第五十七話 あの日見た月(前編)
~2100年7月15日 18:00 西郷家中庭~
昼間のハプニングから色々あって、もう疲れた…。とまぁこんな感じで時間は進み俺たち二人は夕ご飯の前のちょっとした散歩がてら無駄に広い庭を歩くことにした。
「いつ来てもホントに広いよなこの家も庭も、ついでに池まで…」
「そうかな?私はこれが普通だと思うけど…」
そうだった、こいつは根っからのお嬢様でこれが普通だと思ってるんだった…。
「ねぇねぇ貴君!」
「なんだよ」
「月だよ月!まん丸お月さま!」
確かに空には月が闇の中、その場所だけ昼間のように煌々と輝いていた。
「ねぇ貴君」
「ん?」
「覚えてるかな、あの日一緒に見た月の事」
あの日の月か…
「あぁ、覚えてるさ」
―――――
昔から月は道しるべとして、夜の明かりとして、男女の仲を比喩するものとして語り継がれ、親しまれてきた。あの文豪、夏目漱石が「I Love You」を「月がきれいですね」と言ったのは有名な話ではないだろうか。
―――――
~2097年 夏 西郷家~
―非常に強い台風24号は沖縄本島の南東50kmを毎時20kmの速さで北に進んでいます。予想進路図です…
今年の夏は暑い、そして台風が多い。30℃以上の猛暑日なんて日常茶飯事で35℃を超えることもとりわけ珍しくない。これもずっと言われ続けてきている地球温暖化の影響であろうか。
「台風強いわね…瓦飛ばされたりしないかしら」
「その点抜かりなく、しっかりと固定されていることを確認済みです」
「さすが近藤ね。私たちが心配することなんてないわ」
「ありがとうございます」
「もぉー!夏休みの思い出が無くなっちゃったよ!」
「奥様、優芽お嬢様がご機嫌斜めのようですが」
「いつもの事でしょう。放っておいたらそのうち治りますよ」
「畏まりました」
「ねぇ、貴君、何かしようよ~」
「何だよ優芽、そんなに暇なのかよ」
「そうだよ!暇だよ!だって台風で何にもできないんだから」
「確かにな…せっかく遊びに来たのに台風っていうのは残念だな」
「何かしようよー」
「何かするって言ったって何するんだよ」
「うっ…そう言われると何もないけど…」
「ではお二人でこの屋敷の中を探検するというのは如何でしょうか」
「近藤さん、探検って?」
「言葉の通りです。この屋敷は非常に大きく立派でお仕えする我々の誇りでもあります。探検してみると新しい発見があるかもしれませんよ」
「楽しそう…よし、じゃあ貴君、家の秘境の地を探す旅に出発だよ」
「おっ、おー…」




