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帰省

作者: 宮居 萊梛

蝶が窓辺に止まっていた。


少し窓を開けていて、窓の近くには良い香りのする花が置いてあったから、それにつられて来たんだろう。

青色が綺麗な蝶だった。


朝夕は涼しさを感じられるようになった8月の終わりの頃だった。

もうすぐ夏も終わりか、なんて思いながら外に出たら、お昼はまだまだ暑くて、まだ夏は終わらないんだな、なんて思った日だった。


その日は実家に帰ろうとしていた日で、いつもの土曜日より早く起きて出かけたのだ。

バスに乗って30分、電車に乗って1時間くらい。

田舎の中ではそこそこ栄えてると言っても良いかなって思えるこの町は独立して都会の喧騒に紛れる日々を送っているボクにとって特別な場所となった。



それにここには、兄貴も居るし。



12年前に事故で亡くなった彼。

近所の仲良しグループの中で最年長の兄貴って感じの人だった。

トラックに轢かれたんだ。

信号無視のトラックに。

遅い時間じゃなかった。まだまだ明るかったし、見通しも良かったし、周りに人もいた。

あそこまで競走な!って言って駄菓子屋まで走り出そうとした時だった。

歩行者信号が青に変わった瞬間だった。

今でも覚えてる。忘れるわけがない。


目の前で、好きだった人が殺されたんだ……



泣きじゃくったし、しばらく学校も休んだ。

親はなにも言わなかった。

兄貴の親も何も言ってこなかった。

葬式には参加した気がするけど、これはちゃんと覚えてなくて。

骨の1部を貰って、大好きだった川に流した。彼がそれを言っていたから。

何度か話していたから。

骨になったら、川に流して欲しい、なんて。

12年前、ボクらはまだ小学生で。

なんでそんなこと言うんだろう、なんて思ってたけど、言われた通りにした。


だからボクはこの時期、この日、ここに来る。


今は青々とした歯が繁る、桜の木がある川の近く。

彼の骨を流した場所。

彼のお気に入りだった場所。

たくさんの話をしたこの場所で。

ボクは彼との思い出に浸る。


殆ど人の通ることないこの場所で、彼と会話するように独り言を呟く。

近況報告とかではないけれど、ほら、墓の前で故人に話しかけるみたいな、そんな感じで。

川に流した日のことに想いを馳せる。


今でも時々思う。

彼が生きてたらどうなっていただろう。

どんな姿になって、性格になって、どんな関係でボクらは日々を送っていたのだろう。

彼が生きていたら、

今のボクを見てどう思うだろう……?

失望されるかな、こんなに、死にたい、なんて思ってたら。

生きてたくない、逃げたくて仕方ない、なんて。

それでもって勇気は出なくて、川に飛びことも出来なくて、臆病なボクを見て、彼はなんて言うかな。なんて。


陽が落ちて来て涼しくなった。

この辺は街灯が少ないから、暗くなる前に帰らなくちゃ。

また来るよ。迷惑かもしれないけどって最後に言って。笑って。川に向かって手を振ってその場所を離れる。


またこことは少しお別れ。

桜が咲く季節には来るのだけど、あとはこの日くらいしか来ないようにしてるから、また1年後くらいになってしまう。


いつだって彼のことを忘れたことはないけれど、ずっと想われてたら気持ち悪いって言うかな、なんて思ったりもして。



小さく好きだよって呟いて。

また死ねないボクは前を向く。


スマホの懐中電灯を照らしながら家を目指す。

あぁ、そう言えば昼間の蝶はどこに行ったんだろうなんて思いながら家の窓の脇を通るとライトが何かを照らした。




蝶が、道端に落ちていた。

書きたい2行があっただけの駄文です……

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