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倉本保志の シュール・ポエム 

作者: 倉本保志

三島由紀夫の生まれ変わりを自負する 倉本保志が、新たな分野 シュールポエムに挑戦

現代社会、日常生活への新たな発見と喜び、逆に、理不尽さへの憤り そういったものは万人共通に、誰にでも存在すること・・・

それらをいかに、自分の真意を、まるごと 生のまま、言葉として表現できるのか、それが物書きとしての素質 そしてそれが、単なる自慰ではないのだと、自らが認識できる力 それも やはり、一つの才能であると思うのです。

倉本保志の シュール・ポエム 

その1

ドタドタと、土足で入り込む心の内に

あれこれと詮索して周りのものを

結局台無しにしてしまう

もうこのことに

幾分慣れはしたけれど

表に出さないシンの気持ちを

後ろの鏡が実直に映しだしている

怨恨の内の大きな炎に

焼かれ 身もだえるのは結局自分自身か

それならいっそ不完全な燃焼はせずに

サラサラとした

真白き灰燼になるがいい

一切の悔恨を残さぬまでに


その2 

干からびたミミズの干物

彼らはこの醜き死体になるまでの間に

いったい どれほどの

悶絶を 痙攣を 絶望を

そして僅かの希望を見据えていたのか

満月におびき出された土中より

いつしか変わる皮膚への感触

炎天下のもと

灼熱のアスファルトに変化するまでの間

僅かな朝霧を頼みの綱に

もう一度帰りたい

もう一度故郷へ

これは昔、わが故郷の土へと帰還できることを夢見て

南方の前線に進軍したミミズの亡骸と酷似している

彼らの尊厳を守るための最後の砦

その屍をを啄むカラスたちや 

アリ達も辺りには見えず

無残にも その躯は

文明の象徴の その だだっぴろい真中で

その黒ずんだ醜態をいつまでも晒している

 

その3

黒い蝶がまるで鳥のように

勢い豊かに

道路を横切る

猛スピードのトラックが

交差点に差し掛かり

黒い蝶と正面衝突

あっ と思いきや

黒い蝶は空気のシールドを上手く使って

向こうの庭木の裏へすり抜けていった

トラックのフロントガラスとの間隙を

ゆらりくらり とすり抜けるその様に

私は何故か あの剣豪

佐々木小次郎の幻影をみた


その4

白無垢の まるでインチキの

忍者のような

何とも目立つ格好の 白鷺よ

本物か

はたしてデコイか

田圃の大きく育った稲の中に

すうと顔を覗かせたまま

蛙か何かを

探しているのか

何とも長閑な

白昼の殺し屋よ

その性ゆえの 純白の

飛び立つ姿の

悲しき美しさよ


その5

この平和が このままずっと

永遠に続くことを信じ切っているうちに

この幸せの最中を

夢見心地にいるうちに

自らの この命が突然

何の前触れもなく 電池仕掛けのおもちゃのように

ぷつりと途切れてしまうことを

密かに望んでいる人は

やはり 少なくないのでは 

・・ないでしょうか

その6

憤怒に潜む

醜態 愚態 阿修羅の心

平常心をいくら穏やかに

永く静かに過ごせたとて

一体それに何の価値があろうか

脳のなかで何千万回

涅槃への解脱をイメージしたところで

娑婆の世における実際の苦境

咄嗟の悪意、瞬時の錯誤に生じる

殺意すら見え隠れする憤怒

ここから解脱することなしには

全くなんにも始まらないのです

本能の赴くままに貪り食らう

貪欲な蟷螂がそれと同時に感じる

密かな怯えの払拭

悟りなど、刹那のやせ我慢にしか 過ぎないのです


その7

やり場のない悪意に満ち満ちた閉塞が

その解放を 特異点を求めてふらふらと彷徨っている

偶然にもその場に

たまたま居合わせてしまったがための幼き犠牲者よ

この理不尽の連鎖に 狂気の沙汰に

人はまたやり場のない苛立ちと

塞ぎこむような絶望感に見舞われる

少しでもその現実とは違う要素が 何らかの要素が

唯の一つでも紛れ込んでいたならば

その純粋さは瞬く間に崩れ去り

その特異点は消滅したかも知れないのに

人の社会での 人による統制の難しさに

深く暗い気持ちをわれは禁じえない


倉本保志さん、小説を書く自分とポエムを書く自分、いったいどちらが本当のあなたですか?

(しばらく考えて)

そうですね、よくはわかりませんが、おそらくどちらも本当の倉本保志です。

人間はだれしも、異なった顔、二面性を 素顔の奥に隠して生きているのだと思います。

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