第二十一話 心
~2100年 7月12日 NPOC司令部 個人執務室~
「お前の正解を俺に見せてみろ」
父が放った言葉は俺の心に大きく響いた。俺は人を死んだ事にしてまで戦いに勝つ必要があるのか疑問に思った。でも確かに連合国も本気で軍事兵器開発を行わなければ革命国に敗戦を期し、たくさんの人間の人生を路頭に迷わすことになる。
「俺は…どうしたいんだ…」
俺にも自分の正解は分からない。自問自答が続き気づけば1週間以上が経っていた。
コンコン。「山本君いいかい?」
東の声だ。「どうぞ」
「急にすまないね。先ほどUG3のシステム管理課から連絡があったんだ。至急UG3に来いと。なにか進展があったみたいだ」
「そうか…」
「どうしたんだい?西郷さんを助けられるかもしれないのにどうしてそんな暗い顔をしているんだい」
「東あの時聞いたよな。俺が信じてきたものが全部崩れるかもしれないって。東は知ってたか、俺の父さんが生きてるってことを…」
「私は一応管理職だからね。NPOCの事はだいたい知っているよ。あのUG3のことを知っているのもこのNPOCでは数えるほどしかいないからね。やっぱり後悔しているかい」
俺は後悔しているのか、していないのか…。自分でも分からない。
「君の西郷さんに対する気持ちはそれほどの物だったのかい?あれだけ言っていたじゃないか。今度こそ西郷さんを守るって。私はすごいと思ったのに、あれほどまで人のことを想えるってことが…」
「優芽を助けたいって気持ちは変わらない。でも…」
「大切な人を守るのにでもってことがあるか!」
驚いた。いつも温厚な東が本気で怒っている。声を荒げ東はこう続けた。
「大切な人っていうのはな、たとえ自分の命がどうなろうと守りたいと思う人だろ!
でも今の君はどうだ、君のお父さんが生きていたことが分かったのは本当に信じられないことだろう。その気持ちは察するよ。でもそんなことで西郷さんをあきらめてしまおうとしている君には失望だ。『恋』や『愛』って漢字は君も知っているだろう?これに共通するものは何だ?」
『恋』や『愛』に共通するもの…
「『心』か…」
「そうだ『心』だ。感情は人間にしかない、喜怒哀楽もそうだが人を愛おしい、守りたいとう感情が芽生えるのは人間だけだ。残念だがその気持ちを逆手にとって相手の思いを踏みにじる輩もいる。だが君はどうだ?助けを待っている西郷さんの気持ちを君は踏みにじるのか?『恋』や『愛』の漢字に『心』が入っているのは互いが互いを思いやる、心が通じ合っているからじゃないのか?」
「俺は優芽を助け出したい、その気持ちは変わらないんだよ」
「だったらそれでいいじゃないか。そこまで守りたい、助けたいって思える人に誰もが巡り合えるわけではない。君は西郷さんと出会えて後悔してるのか」
優芽と出会って…。思えば俺のそばにはいつも優芽がいた、優芽の笑顔があった。父が死んで悲しかった時優芽はなにも聞かず何時間も俺の傍にただ座ってくれていた。ずっと一緒にいてくれた。俺はそんな日々が当たり前だとどこか思っていたのかもしれない。優芽はいつも俺を守ってくれていたんだな…。
「東、父さんに会いに行く」
「ははは…。やっといつもの目に戻ったね。それでこそ山本貴文だ。よし行こうか」
俺の答えを父さんにぶつけてやる。
第二十二話に続く




