第三十六話 山本非常事態対策本部長
~2100年7月14日 3:45 NPOC司令部非常事態対策本部~
作戦開始まであと2時間15分。東の一件があったおかげでどこまで詰められるか分からない。でも…優芽を取り戻すために俺に迷っている時間はなかった。
「統括学園長、東が逮捕され非常事態対策本部長の席に空きができましたが…誰が代わりに…?本来は統括学園長が指揮をとられるはずですが…」
総務部総務課の西が確認するように問った。確かに非常事態対策本部長が不在のままこの会議やこの後の「文月」を行うのはリスクが高い。
「そうだな…確かに本来私がその役割に就くべきだ。それは私も重々承知しているよ。でもどうだろうか?皆はさっきの東の一件を最も近くで見てきたよな?だったら私よりも非常事態対策本部長にふさわしい者がいるよな?」
「と…統括学園長!た…確かに山本はすばらしい活躍をしました。く…悔しいですが今回は認めざるを得ません。ですが、山本は一般の生徒。それに統括学園長と同等の権限が与えられる非常事態対策本部長の任を任せるのはいかがなものかと」
岡田はここまでを途中途中詰まりながらも言った。こいつも優芽の親父さんの前ではちゃんと敬語使えるんだな…。
「まぁ確かに岡田君の言い分も分かる。きっとこの中にも彼と同じ意見を持っている者も少なからずいるだろう。でもどうだ?生徒だとか職員だとか今関係あるかな?私は統括学園長としても優芽の父親としても先ほどの貴文君のいとこと一言に胸打たれた。今回の作戦は人命がかかっている。だからきっと、きっと、救出対象者をどうしても助けたいという思いが強い司令官が付けば作戦の質も皆の意識も格段に向上すると私は思うが、岡田君どうだね?」
「た…確かにそうですが…」
優芽の親父さんに急に話を振られて流石の岡田でも返事に困っている様子だ。
「では決定だ。反論はこの西郷俊が国立太平洋学園統括学園長の権限を行使し、一切受け付けない」
優芽のお父さんはそう言うと席にドシっと座った。他のメンバーは困惑気味だ。
「で、ですが統括学園長。やはり組織の運営はとても難しいもの。彼にそれができるとは到底考えられません」
「そ…そうですね、確かに彼は素晴らしい人材であることは重々承知していますがやはり荷が重すぎるかと…」
確かにこの学園の非常事態対策本部長は東がその権限を乱用し統括学園長の座を狙っていたのから分かるように非常に重要な役職であり求められる責任も並大抵のものではない。皆俺の身やNPOCのことを案じて優芽の親父さんの考えを必死に止めようとしているんだろう…
「お…俺は小僧にやらせてもいいと思うぜ」
「お…岡田さん、あなたが一番反対していたじゃないですか。なぜ急に尻尾を返すんですか!」
「確かによ小僧には非常事態対策本部長の任は重過ぎると思う。でもどうだ?今回の救出対象者であるお嬢ちゃんのことをここにいる人間の中で一番に思ってるのは誰だ?小僧しかいねぇだろ!だったらこいつにやらせてみればいい。駄目なら俺が責任取ってやるよ」
「お…岡田…」
「ふん!まぁ気に食わねぇがな、山本貴文。俺にここまで言わせてたんだ。最後までいいもん見せてくれよ」
「ふっ…分かったよ」
「じゃあ決まりでいいようだな。山本貴文君、君に国立太平洋学園非常事態対策本部長を委任する」
「謹んでお受けします」
こうして山本非常事態対策本部長が誕生したのであった。
作戦開始まであと2時間…
第三十七話に続く




