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1 プロローグ
お久しぶりです。今度の作品は既に完結していますのでご安心下さい。
「夏って良くないよね。つい窓開けたくなっちゃうから。」
「ああ、エアコン代浮かせたいもんな、俺も良くやるよ。」
そう返したのは、もう、遥か昔のこと。そう呟いた彼女の顔も思い出せなくなるくらい昔の話だ。なぜ今更、思い出したのかわからない。あれほど執着していた彼女のことを思い出さなくなってからどれほど経ったのかすら忘れてしまった今になって、なぜ。
まあ、きっとこれも夏の夜のせいなのだろう。
夏は良くない。
特に夏の夜、それも初夏のまだ大して暑くもないような、春が静かに去り、夏が大手を振って歩いてくるような季節と季節のはざまは、特に。