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未開星系へ

「辺境といってもとっても広いよ。どこで、なにをするのかな?」


「具体的には、100年ほど前から連合の要監視星系になっているところだぜ。文明レベルは準加盟星系に満たない未開星系だが」


 未開星系とは縮退炉技術は元より恒星間航行技術を有さない技術でエネルギーソースとしては核融合炉がせいぜいとなっていますから、星系内航行がやっとの種族がいるところです。


「だが面白いことに、最近になってその星系の住民が超空間航路への侵入を試みているらしい。あの辺りには、かなり質のいい超空間航路が存在してるんだ」


「あら、それはありえないわよ。核融合炉程度のエネルギーリソースじゃ、超空間航路の扉は開かないはずでしょ?」


「アレをこじ開けるのはパワーがいるからねぇ~~!」


 ナワリンとペトラが言う通り、超空間に入るためのパワーは並大抵のものではなくいのです。デューク達のように縮退炉を複数持つような、それが当たり前の文明であれば問題はないのですが、縮退技術を持たない文明がそれを行うことは不可能というものでした。


「それは彼らの文明が妙な方向に進化していることが原因だわ」


 エクセレーネ曰く「私ちが向かう未開星系は、どうやら思念波技術の類が異常に発達しているらしいわ」ということでした。


「星系内航行のメインリソースは思念力だと聞いているわ」


 キツネ目の美女エクセレーネは「つまりサイキック能力で宇宙を飛んでいるのよ」と説明しました。


「思念力……つまりそれってサイキック能力で宇宙を飛ぶってことですよね。そんなことできるのしょうか?」


「できるわ。思念波能力の応用で宇宙を飛ぶことのできる能力者がいるもの」


「あ、宇宙服を着ただけでスラスラ宇宙を飛んでる人を見かけたことがあるわね。推進剤も使わずにどうやっているのかわからなかったけれど、あれってサイキックなのねぇ」


「中には生身で飛翔するやつらもいるんだぜ。デューク達のような金属やカーボンやらケイ素の複合的生命体でもないのに、防護シールドを張って宇宙空間でも生存できるってな」


 サイキック能力者は、防護シールドを張ったり、カラダを仮死状態にしたり、様々な方法で宇宙空間に適応します。また念動力やら時空間干渉能力を使って、宇宙船のように宇宙を飛ぶことができるのです。


「あ、もしかして、スターライン航法してる時に見かけたことがあるアレか」


 これまでデュークは恒星間の量子的つながりを利用したスターライン航法を相当数行ってきましたが、時折、自分の脇を小さな物体が超光速で駆け抜けるような感覚を覚えてもいたのです。


「恒星間を飛んでる時に稀に感知することのある、あのちっさい物体?」


 実のところ、ナワリンもそんなサイキックをチラリと見かけたことがあります。フネからするとサイズが小さすぎてあまり気にもかけていませんでしたが、いることはいるのです。


「ボクも感知したことがあるよぉ~~! なんだか高笑いしながら、宇宙を走ってたぁ~~!」


 ペトラの高性能センサは確かにそのような存在を捉えていたのですが「あの時は副脳がバグったと思って、気にしないことにしたんだぁ~~!」ということです。


「高笑いしながら恒星間を走るサイキックか、それは執政府直属のS級サイキックエージェントの一人だな。時空間そのものを蹴りこみながら、自力でスターラインできるらしい」


 S級サイキックエージェントは執政府直属の特殊能力集団であり、さまざまな能力を有する特殊部隊のようなものです。その中でも航宙能力に長けた星の世界を駆ける者(スターランナー)は恒星間すら跳躍するということでした。


「奴はものすごい速度でステップを刻みながら宇宙を走るんだ。そのくせ、上半身が全くと言っていいほどブレねぇ。加えて、ウハハハハ! とか高笑いしながらな」


 スイキーは「小型縮退炉を積んだ宇宙戦闘機よりも速いんだぜ。化け物だよ、あれは化け物だ」と呆れたような口調で言いました。


「ま、それはともかく思念波の強い種族なら、縮退技術はなくても、恒星間航行を実現する可能性があるってことだ。そうなると、まぎれもない恒星間勢力ってことだ。するってーと、どうなると思う?」


「ええと、辺境における連合権益に影響が出てくるんだね」


 辺境は共生知生体連合の勢力圏ではありませんが、友好星系や交易路の一部には連合施設が存在し、また様々な形で連合権益が存在しています。デュークはのあたりの知識を中央士官学校の座学で学んでいました。 


「思念波能力で宇宙を飛ぶ種族だからなぁ、技術的には低レベルでも危険性があるかもしらん。近くにゃ飛び地のような形で準加盟星系が存在するんだ」


「彼らが共生知生体連合にとって、友好的か、そうでないか、そのあたりを吟味しないといけないわね」


 エクセレーネは「技術的には低レベルでも、思念波能力で宇宙航行できるというのは、要注意だもの」と続けました。


「じゃぁ、僕らの実習って、その星系の調査なのか。でも、それって共生宇宙軍の士官候補生がやる事なのかなぁ?」


 デュークの疑問はもっとなことです。共生知生体連合の権益を守るための調査行動というのは、一介の候補生が実習で行うものではありません。


「共生宇宙軍の任務には未開星系の監視もあるわ。第一次接触の際には軍事的圧力を使わざるを得ないケースもあるしね」


「それに今回は執政府から調査担当官が入るのさ。未開種族の調査、場合によっては折衝ってやつを実地で学ぶことになるんだぜ」


 そしてスイキーは「さすがの俺もそんな経験はねぇな。こいつは良い実習(勉強)になるな。クワカカカカカ!」と高笑いしたのです。

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