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最適解

 この時のデュークは「最適解は最適解だけれど……」と呟きながら頭を捻り、そのまま数分ほども考えこみました。


「どうしたのよ指揮官殿。何を悩んでいるの?」


 随分と悩みこんだ指揮官デュークにエクセレーネが尋ねます。


「たしかに航路設定は最適なものなんだ。実によく考えられている」


「そうね、推進剤の効率は最大限だわ。無駄がないわね」


 エクセレーネの「無駄がない」というセリフにデュークは「それだよ」と反応します。


「それって、首都星への遷移コースとして最適だってことだよね」


「まぁ、そうね」


 エクセレーネは星系内星図を眺め、航路は首都星の軌道上に設定されていることを

確かめました。


「つまりこれって、軌道からの惑星降下作戦をやるってことが前提だよね。リリィさんならその辺詳しいでしょう?」


「そうっすね、一般的な降下作戦のやり口っすね。分艦隊の中に強襲揚陸艦が5隻程度あるっす。他の艦艇で支援すれば、問題なくいけるはずっすよ」


 リリィは首都星に籠る反乱軍の戦力分析情報を踏まえつつ「軌道降下で要所を抑えつつ、反乱軍の中枢を叩く作戦がお勧めっす」と言いました。


「でも、それだと時間がかかるよ。何しろ住民への被害を最小限にしなくてはならないんだから」


「たしかに、制圧には一週間は必要ってところっす」


「それじゃあ敵性勢力の艦隊が簡単に星系外縁部に入り込むじゃないか」


 そういったデュークはスターライン航法にて近づく敵性勢力の分析情報を求めました。すると、このシミュレーションにおいては分艦隊よりも優位な艦隊が迫りつつあることが示されていることがわかります。


「これじゃ首都星の制圧ができても、後の始末が大変なことになるよ。ここは準加盟星系なんでしょ、見捨てて逃げるわけにはいかないもの」


 デュークはメカロニア戦役においてカークライト提督がゴルモア星系を捨てる決断ができたのは、全住民の疎開が前提であったことを思い出しつつ、そういいました。


「首都星の制圧は、無力化でもいいのだよね?」


 確かに作戦目的としては惑星の制圧ないしは無力化と示されています。デュークはそのことを確かめると「何もできないようにすればいいのだよね?」と言いました。


「たしかにそうだけれども、その方法は?」


 エクセレーネはなにか可笑しみを覚えたような表情を浮かべつつ、デュークに尋ねます。


「分艦隊全力で威圧するんだ。そのうえで……そうだね200隻ばかりを首都星の軌道上に入れて抑え込めばいいと思う。準加盟星系程度の艦隊なら、同数でも圧倒出来るはずだから」


 デュークはトピア星系での経験を開帳し、技術に劣る星系の軍隊ならば、こちらの数が劣っていたとしても「楽々圧迫できるでしょ」と言いました。


「ということは、惑星制圧作戦を飛ばすっすか?」


「現状だと時間がかかりすぎると思うんだ」


「でも、大使館や連合市民はどうするのよ。見捨てる気?」


「今、現地情報の詳細を見たんだけれど、なぜか知らないけれど大使館には第一戦闘降下団の支隊が入っているよ。それに特務武装憲兵隊が情報収集活動中か、これなら――」


 首都星に残る知生体についての手当はどうするのかしら尋ねられたデュークは「連合最強の陸戦部隊が二つも揃ってるなら。なんとかなるんじゃないかな」と笑みを浮かべました。


 それに加えて軌道上から圧迫を掛ければ、そうそう手荒なことはできなくなる――そのようなことをデュークは説明します。


「ははぁ、そうなれば到着は早ければ早いほどいいっすね」


「だから分艦隊は全力で首都星へ向けて威圧しつつ航行、首都星付近で200隻を分派して、本隊は減速せずに星系外縁部に向かうのが合理的だと思うんだ」


 デュークは確固たる面持ちで「この作戦が一番無駄がない、最適解のはずだよ」と決心を述べると――


「確かにそうね。でも、ディクシー」


 エクセレーネは「一つ教えてほしいわ」と尋ねてきます。


「このプランって、自分で考えたの? あなたが言っていることは、20年前の事件当時――モデルとなった星系に派遣された艦隊司令部が立案した選択肢の一つなのよ」


「ふぇ、そうなんだ。それは知らなかったよ」


 戦史に詳しいというエクセレーネが言うからにはそれは本当のことなのでしょう。でも、デュークはこれを――


「自分の中で考えて……というか、自分の中でってのは本当だからなぁ……間違いなく、自分で考えたことだよ」


 自分の龍骨とその中に潜むご先祖様との対話で考えだしているのです。ご先祖様とはデュークの中にある記憶や設計図データの集合体ですが、それだけでは自意識的な働きをするものではなく、龍骨内の本人の意識に乗っかる形で発現するものですから、自分自身と同義でもあります。


「なるほど、これは執政府が放って置かないわけね」


「ふぇ? それってどういうこと――


 そう言ったエクセレーネは微笑みを見せながらリリィの方を向き――


「リリィ統裁官、状況終了および試験終了を具申します」


 と確固たる口調で告げたのです。

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