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絶海学園  作者: 浜 タカシ
第一章 国立太平洋学園の潜伏者
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第三話 出会い

~2100年4月8日 23:00 NPOC統括学園長室~

大柄で近寄りがたい容姿をしている男が深刻な声で話し始めた。

「皆さん。こんな時間にお呼び立てして申し訳ない。だが事が事だけに一刻を争うことになる。既にご存知と思うが本日19:30頃各層環状線で全車両の自動運転安全装置が作動する事件が、またほぼ同時刻にC-payで決算できないという報告が多数寄せられた。」

こう淡々と話すこの男は国立太平洋学園統括学園長、西郷 駿であった。

「これについてシステム管理部のほうから報告いたします。自動運転装置、C-payなどNPOC内での生活に欠かせないシステムの突然停止が発生したため先ほどシステムの総チェックを行ったところ…」

「行ってどうしたんだ?」

「サイバー攻撃と思われる不正アクセスを確認しました」

統括学園長室がざわついた。

「そうか。それで対策は」

「はい。セキュリティーシステムをバージョンβに移行し、サイバー攻撃元の特定を急いでいます」

システム管理部長、東 時雄は終始険しい表情で報告を終えた。

「皆さん。今の報告を聞いての通り、雲行きが怪しくなってきた。革命国軍側のサイバー攻撃の可能性が高いでしょう。警戒を怠らないようにお願いします」

西郷はこれから起こる事態を想像し朝一に日本本島に報告に行くことを決めた。


~4月9日 6:00 US1 学生寮~

ピンポーン ピンポーン ピピピピピピピピンポーン

こんな朝早くから誰だ?時計を見ながら貴文は布団を後にした。

「はいはい。どちら様ですか?」

インターホンの画面越しに制服に身を包んだ女が見えた

「おはようございます。一ノ瀬 明衣てす。学校案内をしていただく約束てしたのて」

俺は寝起きで冴えない頭をフル回転させて昨日の、入学式の後のことを思い出した。


~4月8日 14:00 NPOC高等部職員室~

入学式早々職員室への呼び出しを食らった。俺何かしたか?まったく身に覚えがない。

そんなことを考えていると職員室についていた。

コンコン「失礼します。一年二組の山本ですが担任の宮本先生はいらっしゃいますか」

「おっ、来たか。山本入っていいぞ」

俺の担任は体育担当の宮本先生だ。まぁ、中等部時代から知っているのでやりやすいが。

宮本先生の机まで行くと、先生が

「お前に二つお願いしたいことがあるんだよ」と言い出した。

「お願い?」

「あぁ、一つはうちのクラスの学級委員やってくれ」

宮本先生は唐突に言い出した。まぁ、中等部でも三年間学級委員だったから仕方ないだろう。

「わかりました。で二つ目は?」

コンコン「失礼します。一年二組の一ノ瀬てす。宮本先生…」

「おっ、ちょうどいいところに来たな一ノ瀬入っていいぞ」

この子どこかで見たことある気がするなぁ。そんなことを思っていると

「山本、さっきの入学式で紹介があった転入生の一ノ瀬だ」

「一ノ瀬 明衣てす。よろしくおねがいします」

「山本 貴文です。よろしく」

名前を聞いて思い出した。さっきの入学式で紹介された政府推薦で転入してきた女だった。

「でなんだが山本。お前には明日の始業前に一ノ瀬に学生寮から高等部までの行き方と、高等部の校舎の案内をしてほしんだ。」

別に俺じゃなくてもクラスの女子にでも頼めばいいのに…なぜよりによって俺なんだ?

「山本、お前どうせ『なんで俺が』とか思ってるだろ。これが学級委員の初仕事だと思って案内してやってくれ」

「山本君お願いてきませんか?」

ここまで言われて案内しないほど俺もクズ男ではない。

「わかりました。じゃあ一ノ瀬さんだっけ?明日の六時俺の部屋のインターホン鳴らしてくれ」

「わかりました!」


~4月9日 6:10 US1 噴水公園~

というわけで昨日のやり取りを思い出した俺は急いで支度して一ノ瀬と駅に向かって歩き出した。

「山本君、朝早くから私のためにすみません。」

申し訳なさそうに一ノ瀬が言った。

「別にいいよ。約束忘れて寝てた俺も悪いし。あと呼び方、貴文でいいよ」

山本と名字で呼ばれるのが少ないからさっきから背中がむずがゆくて仕方なかった。

「じゃあ、貴文君。私のことも明衣って呼んてください」

笑みをこぼしながら明衣が言った。

「わかった。じゃあ、明衣。高等部までの行き方はなんとなくわかるか?」

「はい。昨日の夜地図を見てなんとなくは覚えました」

さすが政府推薦。優秀だ。

「じゃあ話は早いな、おっ、あれがこの層の駅だ」

見えてきたUS1駅を指さしながら俺は言った。


~4月9日 6:30 各層環状線US1駅~

「明衣、昨日腕時計もらったか?」

俺は自分の腕時計を見せながら明衣に聞いた。

「はい!これてすね」

「そうそれ。これを機械にかざすと支払いができるんだ。」

俺はこう言いながら改札機に腕を近づけた。ピッ、ピッ、あれ?

「貴文君どうしたんてすか?」

明衣が不思議そうに聞いてきた。

「いや、それが反応しないんだ」

「それは大変てす!駅員さんを呼びましょう」

明衣がそういった瞬間だった。バン。駅中の電気がすべて消えた。

「えっ?」

明衣が困惑している。

「構内のお客様にお知らせします。ただいま原因の究明をしておりますのでしばらくお持ちください。ご迷惑をおかけしております」

駅員が張った大きな声で客に呼び掛けていた。もうすぐ通学ラッシュの時間だ。それまでに復旧するだろうか?

「困りました。これては学校にいけません」

「そうだな…」

ウゥゥゥゥゥゥーーーン。けたたましい音でサイレンが鳴り響いた。

「非常事態。非常事態。NPOC内の全生徒・教職員に伝達します。こちらはシステム管理部です。ただいまサイバー攻撃によりNPOCの全システムがダウンしました。繰り返します全システムがダウンしました」

                                         第四話に続く


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