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星系内戦闘の終結

「爆発の数が減ってきたな」


「それにしてもかなり長い間戦闘をしていたみたいなんだけど、補給が良く持つものだねぇ」


 デューク達が星系に入ってから丸一日が経過していますが、未開星系の勢力はその間ずっとエネルギー球を投げあっていたのです。恒星間勢力であれば縮退炉技術をもっているので、一日中レーザーをぶっ放すこともできますが、核融合がやっとの科学レベルであるこの星系となれば異常な事でした。


「多分あれだな。サイコ兵器の類が主流だから能力者のエネルギーが問題なのだろう。多分だが、能力が尽きたら入れ替えて新しい能力者を投入し、その間に疲れた奴が休む――そんなことをしているのだろう。まぁ、勝手な推測なんだがな」


「まぁ、それならわかるかも。そういえば推進にもサイキックを使っているってことだったよねぇ」


「ああ、行方不明の監察官が発進していた情報ではそうだったぜ」


 各自が受けている秘匿命令は時間経過とともに変容するもので、同時に星系の情報なども小出しにアップデートされていました。


「でもさ、なんでまとめて情報をくれなかったのかな。普通はそうするでしょ?」


 共生宇宙軍が戦闘に臨む際は、ありったけの情報を将兵に共有してからというのが通常ですから、デュークが首をかしげるのも当然なことでした。


「ううむ……これが実習だからと考える……いや、やはり変だよな」


「それに星系内の情報なんだけど、微妙に違うんだ。数や種類は報告のとおりだけど、配置がかなり違うんだ」


「なんだそりゃ?」


「ええとね、星の位置は時間と共に変化するけれど、元の配置が分かっていれば何日たったとしても必ずこの配置になるって計算できるんだ」


 デュークは生きている宇宙船であり優秀な副脳をもっていますから、それくらいのことは楽々こなす生き物です。


「でも、それができないんだよ」


「ふむ……原因はなんだ?」


「原因というかね、今も観測しているのだけど、星の公転速度にむらがあるんだよ」


「おい、星の公転速度は簡単には変わらんだろう」


 小惑星一つであれば軍艦が100隻もいれば動かすことは可能ですが、惑星クラスの質量というものを動かすには相当のパワーが必要です。共生知生体連合におけるプラネットフォーミング技術の一つには、そうしたものがありますが、時間とお金と手間をかけて行うものでした。


「まぁそうなんだけどさ……この星系は、場所によって時間の進みが早かったり、遅かったりしているような感じなんだ」


「大質量ブラックホールとかワームホールの影響か?」


 時間の進みは時空を捻じ曲げる強力な重力源や、ワームホールなどがあれば変化するものです。


「だが、そんなものは確認できないぜ? 亜空間とか次元断層とかその類もな」


「そうだよね。しいて言うなら星系外縁部の超空間航路があるけど、星系の内部に影響を及ぼすものではないしねぇ」


 上代人が作ったといわれている超空間は異常なまでに安定的であり、エーテルを多少漏らすことはあっても重力異常の原因にはならないのが通説でした。


「だけど、観測データからすると、なにかが影響しているように見えるんだよねぇ」


 周囲を肉眼で確認しているデュークは、同時に惑星の動きも掴んでいます。数分という単位では特に変化はないのですが、数時間単位で観測データを比べると明らかに惑星の挙動がおかしいのです。


「それに――」


 惑星の動きの観測を続けるデュークは「僕たちも多少影響を受けているみたいだ」と言いました。


「なにっ⁈」


「ああ、そんなに大したものじゃないよ」


 影響を受けていると聞いて驚くスイキーに、デュークは「安心して」と言ってから、こう続けます。


「ミニチュアの僕と戦艦の本体は、思念波でつながってるから瞬時の情報共有ができるんだけど、体内クロックに2秒くらいの差が出ているんだ」


「この星系内は場所によって時間の進みが違うって証拠か……わずかな差だから大したことはなさそうだが……気味が悪いな」


 超光速航法を行ったり、次元断層に入ったりすると時間の進みに影響を受けることは良く知られていることですが、原因が分からないというところにスイキーは不気味さを感じました。


「まぁ、今は原因を考えても仕方がねーか」


「そうだね……あ、戦闘が終わったみたいだよ」


 会話が続いているうちに、未開星系内の艦隊戦は収束を迎えたようです。そこで彼らは目を見合わせデュークは「調査、だよね?」と言い、スイキーは「おおよ、ブラックボックスの一つもゲットしてーもんだな」と笑ったのです。

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