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5 記憶の果て
「そうだった。」 私はぼんやり月を見上げる。
「そうだった。」 俺はぼんやり月を見上げる。
「季節は夏。今夜と同じような心地よい風が吹きわたる夏の夜だった。」
太陽は今日もまぶし過ぎて、月の光が目に痛い。
月の光はまぶし過ぎるから、太陽はきっと私の目を焼くのだろう。
「あの日も」
「あの日も」
月の光は、こんなにも目に痛かったことを俺は今でも覚えている。
太陽の光は、こんなにも目に痛かったことを今でも私は覚えている。
「ああ」
「ああ」
泣きそうだ。