてって言った。

 奴等に気づかれないように、できるだけ小声で、でもしっかりマリーに伝わってくれるように。


 しかし、無情にも、地下牢への扉は開いてしまった。奴が、来てしまった。




 ◇◇




 マリー。マリー。

 どうか、どうか返事をして。

 お願いだから。

 お願いだから、返事をして。


 マリー。マリー。


 喉が張り裂けそうになっても、呼び続けた。


 マリー。マリー。


 まりー。



 まりぃ。




 ま…りぃ…、ま、






 り、




 まり、、ぃ、



 いくら、呼んでも。泣いて、哭いて、叫んでも。

 マリーは、返事を、してくれなかった。

 



 あぁ、あ、ぁ。


 これが、これが、報いだと言うのか。

 この世に生まれてきた、忌み子への、罰だっていうのか。


 それなら、それなら。

 傷つくのは、痛いのは、苦しいのは、俺だけで良かったのに。

 どうして、ドウシテ。

 マリーが、マリーが。


 傷つかなければならなかった。苦しまなければならなかった。



 死ななければ、ならなかった。


 なぜ、マリーが。

 性奴隷のように、扱われなければ、ならなかった。鞭打たれなければならなかったんだ。

 指先から、削がれなければ、ならなかったんだよ。


 あぁ神さま。あなたというひとは。なぜ、何故マリーを苦しめた。どうして、どうして?






 あ、あ、もしかし、て。




 俺が、おれが、いたから?


 私と、一緒にいたから?






 あ、あ。わるい、のは。

 マリーが、きずつかなきゃならなかったのは、







 ……………わたしの、せい、なんだ。



 「……………………………こ、っ、、ほ、。」


 あ、まりぃ。ま、りぃ。


 「お、嬢さ、………ぼ、ちゃ、、


  あ、ぁ、




  わ、たしは。

  


  自分、で     ここ、に」


 まりーの、こえ。まりー、マリー。



 ―貴方のせいではありません、だって、だって、私めは。


 「愛、   して、


  い ま、、す。





  あい、  

 


  して  いま、 す









  ぁ、わた、しの」


 ―わたしの、かわいいこ。わたしの、こども。

  あいしています、あいしているわ。

  わたしの、わたしの、かわいいこ。




 そういって、マリーは、




 亡くなった。





 ぁ、あぁ、ああ。



 マリー。マリー。


 私、も、おれも。




 あなたが、だいすき。




 あいしています。


 あいして、います。




 マリー。マリー。



 わたしの、おれの、おかあさん。





 ありが、とう。ありがとう。


 愛してくれて、ありがとう。




 ありがとう、ごさいました――――――――。

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