ワレニツヅケ その2
デュークは縮退炉の熱を上げながら、また重力波の声を放ちました。
|ヴォォヴォォォォォォン《ワレニツヅケ》!
その声はいまだ少年のそれでありながら、大変に強い力があったのです。
「か、勝手に命令しないでよ――!」
ナワリンはデュークの強い言葉に「旗艦でもあるまいし――」と反発するのですが、同時に龍骨の中にコードが溢れるのを感じてもいます。
「ぞ、続航せよ? 続航しなければならない! なっ、なによこのコード?!」
軍艦というものは隊列を組んで旗艦に従い前進するものです。実のところ、龍骨の民も同じような習性を持っていました。
「つ、つまり私の龍骨が、こいつを旗艦だって認めているってこと――――?!」
ナワリンは龍骨に湧き上がる思いを振り払おうと龍骨を捩じりました。そんな彼女に、ペーテルがナワリンだけに聞こえる声でこう告げます。
「ねぇ、デカイやつについていくのはフネの本能なんだよ。ネストの婆ちゃんだって、そう言ってた」
「デカイって、私だって大きな戦艦なのよっ!」
ナワリンが、そう反論するのですが――
「ボクに比べればナワリンも大きいけど、デュークの方が大きいんだもん。君だって、”続航せよ”ってコードが漏れているはずだよ」
「う……」
「大きなカラダはそれだけで、付いてゆく気になるものだって、お婆ちゃんもいってたなぁ」
ペーテルは、何時もとは違って、間延びした口調ではなく、はっきりとそう言いました。
「デッカイことはいいことだよ? 安定するしね。ナワリンもエーテルの流れの中で、デュークのカラダに守られて、随分安心していた気がするけれど」
「見てた……のね?」
「あはっ、そうだよ、全部をね~~!」
ペーテルは満面の笑みを浮かべて「見てたよ~~!」と告げました。
「それから、ドラゴンブレスしなくて良かったね~~!」
「ッ――!」
ナワリンが何かを言い掛けますが、蒼き巡洋艦は被せるように、この様な言葉を投げかけるのです。
「あれは君が彼を受け入れていたってことなんだよね。ボクさぁ、そういう関係、ちょっとばかり羨ましいよ。いや、ちょっとでもないかな……凄く、かもねぇ」
いつになく饒舌なペーテルは、ナワリンを見つめて「羨ましい」と言ったのです。
「へ? それってどういうこと? 言ってることがわから――――」
ナワリンが何かを言いかけた時でした。ヴォオオオオオオン! と再三の続航のシグナルが響き渡るのです。それはナワリンの龍骨に再三の影響を与えました。
「ちっ、バカでかい声だして――――!」
「ホント、大きな声だよ! ついて行く気になるよねぇ~~!」
ペーテルが満面の笑みを浮かべてそう言うので、ナワリンは「し、仕方がないわね」と、自分を納得させるように艦首を頷かせました。そしてペーテルは「素直な方が楽だよね」と苦笑いしたのです。
何故か、ペーテルがカ◯ルくんみたいなセリフを吐いています。たぶん、デュークの言葉に龍骨を震わされているからでしょう。その影響は、第三部の最初当たりで噴出することとなります。




