表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
327/423

脱出方法

「この星系から超光速で脱出する方法について説明する。これを見たまえ」


 ノルチラス少将は星系の概念図を示しながら、星系の中心に注目するように言いました。そこには恒星を内包すると思われるダイソン球――完全黒体であり、かつ縮退炉のブランケット以上の超硬度物質で出来た天体が存在しています。


「上代人の遺産と思われる惑星公転サイズの物体ですね。真っ暗でなにもみえませんが……」


「うむ、通常であれば、この物体はなんらの観測結果も得られないものだが――このような現象が現れることがある」

 

 少将は「規則正しく1カ月おきに1時間、これが発生する」といいながら、映像データを再生します。すると、完全黒体の表面の一部から白い期待のようなものが爆発的に噴出する光景が現れました。


「なんだこりゃ、故郷の火山地帯にある間欠泉みたいだな」


「スケールは100キロ単位、天文学的な規模だわ。でも、それほど高くまで吹き上げないわね」


 溢れんばかりに宇宙空間に放出された白い気体は、数分と持たずに空間に溶け込むように色を失っています。


「空間に溶け込んでいる……これはもしかしてエーテルですか?」


 デュークはフネとして、超空間航路を満たす液体のような性質を持つ気体についてぇは肌身で知っていました。エーテルは通常空間ではすぐに消失してその痕跡はわずかにも残らないのです。


「まさか、あそこに超空間航路の入り口が開いている?」


「なるほど、これが星系外跳躍の方法ってことか」


 スイキーは「この星系がどん詰まりの星系で、そこに航路があるならば、使わないという手はないわな」と納得した風です。


「近衛軍はこの航路を守備する守備隊でもあるのねぇ。性質上見つかりにくいものだとしても、他勢力に露見する可能性は否定できないもの」


「その見立てで半分正解だが、残りの半分は執政府と近衛軍の秘密回廊といったところだ」


 執政官や近衛艦隊が隠密裏に行動するためのルートでもあると少将は言いました。


「ノルチラス閣下、この超空間航路の先はどこになっているのか教えていただけませんか?」


 航路があるとわかっても、出口がどこになるのかが分からないというのは、フネとしてはどうにもおさまりの悪いものです。


「出口は本星系から500から600光年先のどこかだ」


 少将はかなり曖昧な事を言ってから「実のところ、この超空間は現在も変化しているようなのだ。大体の方角は定まっているのだが」と説明してから、こう続けます。


「便宜上あれを超空間開口部と呼んでいるが、この完全黒体製のダイソン球は、超空間になんらかの影響――いやその原因そのものだという学者もおる。超空間掘削機の成れの果てなどと、な」


「超空間掘削機ですか……なんだか凄そうな響きですねぇ」


 どのような原理でこのような遺跡が動いているのか、百年単位での研究でもわずかにしか解析が進まないのが上代人の遺跡ですから、デュークとしては「ふぇぇ、上代人って凄いなぁ」という感想を抱く他ありません。


 ナワリンは「その上代人も結局滅んだのよねぇ」と冷静な感想冷徹な事を言い、ペトラは「諸行無常だねぇ~~!」と呑気な事を言っています。


「とまれ現時刻より正しく40時間後にこの超空間開口部が開通する。諸君らはタイミングを合わせて超空間開口部に移動するように」


 ノルチラス少将は「遅れると、次は一か月後になるからな」と苦笑いしたのです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
script?guid=on
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ