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幼生期の終わり ~大工事~

 繭の中でデュークは夢に落ちていました。


「これって夢の中……だよね? でも、ハッキリとした夢だなぁ」


 足元には、ゴツゴツとした岩石の上にサラサラとした砂粒子がまぶされた地面が広がっています。


 上を見上げると――


「ここは……」


 ドーム状の空間が広がっています。


「誕生の間か。ということは――」


 デュークはあたりをキョロキョロと見回し、あるものを探し、予想した通りの構造物を見つけます。


「”誕生の扉”だ……あっ!?」

 

 扉が開いていました。

 不思議に思ったデュークが、中を覗き込むと――


 龍骨の中の特別なコードが、微細な振動や電気シグナルあるいは神経伝達物質として、カラダの隅々に広がってゆきました。

 

 各所に蓄積された物質とエネルギーが解放され、液体水素の血液が勢い良く流れはじめます。


 体内器官の熱が高まると、カラダの隅々に生息しているナノマシン達――フネの船大工といえる存在が、「みなぎってきた!」とばかりに、作業を始めました。


 彼らは、龍骨から生えている構造材――肋殻アバラと呼ばれるフネの主要な構造体に取り付き、様々な物質を混ぜ込みます。


 構造材は練り込まれて、ググっと延長し、焼き入れで強化され、研磨によって形を変えてゆき、膨張し――傘が広げるように、デュークのカラダを内部から押し広げてカラダの中の容量を増やすのです。


 次にナノマシンたちは、龍骨の下にある6つの炉の周囲を軟化させ、各所へ延びていたエネルギー伝達チューブをパキリと外しました。


 炉を固定していたロックが無くなると、丸くて重い縮退炉がゴロリと転がり、カラダの前方に動き始めます。


 行き先には、円環状の構造体が縮退炉を待ち構えていました。

 6つの心臓は、その中にゴトンゴトンと勢い良く飛び込み、最後のひとつがゴトン! と入ると、円環が閉じられました。


 しばらくすると、黒い金属のプレート――光を吸収するような物質で構成された、一切の光も反射しない闇の色を持つものが、運び込まれます。


 黒いプレート達が構造体を覆い始め、積み木細工を組み上げる様にカチャリカチャリと積み上がり、最後のピースがピタリとはまると、漆黒の多面体(ブラックボックス)が姿を現しました。


 エネルギー伝達チューブが、鎮座する黒色の箱に伸び、黒い多面体の端にピタリと張り付き、ゆっくりと同化しました。


 前方6縮退炉円環構造体の完成です。


 後方のそれでも、無数のナノマシン達が作業をしています。


 ガチャン!


 構造体から延びるエネルギーラインが、推進器官に繋がりました。


 電路の工事が終わると、龍骨をアシストする副脳の再配置が始まり、龍骨から伸びる光繊維の導線がしっかりと固定されます。


 脇腹に近いところでは、長大な放熱板が長さと厚みを増し、フレキシブル構造と表面加工が施されると、放熱効率の高さとこれまで以上の柔軟性を持ち合わせた物に仕上がりました。


 大きな口の中では、シールドマシンのようなゴッツイ歯――

 超合金で出来たそれにジワリとした圧力が掛けられ硬さを増し、消化器官には炭素繊維の網が重ねられ、また精練された高分子の敷物が張られます。


 視覚素子にも変化が現れていました。

 一種のフェーズドアレイレーダーとして機能するそれに、ナノマシンがちょいと手を加えると、さらに強力なマイクロウェーブを放つように仕立て直されるのです。


 お肌の上で、なんでも格納できる優れた万能格納庫マルチパーパス・セルが次々に設置され、生体兵器が芽生え始めました。


 脇腹では、大きな円錐形の物体がガツン! ガツン! と浮かび上がっています。

 それは、とても大きな――口径1,000サンチを超えるものでした。

 

 様々な作業が進行し、おおよそ艤装が組み上がったところで――


 押し広げられた隙間に、強固な金属装甲板や弾力のあるカーボン素材が詰め込まれ、弾性の高いジェルが入り込み、龍骨と肋殻(アバラ)と合わせた内部構造物による強固な内部防御構造が完成します。


 そして最後に、フネの表面を覆う外皮に変化が起こりました。


 幼生体の肌は金属よりも柔軟な炭素繊維の割合が多く、ツルツルプニプニしているものですが、そこにジワジワと金属粒子が浸透していきます。


 白く輝く金属粒子群はとろっとした様な液体状になり、炭素繊維の肌を溶かし込みながら厚みを増し、“最終装甲板”を形成し始めました。

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