第二十七話 明衣の理由
~2100年7月13日 NPOC司令部個人執務室~
「まぁ、おしゃべりはこのくらいにして…。一ノ瀬明衣。お前の動機を聞こうか」
貴文のドスの効いた低い声が私を身震いさせた。
「さっきも言ったてしょ?連合国や日本に復讐するためよ」
「なぜ復讐する必要があったんだ」
きっと嘘をついてもすぐばれてしまうのだろう。だったらいっそ本当のことを話してしまおう。私はなぜかそんな考えを持った。
「私、本当は日本人なの。ても革命国に拉致されて革命国空軍の兵隊にされた。最初は母や日本の人が助けに来てくれると思っていたわ。ても誰も来なかった…。だからよ!私を裏切った、私を見捨てた母や日本に復讐してやろうってそう思ったのよ!何が悪いの!」
「お前の気持ちはどうなんだ。本当の気持ちは…。」
貴文がじりじりと距離を詰めてくる。このままでは私の本当の気持ちを洗いざらいしゃべってしまうかもしれない。私は自分を守ることに必死になった。
「黙秘するわ」
「そうか…。残念だな。お前の口から話してもらいたかったのに」
貴文はそう言いながら手元の書類をめくりだした。
「お前のお母さん、お前がいなくなったことを知って病気で思うように動かない体を毎日毎日必死に動かして海岸に行っては『明衣―、明衣―返事をして』って叫んでたそうだぞ」
お母さんが…。嘘だ。そんなはずない…。
「毎日毎日体に鞭打ってお前を探しに行ったお母さんは最後の日も弱り切った体を必死に動かしてお前を探しに行こうとしたんだそうだ。親戚の人が行こうとするのを必死に止めてもお母さんはやめなかった。やめるどころかこう言ったそうだ…」
「やめて」
「なんだ?聞こえないぞ」
私は震える手を必死に隠しながら、でもあふれる涙を止められずに力いっぱい絶対に聞こえる声でもう一度言ってやった。
「やめて!」
「お前のそういうところだよ!本当のことをしらないくせに現実から目を背けるところが駄目なんだよ!」
「知らないわそんなの」
「こっちを向け!俺から目をそらすな」
私は肩をがっちりと掴まれ身動きが取れなくなった。目の前には目に涙をため、顔を真っ赤にした貴文の顔があった。
「お前の言い分だったらお母さんがどういう思いで最後までお前を探したか分かっていないだろ!いいか、お前のお母さんはな自分の事よりな病気で辛い自分の体の治療よりもな、愛娘の無事を願って毎日毎日体に鞭打って海岸にお前を探しに行ってたんだよ。どういう事かわかるか?お前には分からないだろうな。だって自分を守ることで必死だもんな!」
「やめて」
「いや止めない。だってそうだろ?現実から目をそらしてお母さんの本当の気持ちをわかろうともしてないじゃないか。いいかお前のお母さんが最後なんて言ったか教えてやろうか?『明衣、明衣、ごめんね…ごめんね…』って最後までお前の心配をしてたんだよ!最後の最後までお前のことを想って思って想いながら息を引きとったんだよ。そんなお母さんが私を裏切った?冗談じゃない!冗談じゃないんだよ!」
ぐうの音も出ないほど正論だった。私は何かを間違えていたんだ…。
「お母さんは私を見捨てたわけじゃなかったの…?」
「あぁ、最後までお前の無事を祈って祈って祈ってたんだよ」
あぁ、私はなんて馬鹿だったんだろ。
「ごめんねお母さん。ごめんね…ごめんね…ごめん…ごめん…ごめん…」
私は声がかれるまで泣き続けた。天国で見守ってくれているだろうお母さんにせめても謝りたくて「ごめんね」。そして伝えたくて「ありがとう」。
第二十八話に続く




