表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
36/427

フネとは

「マギスさんのお肌って、すごく綺麗だね!」


 デュークが薄桃のマギスのお肌――生きている宇宙船の強固な生体積層装甲をしげしげと眺めます。


「ねぇ、その肌の下にも武器を持っているんでしょ? どんなのがあるの? 触れるな危険ってコードが邪魔してわからないんだ」


 マギスのカラダの各所には、大小の射出口がたくさんあるのです。


「あまり見せるものではないけれど……まぁ、子どもだからいいか」


 マギスはそう言いながら、カラダについている無数の射出口をカシャカシャと開閉させ、中にある様々な兵器をチラリと見せました。


「多くは生体誘導弾よ、内蔵型の近接防御火器ユニットも入ってるわ。時々、中身が生え変わったりするのよ」


 生きている軍艦の兵装は、歯が生えたり爪が伸びたりといった感じで生え変わるもので、その内容は成長と老化に合わせて調整されていくのです。


「でも、やっぱりメインなのは、この主砲ね。これで敵を撃つのよ!」


 マギスは背中に付いた四つの砲塔をくるくると回しました。


「そういえば、敵と戦うのが戦艦って言ってたね。戦争? それがお仕事なの?」


「どちらかって言うと、戦争が起こらないように睨みを利かせるのが仕事かな。ここから先は通さないぞ……戦艦というものは、そこにいるだけで敵を下がらせることができるの」


「でも、それでも敵が向かってきたら、どうするの?」


「攻めてこられたらやるしかないわねぇ。最前線でドンパチをするのが私たちの仕事だから。今はコンスルフリート所属だから、あんまりやらないけれど、昔はそんなことがあったわ」


 マギスは、共生宇宙軍での仕事についてかいつまんで説明しました。


「仲間たちと一緒に、敵と殴り合いをしたものだわ。一歩も引かない覚悟で撃ち合ってたら――そのうち、敵さんたちは逃げていったわ」


 マギスは、どうだ! とばかりに砲身を振り上げました。


「凄いなぁ……戦艦ってすごいんだなぁ」


 デュークは大変感心しました。そして――


「僕も……戦艦になりたいなぁ」


 ――と言ったのです。


 そんな彼の言葉に、切れ長の目をさらに細くしたマギスがこう尋ねます。


「あら、まだデュークは船か、艦か分からないじゃない」


「うん、でも、僕は昔いた大きな戦艦の名前を貰っているから。なんとなく、軍艦になると思ってるんだ」


「そう……でも、それはマザーの思し召し次第よ。フネと言う生き物は、マザーが決めた設計図によって作られるものなの」


「うん、それは知ってる」


「それにね、デューク。我ら龍骨の民――生きている宇宙船――フネなの」


 マギスは、「艦とか船とかは、ホントのところはどうでも良いのよ」と言ってから、放熱板を伸ばしてデュークのお腹の辺りをポンポンと突きます。


「縮退炉を持ち、推進器官を動かす。そして、星の世界を自由に航海するのが私たち。それは艦も船も変わらないわ」


 彼女は、カラダの後ろについた推進器官を上下左右と躍らせます。デュークもそれを真似て、船足をパタパタさせました。


「では、質問です――貴方は一体何者?」


「えっと、僕は……フネだよ」


 マギスは切れ長の目をデュークに向けて尋ねると、デュークは少しばかり龍骨を捩じってから、そう答えました。


「そうね、星の世界を自由に航海するのがフネなの。さて、もう一度聞くわ。あなたは艦なの? 船なの? それとも――」


 マギスは切れ長の視覚素子をさらに細くしながら、改めて問いかけました。


「僕は、フネです! 生きている宇宙船です!」


「はい、大変良くできました」


 元気いっぱいなデュークの答えを聞いたマギスは、放熱板(翼)を伸ばしてデュークの舳先をなでなでしました。

 するとデュークの白いほっぺたに、花丸のような赤みが咲いたのです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
script?guid=on
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ