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威力偵察 その2

「やっと終わったけれど、あじぃ…………」


 ナワリンがブワワと体中から排気を漏らしています。バクー海賊団の重ガンマ線レーザーをしこたま喰らった彼女の装甲はいたるところが白熱化したり炎上しています。彼女は冷却剤をこれでもか! と、投げ捨てる様に使ってなんとか自身の炎上を食い止めました。


「ちぃ、三番砲塔はしばらく使えなさそうね」


 ナワリンの三番砲塔にある二つの主砲は熱と衝撃で途中でぽっきり折れています。彼女はクレーンを伸ばして「パージ!」とその砲身を根元から外しました。


 そんなところに、後方から参着したペトラが「ナワリン、大丈夫~~?」と、やってきます。


「うわ、お肌がボロボロ、可哀そう~~!」


「中身はそれほどダメージがないけれど、中破ってところかしら」


 ナワリンの装甲板は蒸発したり真っ白な灰になっていたりと散々な状態です。幸い機関などのダメージは少ないのですが、三番砲塔が機能せず外装器官の多くが壊れているところから、中破と判定するべきでしょう。


「それより部隊の被害がひどいのよ……」


 重装甲の戦艦部隊で防御を固めたとはいえ、数倍にも達するフネから雨あられと砲撃を受けたものですから、ナワリンの部隊は撃沈こそないものの大破8中破3、相当数の死傷者がでるなどトンデモナイ被害を受けていました。


「部隊に死人(KIA)も出しちゃったのよ……」


「それは軍務とは言え、キッツイねぇ……」


 共生知生体連合の科学力であれば首から上が無事ならナノマシンによって死んでも蘇生する可能性があり、共生宇宙軍人は戦死者クローン保険に入っているので復活すら可能ですが、部下の戦死は戦死ですからナワリンは少なからぬ衝撃を受けています。


「これも指揮官の宿命ってやつだと思うよぉ~~学校で習ったじゃん」


 ペトラが中央士官学校で習った言葉は非情というよりも、「そういう時こそ、指揮官は毅然としなさい。そうしないと、もっと死人がでる」というような意味合いを持っています。ナワリンも彼女も訓練された軍人ですから「確かにそう思わないとね」と龍骨をシャンとさせました。


「ところでペトラ。あんた威力偵察の任務に就くのね」


「あ、そうそう、そうなんだよぉ~!」


「なら気を付けて、やつらの重ガンマ線レーザーはかなり痛いわよ。縮退炉搭載艦は、恒星間勢力並みの火力をもってるわ」


「メカロニアとかと同じってことぉ? あれってホント痛いんだよねぇ~」

 

 バクーのレーザーは、共生宇宙軍の戦艦の装甲をズタボロにできるだけの性能を持っているのです。ペトラは重巡洋艦ですからその装甲はナワリンに比べて比較的薄く、直撃を受ければ内部器官に甚大な被害が及ぶかもしれません。


「だけど、当たらなければどうということはないんだよぉ~。発砲を見てから余裕で回避できると思うよぉ~!」


 ペトラは戦果よりも高機動で高加速が可能な重巡洋艦であり、レーザーがやってくることを予測できるタキオン粒子を感じ取った瞬間大加速をすれば回避は可能です。


「一緒に来る部隊も高加速艦だっていうし、問題ナッシング~!」


「まぁ、それだったらいいけれど……。でも、気を付けて。奴ら何か隠してるような気がするのよ」


「隠しているって、ステルス機雷とかかな? まぁ、でも、そう言うのがあるんだったら、見つけてこないといけないね。だってボクら威力偵察部隊の仕事って、そういうことだから」


 威力偵察とは交戦を前提として敵の力を推し量るものであり、大きな危険を伴う任務でした。でもペトラは「それがお仕事だし、ナワリンの頑張りに比べれば、楽ちんな任務だと思うよん」とカラカラと笑ってからこう続けます。


「それにね、最近生えて来た新しい種類の外部センサの調子がいいんだよ~。これで敵の手の内を全てさらけだしてくれるわ~!」


 ペトラは彼女のメインカメラである視覚素子の他に、電磁気、赤外線および紫外線、音波、圧力、重力、量子、エーテル、タキオンなどの各種センサが元々充実しており、さらに最近新しいセンサが生えて来たというのです。


「それってどんなセンサよ?」


「原理は分からいんだけど、なんかティキーン! とか、キロリロリーン! やら、キュルルリィン! みたいに、龍骨に響いてくるんだよ~!」


「なによそれ……」


 ペトラは「あぁ刻が見える~~ような気が」などと言うものですから、ナワリンは「それ以上はやめぃ!」と一喝しました。


「それにもしもの時はナワリンのあの大技でも使って、煙に巻くから大丈夫だよぉ~!」


 ペトラはニヘラと笑ってから「盛大にやってたねぇ」と言いました。


「きっ、貴様、見ていたなっ⁈」


「見ていましたともぉ~!」


 ペトラは「ボクの遠見の能力はピカ一だから~! 見事なドラゴンブレス、クッキリハッキリ、全てがよく見えていましたぁ~!」とケラケラ笑います。


「でも、実際防御にはすごく有効みたいだねぇ~!」


「まぁそれは否定できないわ。すっごく恥ずかしいけど……」


「あれいいね~必要になったらボクもはやるよ~!」


「まぁ、そりゃアンタの勝手だけど……というか、恥ずかしくないんか?」


「デュークが近くにいなければ無問題だよぉ~! というかナワリンが出来たんだから、ボクもやる~!」


「なんか変な対抗心を燃やしてるわねぇ」 


 ペトラは「ふはは、ボクはやるときはやる女なんだよぉ~!」などと言うものですから、そんな言葉にナワリンの不安は多少は解消するのでした。


「そろそろ時間だから、行ってくるね~!」


「ええ、気を付けてね」


 そのようにしてペトラはバクーが撤退した第13番惑星への航路へ向かったのです。

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