第三十八話 非常事態対策会議(後編)
~2100年7月14日 5:00 NPOC司令部個人執務室~
俺は何百万もの命を一瞬で奪えるボタンいわゆる核のボタンを手に入れたのだった…。
「このボタンを持つということはこの世界において絶対的な力を得るという事だ。私はお前がこれを持つにふさわしい人間だと評価しお前にこれを託すんだ。その自覚を持て。私からは以上だ」
父さんはそう言い残すと足早に執務室を後にした。俺はその間何もできずただ静かに閉まるドアを見つめることしかできなかった。
作戦開始まであと1時間…。
~5:30 NPOC SS層 NPOC小等部~
作戦開始まであと30分。俺は外の海風を感じたくてSS層に来ていた。外はまだ夜明け前で薄暗い。水平線の向こうにうっすらと太陽が見える。俺の足は小等部の裏庭に自然と向いていた。
目の前には俺にとって失敗の歴史の象徴である池が当時のまま広がっている。
「たsえてたっくn…」
どこからかそんな声がした気がする。あの日俺は小さな手をつかむことなくただ命が途絶えようとしているのを見ているだけだった。そんな自分を心底恨み、一つだけ幼心ながら誓った。
命に代えても優芽だけは守る
でも俺は守れなかった。また優芽の手を掴み損ねてしまった。この3か月間悔やんで悔やんで悔やみ続けた。俺には優芽を守る力も権力も何もない。俺は何も守れない…。
でもたくさんの人が俺にチャンスをくれた。「愛」とは何かを教えてくれた。本当に守りたい人がいるのなら何もかもぶち壊さないと守れない。
だからこそ俺は今回の作戦に俺の全てを賭ける。プライドも、友人も、家族も、命だって惜しまない。俺は池を前にしてあの頃誓った約束をもう一度心に叩き込んだ。
辺りは眩いほどの光に包まれた。新しい朝が始まったのだった…
~5:55 NPOC司令部非常事態対策本部~
「山本非常事態対策本部長が入られます」
いよいよ作戦が始まる。俺は作戦開始の命令を発し次第航空自衛隊NPOCIA基地に向かい作戦部隊と合流することになっている。
「山本非常事態対策本部長お疲れ様です」
俺は席に着いた。今回の作戦の司令部は防衛省や米国防総省をはじめ、日本国政府関係者もちろんNPOC司令部のメンバーを含めた大所帯だ。
「おはようございます。いよいよ作戦の開始。各部署気を引き締めてお願いします」
「各作戦部隊作戦準備完了しています」
「作戦開始まで180秒前」
「A隊B隊エンジンスタート」
会議室前方のモニターには現在のNPOCIAの様子が映し出された。いよいよ作戦が始まる。
「それでは『文月』を開始する。レーダー追跡は本学園UG3のレーダーを使用して行う」
「UG3レーダー室、了解」
そして運命の6時…「3.2.1…」
「『文月』開始!」
第三十九話に続く




